第11話

 この日、丘頭警部と静と三人で捜査状況の打ち合わせをした。

「闇金へ行って来た。奴らの話によれば、哀園るりは殺される前、闇金の強請りの手伝いと自身も強請りをしていたようだ」一心が言うと、警部は顔色を変えて「うちらが調べた時には、哀園るりが強請りをしてたなんて一言も言ってなかったわよ」目を丸くして驚いている。

「そりゃ、警察にそんなこと言ったら、突っ込まれてやばいからさ」

「ってことは、強請りの相手に殺された疑いが濃くなったってことかしら?」

「おう、どう見ても、田浦は犯人じゃない。しかし、凶器を持っていたってことは?」そこまで言うと

「誰かが殺害に使用した凶器を、田浦が自分の部屋に隠し、自ら逮捕され自供し、投獄されても良いと思った?」そう警部が続けた。

「その時、田浦に女はいたのか?」一心が問う。

「いや、いなかったわ」

「親族は?友人?」

「そんな殺人を庇うような相手はいなかった」警部が腕組みをして天井を見上げて考えている。

「闇金の奴が、哀園るりが隠し子がどうのと話してた、と言うんだが、何か心当たりはないか?」一心がそう言うと警部は一層眉間に皺を寄せて天井を睨みつけている。

 そして警部が思い出したように「そういえば佐藤刑事からの報告で、あのジュースは販売機のでは無かったようよ。一週間前の精査以降13個売れてて、すべて購入者は宿泊客だった。だから、外から持ち込まれたものだという事ね」

「ったく~、奴ならそれすら調べようとしてなかったんだぞ!」一心は佐藤刑事の捜査のやり方に腹が立った。

「一心、悪いな、私が代わって謝る」

「いやぁ、警部に謝られても俺困るし、でも犯人が玄武元刑事に渡した可能性が出てきたわけだから、その線を佐藤に洗わせてくれな。というか剣が崎の保養所にも販売機あったよなぁ?静」

「へぇおました。野菜ジュースはどぉやったかいなぁ?」

警部はそれを聞いてすかさず携帯を握った。

暫くして、「保養所には無かったわ」と残念そうだ。

それなら、田浦がそのジュースを買って毒を入れるのは無理か、とも思ったが「田浦のとこに来客あったかな?事件の一週間以内で」と訊いた。

警部は再度携帯を片手に席を外した。

5分程して戻った警部から「保養所の管理人が、田浦のところへの来客は事件の一週間以内には無かったと言ってた」と伝えられた。

 一心は、ジュースの購入場所は、恐らく剣が崎の温泉か保養所の近隣の町のコンビニやスーパーだろうが、数が多過ぎる。特定は無理か?・・・もう少し条件が欲しいと思った。

 

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