第5話 覚醒

翌朝、教室に向かうと珍しく網野が来ていなかった。

「森下、網野は?」

「網野?あれ、確かにいない」

「今川は網野がどこにいるのかわかる?」

「あれ?今日来た時にはいたと思うんだけど、、、いつの間にかいなくなってた」

「どこ行ったんだろう」

陽葵は網野がいないことを不思議に感じながら森下と授業の開始まで時間をつぶした。

「よし、みんないるか?」

「網野がいないです。ここには来てるはずなんですけど」

「確かに荷物があるから来てはいそうだな。どこに行ったか分かる人はいるか」

ただ網野の居場所がわかっている人は一人もいないようだ。

「しょうがない授業を始めよう。前回はジョーカーの登場時期について学んだはずだ。今日はその続きから始めよう。

ジョーカーの出現によって地上では先に北半球が壊滅した。南半球もほとんどがほどなくして占領されてしまった。ただ、南極にはジョーカーが侵入できていない。これは南極の温度が低すぎることで生存に適してないからだと考えられている。

そしてジョーカーは地球の環境を変えていった。ジョーカーの出現によってもともと地球にあった植物のほとんどが死滅して、新たな植物が生まれた。これによって地球の大気から二酸化炭素が減った。今の地球の環境は人類がいたころとは変わってしまっているだろう。今の環境のままさすがに地上に住むということはなかなかリスキーで環境を変えないといけないだろう。

今日はここまでにする。ノートに今日のことをまとめておくこと。そして今日の課題は地球の環境をどのようにして暮らしやすいようにするかを考えてきてくれ。じゃ、解散」

「網野。今日も一緒に課題やろ」

「わかった。前回と同じ条件な」

「うん。てか網野いつからここに帰ってきた?」

「いや授業が始まってすぐにここにいたぞ」

「え?でも誰も気づいてなかったよ」

「気のせいだろ」

そういうと網野はそそくさと教室から出ていった。

「森下」

「どうした?」

「今日も前回と同じ感じで課題やろ」

「わかった」

「それよりも網野がいつから授業に参加していたかわかる?」

森下は今までの記憶を確かめるように考える。

「うーーん、確かにあいつのこと今日見てないかも」

「やっぱり、網野は授業が始まってすぐに授業に参加したって言ってたんだけど」「いやそんなことはありえない。ドアが開いた音を聞いてないから」

「だよね。なんか今日の網野何か隠してると思うんだけど」

「もしかしたらなにか隠してるのかもね。でも課題やるときに聞けばいいよ」

「そうだね」

陽葵は今日こそはちゃんと間に合うために3時20分には部屋を出て図書館に向かって陽葵は3時半に図書館についた。

『ちょっと早く着きすぎちゃったな。どうしよう。』

陽葵が図書館をうろうろしていると、網野を見つけた。

陽葵は網野に声をかけようとしたが、そうはしなかった。

網野は明らかに今回の課題には関係のない本をたくさん抱えていて話しかけづらい雰囲気を出していたからだ。

『網野はあの本で何を調べているんだろう?』

陽葵は網野のことを探偵になった気分で探り始めた。網野が本を見ていたところにはクリエイトの能力に関係する本が並べてあるので網野がクリエイトの能力について調べていることはなんとなく察する。

「兼平」

いきなり後ろから声をかけられて振り返るとそこには森下が立っていた。

「わっ。森下か」

「こんなところで何してるんだよ」

「いや網野がいたから何をやっているのかなってみていただけ」

「え?網野?」

「網野がどうかしたの?」

「いや、さっき部屋で網野に今日は体調が悪いから行かないって聞いたんだけど」「でもさっきそこにいたよ」

「それは本当に網野だったの?」

「そういわれると不安になってくる」

「まあとりあえず今日の課題を終わらせちゃおう。網野のことはそのあとに考えればいい」

「そうだね」

2人は先に今日の課題に取り組んだが陽葵は全然集中できず、最悪の出来になってしまった。

「兼平、終わった?」

「一応終わったよ」

「なら網野のことを考えようか。まず網野は俺たち2人と会っていてこれは不可能だ」

「でも、私が見たのは網野だったよ。多分」

「実は俺は網野のことを実際に見てはいないんだ。ただ、俺に話しかけてきた」

「ってことは森下が網野だと思っていたのは網野じゃなかったの?」

「ただあの声は網野だったと思う」

「そうなると、ん?どういうことなの?」

「わからない。でも多分本物の網野は兼平が見たほうだと思う」

「じゃ、網野が何をしていたのかを探ろう」

「なら最初の本棚に戻ろう」

2人が本棚まで戻るとそこにはやはりクリエイトの本がおいてある。

「この本棚にはクリエイトについての本があるよ」

「網野が持って行った本はわかる?」

「えーと確かここのを持って行ったと思う。ほかの本はわからない」

「とりあえずそこにあった本は多分わかると思う」

「貸出履歴を見てみよう」

2人が貸出履歴を見るとそこには8冊が同時に借りられた履歴があった。

「多分この8冊が網野の借りた本だと思う」

「どんな本?」

「未知のものを作り出す方法関連のが5冊、クリエイトの早期覚醒に関係する本が3冊になってる」

「ちょっと私には難しいな」

「もしかしたらあいつクリエイトの能力をもう使えるのかもしれない」

陽葵は驚いたように森下に聞き返した。

「え?でも覚醒するのは13歳からじゃないの?」

「普通はそうなんだけど覚醒時期が極端に早い人もいるって聞いたことがある」

「それなら網野はクリエイトで何かを作っているってこと?」

「まだ決まったわけじゃないけどね」

「なら明日網野に聞いてみよう」

2人は明日のことを話しながらそれぞれの部屋に戻った。

陽葵がいつもより早く教室に行くとそこには何かをしている網野。

「網野」

網野はまるで話しかけられることがわかっていたかのような落ち着きぶりで淡々と会話を回そうとする。

「兼平。珍しく今日は早いな」

「網野ってクリエイトで何を作ってんの?」

「は?だから能力は13歳にならないと使えないんだって。何回言ったらわかるんだ」

とは言っているが、やっぱり少し戸惑っているみたいだ。

「でも昨日図書館で早期覚醒について調べてたじゃん」

「俺は昨日図書館にはいってないぞ」

「私ちゃんと見たんだから」

そうすると網野はめんどくさいというオーラ全開で椅子に倒れこんだ。

「はあ。森下、隠れてるんだろ。出てこい」

「なんでわかった?」

「兼平がこんなこと一人でやるはずがない。それに足が少し見えてた」

「そういうことね。で昨日は何をやってたの?」

「見られたからにはしょうがないな」

「やっぱり何か隠してる」

網野はめんどくさいという顔を変えないまま話始める。

「俺はもう能力が使える早期覚醒者だ。昨日授業の時みんなが見えなかったのは俺が作った透明化する服の影響だ」

「でもクリエイトの能力でも原子を作ることはできないんじゃないないの?」

「普通はそうだ。ただクリエイトの中でもまれに原子自体を作ることからできる人がいるらしい。俺はその能力がある。昨日はそれを試してただけだ」

「先生には話したの?」

「いや先生には話そうと思っていない」

「なんで?」

やはり網野はあまり積極的ではないようだ。

「能力が発現したことがわかると半年の訓練をして、実戦に投入される。そうするともうこの学校で授業を受けることができない。そうなるとここで培えるものがなくなってしまう。だから俺は言わない」

「なるほどね。そういうことか」

「私たちになんかできることあったら言ってね」

「いや、これは俺の問題だ。お前たちを頼ることはない」

「でもそれ面白そうだからやりたい」

「お前たちが能力を使えるようになったら考えよう」

「えー、それじゃ1年半ぐらいかかるって」

「大丈夫だ。この学年の英雄クラスは例年よりも実戦に向けた講義が増えている。おそらく早期覚醒者が何人かいる」

「でも能力については発現するまでわかないことが多いんじゃ」

「それは多分嘘だ。生まれた時点でその人がどの能力を持っていてどの程度の力があるかだったり覚醒時期までわかっているはずだ」

「でもならなんでそれを言わないの?」

「子供が戦闘に巻き込まれるのを防ぐため。か?」

「そうだろうな。多分世界連合が隠蔽しているんだと思う」

3人が議論に熱中していると周りには人が集まっていた。

「網野、早期覚醒者がこのクラスに何人かいるって本当か?」

「大野、今話していたことは忘れてくれ」

「そんな面白そうな話を忘れるなんて無理だよ」

さらなる面倒ごとに巻き込まれたという顔をして網野は陽葵を見つめる。

「はあ、こうなったのは全部兼平のせいだからな」

「なんかごめん」

網野は集まった大野らに状況を説明する羽目になった。

「網野はもう能力を使えるのか。ちょっと見せてくれない?」

「次そんな感じで要求してきたらもう何も話さないからな」

「わかった。わかった。でもこのクラスの15人全員が特殊なのか?」

「全員かどうかはわからないがかなりの数が早期覚醒するか能力に特別なところがあると思う」

「そのことは先生たちは知っているのか?」

「多分知らないと思う。知ってたらここにはもう誰もいないはず」

同じ話を繰り返し話している網野は相変わらずだるそう。

その時松岡先生が教室に入ってきた。

「みんな何の話をしているんだ?」

焦ったように大野が答える。

「いや、何でもないです」

「そうか?まあいいや。今日は前回の授業でだした課題の発表をする。じゃ、一番は桑原」

「あー俺ですか。わかりました」

陽葵にはその発表よりも網野が言っていた真実が気になっていた。


あとがき


今回初めて作品を投稿しましたkurarasimonです。なにせ初めて小説を書いているのでどのような終わり方になるのかわかりませんがよろしくお願いします。


アドバイスがありましたら教えていただけると幸いです。

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