第48話 2度目の逃げるのコマンドを選択っ


「とりあえず落ち着け、お前ら。今日は人の目も凄いし、また今度だなしっかり話し合えばいいだろう?」


 俺は流石に注目を集めすぎだというのと、2人とも今は冷静じゃないから少し置けば頭を冷やして冷静になるかもと判断し、そう切り出す……が。


「「いやよ(です)!」」

「拒否!?」


 まさかのシンプルに断られてしまいどうしようも無くなってしまう。というか、完全に周りが見えなくなっているな。


「い、市ノ瀬先輩は伊賀先輩と結婚の約束したって言いますけど……伊賀先輩が覚えてないなら無効ですよね?」

「うっ!? い、いやでも思い出させてやるから」

「でも、現時点では伊賀先輩にとっては初対面みたいもので私の方がリードしてるはずですっ」


 俺がいかにして2人の頭を冷やさせるかと考えていると新井が市ノ瀬さんに攻撃を仕掛けていた。


「なっ、アナタだってそこまで深い関係じゃ……」

「い、伊賀先輩の家に上がらせて貰ったことも逆に私の家に上がって貰ったこともあります」

「「「「そうなの!?」」」」


 この新井の言葉には市ノ瀬さんばかりでなく聞き耳を立てていたクラスの連中も声を上げる。

 というか、俺の家に新井が上がったという話は半分不法侵入のようだった気がしなくもないが……新井の名誉の為に黙っておくことにしよう。


 実際、新井の看病に助けられたのは事実だしな。そういや、未だにハッキリとはしてないんだがやっぱりあの時の額の感覚は……。


「い、伊賀くんも顔を珍しく少し赤くしてどうしたのよっ。まさか本当にそうなの!? デキてるの?」

「うん、頼むからデキてるとか言わないでくれ。変な噂が広まっちゃうから」


 この教室内だからいいが、これが他のクラスの人が聞いていたら恐らく一か月前の事件と同じことが起こっていただろう。

 ……一応、クラスの連中は状況を楽しみながらも節度は湧きまえてくれてるからな。噂を広めるようなことはしない。

 いや、たまには楽しんでないで助けてほしいけど。


「で、でも、伊賀くんが思い出したらコッチのもんだからっ」


 というか、市ノ瀬さんも市ノ瀬さんで後輩相手にその余裕のなさはどうかと思うがあれでいて新井は凄いからな。

 静姉さんから手ほどきを受けていて、ある程度人の心理などを読めてコントロール出来る。

 ……まぁ、静姉からその攻撃を受け続けていた俺には通じないわけだが、耐性のない相手なら今みたいに焦らせたりするのは簡単だろうな。


 新井はきっと俺と市ノ瀬さんが結婚の約束を本当にしているのか確かたくて、市ノ瀬を焦らせ俺へとけしかけ真意を確かめようとしているのだろうが……本当に俺も分かってないのだからどうしようない。

 というか、静姉には是非とも昔の純粋無垢だった新井を返してもらいたいものだ。


「……」


 しかし俺の方をジッと見つめていた新井も本当に俺が分かっていないことに気がついたのか軽く諦めたように首を横に振っていた。


「そ、そうだ。じゃあ一緒に帰りましょ? そうしたら昔のこと思い出すかも」

「なっ!? そ、そんなのダメですっ」


 すると、新井によって焦らせていたであろう市ノ瀬さんがそんなことを言いはじめる。新井もこれには驚いたようで声を上げる。

 ……まだ、他人のコントロールは完璧じゃないみたいで少し安心したな。いや、だからといって俺もこの展開は困るわけだが。


「伊賀先輩は私と帰るんですっ」

「なっ、それこそダメよっ。久しぶりの再会なんだから」


 ほら、こうなるって知ってたからさ。……まぁ、知ってたところでやれることなんてほぼないけど。


「「先輩(伊賀くん)どっちと帰る___いない!?」」


 まぁ、唯一やれることがあるとしたら隙をついて逃げ出すことくらいなわけなのだがな。

 この方法は根本的な解決とはならないだろうが2人の頭を冷やさせるにはもってこいだ。

 先程は、イスに座っていたことと新井と市ノ瀬が俺を逃さないように警戒していたこともあってが出来そうもなかった。


 しかし、新井と市ノ瀬がお互いに声を上げる中で隙がしばしば出来ていたから尻を浮かせ鞄を持つことは造作もなく出来た。

 そして、もうあとはこのまま最速で玄関へと向かい帰ればそれでいい。

 山場はもう超えたのだからあとは簡単だ。


「君、元気なのはいいけど学校内を走るのはやめてね〜」

「すいません」


 俺が玄関へと向けて走っていると恐らく校務員のおじさんにそう声をかけられるが、止まるわけにもいかずそのまま通り過ぎる。


「ん?」


 いや、待て。今のは少し変ではないだろうか? 俺は今全力で走っている。その状態の俺のことが見えていたのか?ただの校務員のおじさんに?

 いや、どう考えてもおかしい。なんだこの違和____。


「お姉ちゃんさっきやめてって言ったよね♪」

「あっ、静_____」


 そこで俺の意識は途絶えてしまった。






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 次回「拷問とアドバイスと決意と」


 なんか伊賀くんが逃げようとするといつも静姉にやられているように感じるのは自分だけでしょうか?


 良かったら星や応援お願いします。


 では!


あっ、翼のイメージイラストです。良かったら覗いてやってください。今回は妹作なんで自分のより上手く出来てます。(笑)


https://kakuyomu.jp/users/KATAIESUOKUOK/news/16817330652670328472

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