世界を救ったから…仕事をください。
赤青黄
救われない妖精使い
世界は救われたのだ。憂鬱なる雲によって支配された夜空は星を取り戻す。味気なく、誰も見向きもされなかった夜空だったが星のドレスとともに救われた世界を舞う。
誰しもが知らなかった多彩で息を飲むような世界が帰ってきたのだ。
星空の舞踏会とともに皆は踊る。そして誰しもが勇者たちに向かって決して届かない感謝を口にした。
そんな騒がしい夜に孤独な女性が山の頂上で雪解けのような眠りにつこうとしていた。
取り戻された約束の星空は物語以上に綺麗だった。
「…本当に綺麗だったんだね。」
女性の弱々しい声とともに誰よりも耳に残った彼の言葉を思い出す。
ポツポツと泡のように溢れ出す彼との思い出とともに星空に向かって願った。決して会うことが出来ない彼の幸福を願いながら誰よりも嫌っていた星空とともに、彼女は微笑みながら事切れた。
いつかこの願いが彼に届きますように
「世界は差別によって保たれている。だからこそ私は亜人族を差別する。この地球で幸せに暮らしていいのは私達人族だけだ。今こそ差別しよう。自分の心に嘘の付かない真の差別を!!」
「おおーーーー!!」
一人の男が熱の台風をつくりあげる。演説する隻眼の男を中心に数十人の人族が高揚し叫びを上げる。差別という決して善とは言えない言葉を中心にまさかこれほどまでの熱気を生み出すとは思いもよらなかった。
そんな集会を冷めた目で覗き見している人族の男が懐にあるトランシーバーに向かって語りかける。
「こちらガラリア、今のところ反乱を起こすようなことは口にしていません。しかし日に日に革命を起こそうとする熱は増す一方でまるでサウナに入っているようです。どーぞ」
「こちら了解した。だがなサウナっていう表現は了解しないな、サウナの熱はそんな気色の悪い熱気ではなく体の奥から湧き出る勇気のような熱気であってな」
「うるさいんでこのまま切りますどーぞ」
まさか立った一言によってこれほどまでの面倒くさいことに巻き込まれてしまうとは思いもよらなかった。ガラリアと名乗る男は中央で演説している差別主義者のベルテンを監視する。
ベルテンは差別の偉大さを語りながら声張り上げる。まるで火薬庫を探す放火魔のように信者の爆発を期待していた。
しかしまだ火薬は乾ききっていなかったらしく今回の集会でも爆発することはなかった。
「…っというのが今の現状です。今はたまたま爆発していないだけでいつ爆発しても驚きはありません。早急にこの差別主義者達の身柄を抑える必要があります。」
冷たく重い空気とともに今日の報告が終わろうとしていた。先程の熱気に満ちた場所とは違い、緊張が走る冷たい場所で雨に打たれるような肌寒さを感じる。
急激の温度差によって風邪を引いてこのまま逃げ出したかったが大人は逃げるわけにはいかない。
報告したガラリアはゴクリと生唾を飲み込みながら中央に鎮座する犬族のいかにも高貴な生まれであろう長官を見つめる。四角い眼鏡を光らせながら長官はいかの言葉を口にした。
「却下だ。」
却下。いつも通り聞いている言葉だが、それでもガラリアは今にも膝から崩れたい気持ちが襲う。
そして長官はいつものように聞き慣れた言葉を口にする。
「この差別主義者達は確かに人数こそ多いがそれでも一人一人の素性は下層階級達だ。武力を行使する魔力も無ければ理想を現実にする知力もない。ないものねだりをする子供のような連中共だ。そしてこの差別主義者の中心たるベルテンは神からの祝福もない最下層階級の人族だ。警戒する必要もない。」
いつも通りの流れで周りにいる人達も納得のような顔をする。
確かに最下層階級の人間がただ騒いでいるように見えるがだが最下層階級の人間だからとて侮ってはいけない。
ガラリアは長官に向かって反論を口にしようとしたが長官は雰囲気を察したのか鋭い視線を向けながら「くどい」と口にされた。
これによって発言するタイミングを失い、いつも通りの報告会へと変わっていき普遍的な報告会が終りを迎えた。
一通りの仕事を誰にも文句の言わない出来だったが、ガラリアの心は大きな積乱雲に覆われてしまった。
このモヤモヤな気持ちをどうしたら良いのか、ガラリアは晴れない霧の中を歩いている気分になる。周りを見渡しても信頼出来る戦友はいない。愚痴を言いたいが愚痴をいえる部下もいない。ただ孤独に歩くしかない。
まあ、厳密には愚痴をぶつけられる相手達はいるがさらに深い霧の奥に案内されてしまうためしない。
ため息を吐くのを我慢しながらとぼとぼと自分のオフィスに戻ろうとしたその刹那、後ろから気に入らない声がした。
「よお、万年平社員。どこ行こうとしてるんだ?」
嫌な声に嫌な言い回し、あいつしかいないガラリアは顔を歪ませながら声のした方向に顔を向ける。そこには予想通り同期の森林族のダラゴラがいた。
黄金色の髪をたなびかせながら無駄に綺麗な顔で憎たらしい表情を作る。一見するとただのホストに見えるがこれでも情報収集のプロだ。
「どうしたよ。そんなしょぼくれた顔をしやがっていつも通りに自分の意見が通らなかっただけで落ち込んでるのか本当にお前は器が小さいな。」
ヘラヘラと狐が今から化かすようなそんな印象を与える。憎たらしい言葉だがここでつかかっても面倒くさくなってしまうだけだ。無意味な数字を数えガラリヤは深呼吸をする。
「本当に若いだけしか取り柄がない奴だな、まあその若さでも俺に負けてるが」
本当に、本当に嫌な奴だ。
ガラリアは今でも溢れそうな思いと共に嫌味ったらしい今すぐぶちのめした男に向かって「本当にそうですね」と冗談風に受け流した。
「本当にそうだよな。そんなにピッチリとしたスーツを着ているのに仕事が出来ないし気もきかないそれに器が小さいと来た。そんなのに、いっちょ前にオシャレなんかしていないで自分を磨いたらどうだ。」具体的なアドバイスもない、ただ欠点しか喋らないありがたくもない言葉にガラリアは怒りが込みあがるこの怒りをつかって新しいエネルギーにできないかというプレゼンも作れるぐらいの熱を出す。
本当に本当にほんっっっとうに嫌すぎる。
このままではぶん殴ってしまいそうだ。そんな誰にも得がならない行動をやらないために俺はそそくさと自分のオフィスに向かおうとする。
そんなガラリアをダラゴラは見下した目で見送った。
オフィスにつきガラリアはオフィスチェアーに座る。そして机に突っ伏しながら今まで我慢していたため息を一気に吐き出した。
怒りと悲しみと無力感がガラリアを襲う、それを振り払おうとしても黒カビのようにこびりつく。そんな様子を見かねたのかそれとも単純に疑問に思ったのかでっぷりと肥った猫族の上司が話しかけてきた。
「おい、どうしたんだガラリア」
心配しているのか心配していないのかわからない面持ちとカラフル過ぎて逆に食欲が減退するドーナツを食べている上司にガラリアは少しだけ愚痴を吐く。
「いや、自分の無力さに嫌になりまして。」と愚痴ろうとしたら
「そうか頑張れよ。」と上司は面倒くさいと感じたのかそのままどこかに行ってしまった。
薄情な上司を横目にガラリアはさらにため息を吐き残りの仕事を片付けることにし今日は早めに帰ることにした。
夕方を過ぎ太陽が隠れる。空は透き通った青から黒に変わり星が輝き始めるはずだった。どうやら今日はあいにくの雨らしい。
ポツポツと最初は小ぶりでアスファルトに水滴のシミを作るそしてそのままシミが見えなくなるほどの大雨と変わっていった。
そんな中、ガラリアは錆付きもう来ることもないバスをまつ場所で雨宿りをしていた。
雨の日は好きだ。理由がわからないが雨の日に家の中にいると守られていると感じ安心を感じられるからだ。だが雨は嫌いだ。ジメジメして空気がこもり、そして一番は濡れた時に服が肌にくっつくあの感触が嫌いだ。だから今のガラリアには理性というブレーキが壊れている。
「くそ、最悪だよ。長官に怒られるは、あいつには煽られるし上司には無下にされるし、星空は見えないし、本当に最悪だよ。俺がなにか悪いことでもしたのかよ。」
雨は一向に止む気配もなくこのままではバス停で一夜明かすことになってしまう。
それは絶対嫌だ。ふかふかのベットで一夜明かしたい。ガラリア深く考え悩んだ末にある事をしようと覚悟を決めた。
ガラリアは自分のネクタイを人差し指でとんとんと優しく叩く。
「おい、起きてくれ。リディ」
するとネクタイは風がない中で大きく揺れ、ネクタイが無くなりかわりに虹色で透明の羽もつ妖精にかわった。妖精はすっぽりと手の平に収まり背伸びをし、眠たそうに眼をこする。
「う〜ん。もうご飯の時間なの〜ってそんなわけないかうちの稼ぎが少なすぎるからご飯なんて高級なものはないんだった。寝よう。」
おっと聞き捨てることができない言葉を言われたような気がする。
「まて、まて、まて。俺は結構稼いでいるほうだと思うぞ。多分。いや絶対だ。」
「曖昧な時点でもうだめじゃん~。」
痛いところを突かれてしまった。いや突かれていない。こんな妖精に俺の大切な恥部を突かれていない。それに男は稼ぎがすべてではない。
ガラリアはヒートアップした思考を無理やり断絶し、なぜこいつを呼んだのかの原点を思い出す。
「ふぅーー。リディ聞いてくれ。俺の気持ちを聞いてくれ。」
「どうしたの告白でもするの~」
「悪いが俺の趣味は凹凸が激しい子だ。じゃなくて俺はお前に言わなければならないことがある。」
「ん?何々~くだらないことなら絞め殺すから~」
「いろいろと物騒だがいいだろう。くだらなかったら俺を絞め殺してもいい。リディ、俺の傘になってくべえええええええええええ」
ガラリアの告白はどうやらくだらなかったようでリディは、いつの間にかネクタイに戻り首を絞める。肺に空気を送るために醜くもがき引きはがそうとする。しかしどうやら彼の冒険はここで終わったというわけではなく。ぎりぎりのタイミングでネクタイが緩められた。
「ぐへえああっ。ヘアッ」
「死にかけのウルトラマンの真似はやめて、そろそろ本当のことをいってよ~」
純粋な瞳に純粋な疑問このままでは殺されてしまう。ガラリアは涙目になりながらどうしようかと思考を回転させる。しかし回転しても元の思考に戻るだけ。
どうしても傘に戻ってしまうどうすれば、どうすればいいんだ。
「へ。いやその。っっっこの世界はくだらないと思わないかリディ。」
「はぁあ~」
「この世界はくだらなさすぎる。どうして俺は苦しまなければならないのだ。ただ生きてただ過ごして悪いこともしていない。いやむしろ善の行いをしているというのに上司に無視されるは同僚に威張られるわ。傘を忘れ雨に打たれて首は赤。ふざけるな。」
「途中変なこと言ったけどまあいいか~」
「この世界を滅ぼそうリディお前たちの力があればこの鉄のように冷たい世界を熱く打つことができる」
「うん....それで」
「それで、それで、ごめんなさい全部冗談です。傘になってください。」
途中変な感じに思考を回したが結局は土下座して頼むことになった。人間素直が一番。
「えーーー。うーーん。まあ、普通に濡れるのは嫌だな~」
「だめですか。」
「だめだね~」
終わった。ガラリアの人生はここで終了かと思われたがどうやら神は見捨てていかったようだ。
「傘をあげましょうか。なにやら自分本位な願いが敗れたようですから。」
「ずいぶん具体的な例えで、す…ね。」
「どうしたんですか?」
神は見捨ててはいなかった、それはどうやら勘違いだったらしいどうやら神は意地悪なようでガラリアに話しかけてきたこの男は話し方と声色が違うが仕事場で何度も見た顔だ。
差別主義者のベルテンどうしてこいつがここにいるんだ。
「どうしたんですか驚いた顔をして。」
「いやーすみません。話しかけたの人族だったのが意外だったので、最近人族は減少傾向にあるものですから」
「確かに私もまさか人族にあうとは思いませんでした。いやー見つけた時のあの感動。もう一度味わいたいものですね。」
「ハハハ。」
「ところでそこにいる小さな虫は友達ですかな。」
「うーーー。虫じゃないよ。妖精のリディだよ~」
「妖精。聞かない種族名ですね。どこかの排他的な土地からこちらに越してきた田舎臭い種族ですかね。犬族や虫族、他にも魔族など最近はこの国にたくさんの種族がやってきましたからね。こんなに種族が多いと覚えるのも一苦労。人族の土地だというのになぜこんなにも生きずらいのか。困ったものでよ。」
っとぽりぽりとベルテンは頭を掻きながら困った困ったと嘆いている。ここまで露骨に差別するものなのか。ガラリアは一刻も早くこの崩れかけた雰囲気から飛び出したかった。飛び出すために無理やり話しを切り上げることにする。
「そうですねあはははは。ではそろそろ暗くなりすぎるので帰りますね。じゃあ行くぞ。リディ。」「うーー。虫じゃないし田舎臭くない~」
憤慨するリディを無理やりポケットに詰め込みながらこのまま帰ろうとした瞬間。
「ちょっと待ってください。傘が欲しかったんでしょうガラリアさん。少しだけ壊れていますがこれをあげますよ。」
とすこし壊れかけている傘を渡してきた。ガラリアは関わっりたくないがここで受け取らないのも不自然なので受け取ろうとしたが、ある疑問が頭をかすめた。
「…名前って名乗りましたっけ。」
「いいえ、対面だと名乗っていませんね。でも知っていますよ。調査官のガラリアさん」
「いつから気づいて…いた。」
「いつからですか。それは難しい質問ですね。前からと言ったらうそになりますし直前までといったら更にうそを重ねることになります。いやーその質問は本当に難しいですね。」
ハハハお見事と皮肉も何も入っていない純粋な賞賛にガラリアは恐怖を感じる。監視している奴の目の前でどうしてあんなにも笑っていられるのか目の前にいるのが同じ種族だとは思えなく感じる。
懐かしさと恐怖が肌にへばりつきながらガラリアは思考する。どうしてばれたのか答えは簡単だと思えた。
「さっきの質問は忘れてもらって構わない。どうして調査員が張り込んでいることが分かった。まさか裏切者が」
「裏切者はいませんよ。というか調査機関で人族はあなただけですからね。どんなに金をつまれても亜人どもと仲良くはしたありませんから。」
裏切者はいないたった一言によってガラリアの思考は深海に潜る。
「じゃあどうやって」
「教えたいのは山々なんですが、これでも革命家でして革命をなした後でならいくらでも飽きるくらい教えますよ。でも今はだめです。こころ苦しいですが今は教えられません。」
さすがに答えは教えてもらえないらしいだがそれでも本当に残念そうな顔をする。心の底から出している顔だ。本当に身内に優しい奴は恐ろしい。
「革命を起こせると思っているのか。」
「ええ、思っていますよ。実際ガラリアさんも起こせると確信しているでしょ。多様化は色彩豊かに見えて案外もろいものですからね。それに相手は完全に私たちをなめくさっている状態です。これで起こせないわけがない。」
自分の好きなこと以外を嘲笑し馬鹿にする笑い声をあげながらこの国の脆弱さを問いた。
ガラリアはありもするかもしれない理性に語り掛ける。
「お前がこれからやろうとしていることはこの国の国民の平穏を壊すようなことだぞ。それを」
「いえいえ、この国の国民の平穏は壊させません。私はただその平穏を壊している。害虫たちを駆除しようとしているだけです。」
どうやら彼の理性はすべて人族だけに向けられる代物らしい説得はもとから無理だったのだ。
「それは人族だけがこの国の国民だというわけか」
「ええ、当たり前でしょここはもともと人族の国です。教科書で習ったでしょう。それなのに亜人どもは人族を哀れみ自分たちの価値観を押し付け、それを吸収し自分のものに変えたとたん亜人どもは人族を危険な存在だと非難し管理を始める。挙句の果てにはこの国の国王が亜人。あはははは、喜劇を通り過ぎて悲劇だ。ってそんなに睨まないでください。」
「なぜ俺の前に顔を出した。人族だからか」
「いいえ、その理由のほうがよかったのですが。あなたの前で顔を出せたのはあなたは私を捕まえることができないとわかっているからです。そうでしょう。亜人の上司によって私の逮捕は見送られている。動きたいのに許可が下りない。そんな理不尽を受けているから私はあなたの前に顔を出せたんですよ。けっしてあなたをなめ腐っているわけではありませんから。本当なら会うつもりはありませんでしたが、あなたが困っていたのでいてもたってもいられず飛び出してしまいました。」
どこまでも身内には優しい。そんな優しい奴だからこそ危ない。そういうやつらを俺はこの目で嫌なほど見てきた。
だが動くことはできない。こいつを捕まえても裁く方法がないのだから。
「では、この傘を安心してください。盗聴器などはつけていませんしあなたが不利益になる細工もしていません。安心して受け取ってください。」
と青空のようなカラッとした笑顔を向けてきた。空から降る光のような善意だが、ガラリアははそれが地獄からの手招きだと感じた。
「いや、断らせてもらう。確かに傘には何も細工はしてないらしいが受け取ることはできない」
ガラリアは恐怖を感じ否定する。だがその否定も彼には善意だと感じられたらしい。
「情が移ってしまうからでしょう。本当に優しい人ですね。優しいのに報われない。ほんとに理不尽な世の中だ。」
なぜこんなにも人族を信じられるのだろうかわからない。彼に何があるのかも知らないだが一つだけわかることはこいつは化け物に近い。
「ではこれで失礼します。私のことは上層部に報告してもらっても結構です。どうせ報告してもただそこで突っ立ているだけで何もしませんから。ではガラリアさん革命の日にまたお会いしましょう。その時はどちらかのわがままがたっているか楽しみです。」
そうして雨によって作られた霧の中に消えていった。先ほどまでのやり取りが蜃気楼だと勘違いするように何もなく静かに消えていった。
「うーーん。きついよ~」
ポケットの中でリディがジタバタと暴れる。ガラリアは苦虫をつぶしたような顔を作りながらとぼとぼと自分の家に帰っていった。
雨は止み。家路に着く。古臭い一軒家の窓からは光が見える。どうやらあいつらはまだ起きているらしい。
ため息を吐き出しながら建付けの悪い扉を開ける。いつも通りの出迎えだと思っていたがどうやら俺の想像の遥か斜め上の出迎えがあった。
「お、やっと帰ってきたか、遅すぎるぞ。帰る時が遅い人間はな、人のために生きることができなくなるんだぞ。ガラリア」
そこには昔、戦場をともにした戦友がいた。驚きのあまり俺はさびれた鉄パイプのようにただそこに突っ立ていた。そうしていると
「うああああ、ガラリア!!」「ちょっとサリー大声上げないの」
いつもの顔ぶれの妖精メアリーとサリーが俺の体に抱き着いてくる。どうやら彼にいじわるされたらしくメアリーは頬に涙を貯めていた。
「あはははは、相変わらずのモテ男だな。本当に気に入らないなぁ。」
「相変わらず俺を嫌っていて安心するよボマー。」
「そりゃうれしくない表現だ。」
会うことができないはずの戦友、どうして彼がここに来たかもわからない。いやどうやって俺を見つけたのかもわからない。だがこれだけは言える。
どうして最初にあったのがこいつなんだと。
ガラリアはベルテンにあった時以上に毒蛇をかみ殺す顔を作った。
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