第13話

 一週間後、丘頭警部から下藤ひとみの居所が分かったと連絡が入った。

 夫の下藤爽太が盛岡市内で開業医をしている。妻のひとみは看護師、娘のほのかは薬剤師でほかに看護師5名に薬剤師2名と事務方4名でやっている。

 事件当時は浅草の大学病院に医師と看護師として在籍し、そこで知り合い結婚し娘が生まれた。そして、事件のあった二週間後に盛岡の大学病院に移籍して、それから3年程して開業したそうだ。

 浅草の大学病院に勤務していた時は、武蔵野市でアパートを借りていた。

盛岡に引っ越して一軒家を借りていたが、開業に合わせて病院の三階を住まいとしたようだ。

哀園るり殺害事件は三鷹市だから、隣の町で遠いとは言えないが近くもない。

 一心は会いに行こうと思い警部に告げると、警部も行くと言う。その前に事件現場と元の下藤宅を見たいと言うと、警部がパトカーで案内すると言ってくれた。

 一時間後、警部が迎えに来た。先ずは三鷹市御殿山の下藤一家の住んでいたアパートへ向かう、約30キロの距離があり普通に走れば一時間ちょいだ。

着いてみるとそのアパートは井之頭恩賜公園に近い住宅街にあって、そこから、武蔵野の現場まで最短コースで向かった。

「警部!現場まで1分もかかんないじゃないか!」一心は驚いた。別市だから距離があると思っていたら、線路を挟んで両市が隣り合わせで、殺人現場から下藤宅まで200メートル有るか無いかといった所だ。

「私も、こんなに近いとは思わなかった。だとすると、哀園るりの用事は下藤宅か?」警部は急に前が明るくなったように話す。

「そうだな、強請のネタは下藤爽太の女関係か?いや、それだと田浦は庇わないよな」

「そうねぇ、庇うとすれば下藤ひとみの方かしら?」

「だけどよ、別れて13年、男が別の男の嫁になった女を庇うか?」

警部は腕組みをし難しい顔をして「不倫が続いていた?」と呟く。「13年間不倫が続いていたって言うのもなぁ、無いとは言えないが・・・」一心も次の考えが浮かんでこない。二人はここで行き詰ってしまう。

「警部、帰ろう。考えても答えはでない。明日、盛岡へ行って下藤の家族に会って、話はそれからだな」

「そうね、やっぱり静も行くのかな?」

「おう、張り切ってるからな」

 

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