えん罪じゃない!愛だ!殺人事件

闇の烏龍茶

第1話

 「静っ!まだかぁ?」

出かけるって言えば支度が遅い。俺はいつもイライラさせられる。ちょっと前の調査で依頼主が法外な調査費を払ってくれたので、子供らがご褒美と言って夫婦二人旅を提案してくれた。それで何年かぶりの夫婦水入らずの温泉旅行に行くことになったのだった。

なのに・・・


「一心、堪忍しとくれやす。おなごはんは時間のかかるもんやし、さっいきまひょか」今日は45分遅れだ。

相変わらず静は着物姿。まあ、世に言う京美人、そこに惚れた弱みだ、謝られたらこっちが悪いことをした気になってしまう。

「なんもだ、いつものことだから、それにしても良い着物だなぁ」

「ふふふ、なに言いやしてんの、先週も着てた普段着やないか」

普段は存在もあまり意識しなくなる程付き合いは長い。結婚して30年近くになる。子供も二人。

今その二人が見送ってくれている。

「じゃ、気を付けていけよ!」男言葉は娘の美紗、成人式は疾うに過ぎているというのに色気ゼロ。

「もう、いい年だから休み休みな!東北は遠いからよ」未だにヤンキーっぽい長男数馬、兄のくせに妹に扱き使われている。

「じゃ、行ってきまーす」手を振って浅草の岡引一心探偵事務所を出発した。桜の季節は道すがら景色も楽しみだ。

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