第47話 人とはみな修羅場の中を生きる動物
修羅場。人はそれを聞いてなにを思い浮かべるのだろうか? 現代では浮気などを思い浮かべる人も多いだろう。二股の発覚や不倫の発覚。当然、争いが発生するし自分に非がある場合は自業自得と思って受け入れるしかない出来事と言えよう。
だが、しかし!
「「早く説明してくださいっ(してよっ)」」
なにも悪いことなどしていない俺がこんな目に遭うのはあんまりだとは思わないだろうか?
別に俺は女子を口説いたわけでもないし、無自覚ムーブでモテモテとかそういうのじゃない。というか1人至っては本当に見たことすらないのだ。
「……人とはみな修羅場を生きる動物よ。あまり嘆くなよ、少年」
「おいっ、翼! なに、変なこと言いながら自然な形で去ろうとしてんだ。コイツらを宥めるのを手伝ってくれよっ」
翼が謎の仙人オーラを見に纏いながら(ない)髭をさする動作をして去ろうとするので俺は慌てて引き留める、が。
「ワシはあまり俗世は好かんのでのぅ」
「学校大好き人間がなに言ってんだよっ。おいっ、ガチで帰るな」
しかし、翼は今回は目も合わせることなく鞄を持ったまま去っていってしまった。か、完全に見捨てられた。となると、つまり。
「「いつまでも黙ってないでください(でよっ)」」
この2人を俺1人で説得しなきゃならないというわけだ。……誰か助けて。
「と、とりあえずそこら辺の席につこう。な?」
「わ、分かりました。でも、その代わりしっかりと説明してくださいね?」
「伊賀くんがそう言うなら従うけど……」
とりあえず少し落ち着かせようと俺がそう言うと新井と市ノ瀬は素直にそれに従ってくれる。
……こんなに素直にお願いを聞いてくれるなら出来れば、お帰りくださいとでも言いたいところだが流石にそれには従わないだろうから言わないことにする。
「んで、まず新井に市ノ瀬さんについて話そうと思うんだが」
「ちょっと待って」
俺がさっそくまずは新井に説明をしようとした瞬間に市ノ瀬さんからストップがかけられる。……一体、どうしたのだろうか?
「なんで、その子に先に説明するの? もしかして好きなの?」
「いや、なんとなくだけど?」
「……そう、それならいいわ」
市ノ瀬はそれ以上つっかかってくるとなく大人しく引き下がる。……本当になんだったんだ?
「まぁ、いいや。話を戻すか。市ノ瀬さんなんだが……なんか、俺の知り合いで結婚の約束をしている、らしい」
「らしいって何ですか!?」
市ノ瀬さんの手前本当に知らない人とは言えなかった俺の言葉に新井が激しく反応する。そして周囲のクラスメイトは漏れなく聞き耳を立てていた。というか、さっきから静かすぎんだよっ。お前ら。
あと、市ノ瀬さんも自慢げな顔するのをやめて欲しい。新井宥めるの大変なんだから。
「そ、そのだな、俺は全く覚えてないんだがそうらしいんだ」
「そ、そんなの勘違いなんじゃないんですか!?」
新井も市ノ瀬と話し始めた頃の俺と同じ事を思ったようでそんなことを言う。
「いや、でも俺の任務のこととか知ってるし、家の中に入ったこともあるって言ってて嘘をついてる感じも読み取れないから全部が違うとは言い切れない状況なんだ。しかも、小1の頃だって言うからな」
「うっ」
しかし続く俺の言葉を聞いたことで新井は押し黙ってしまう。なんか、今の新井の気持ちに凄い共感してる俺がいる。本当にどうしていいか分からないって感じだからな。
「これで終わりね? じゃあ、私にその子について話してくれるかしら?」
新井がイマイチ納得いかないといった表情で考えこみ始めてしまったのと同時に市ノ瀬さんがそう口を開く。
「いや、まぁ新井は後輩で昔よく遊んでた幼馴染だ」
俺が素直に新井と俺の関係について話すと市ノ瀬さんが少し怪訝そうな顔をする。
「ただの幼馴染には見えないんだけど……」
どうやら先程の新井の態度を見てか色々と気になっているみたいだ。いや、まぁ俺からすると今は市ノ瀬さんのことの方が謎が多いんだけどな。
「べ、別に特別な関係とかじゃありませんよっ。ただ私が一方的に伊賀先輩慕っているというだけで」
「慕って……つまり好きってこと!?」
「それは……ま、まぁはい」
市ノ瀬さんの少し慌てたような問いかけに新井は少し耳を赤くし、コチラをチラリと見ながらそう答える。……普通に可愛くて反応に困るな。
「あれ? というか伊賀くんもなんか照れてない!? も、もしかして伊賀くんもアナタのことを……」
「い、いえ一度振られてますから……」
「そ、そう」
新井の返事を聞き市ノ瀬さんが心底安心したと言った様子で胸をなで下ろしていた。……この様子を見ているとやはり嘘をついているようには見えないんだよな。
「でも、私はまだ諦めてませんしいずれ落としますからっ」
「なっ!?」
しかし続く新井の言葉を聞き市ノ瀬が目を見開き驚きの声を上げる。というか、今のは新井からの俺に対する宣戦布告のようにも感じたが……気のせいだろうか?
「だ、ダメ。私は伊賀くんと結婚の約束をしてるんだから」
「でも、伊賀先輩は知らないって言ってましたし、確かにそうじゃない証拠はありませんけど逆にそうだという証拠もありませんよね?」
「うっ」
新井からの鋭い指摘を受けて今度は市ノ瀬さんが言葉に詰まる。そう、新井の言う通り現時点では確実な証拠がないだけにどちらとも言えないのだ。
つまり、絶対に市ノ瀬さんが言っていることが正しいとも言い切れないということ。
すると市ノ瀬さんは暫く黙り込んだ後にある結論に達したのか顔を上げると俺のことを指差して、
「絶対に覚え出させてやるんだから……覚えてないさいよっ。私だって諦めないんだからっ」
そんなことを宣言する。そして新井と視線を交わしなにかを牽制しあう両者であるが俺からも1つ言わせて欲しいことがある。
お前らが馬鹿でかい声でそんなこと言うもんだから教室のムードが……クラスメイトの様子がとんでもないことになってるんだがどうしてくれんの!? てか、なんかメッセージ打ち込んでる人とかいない?
これ、明日噂がとんでもないことになってるパターンだろ! 俺分かってんだけど、オチ見えてんだけど!
というわけでまとめると一言。
本当に誰でもいいから助けてください。
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次回「2度目の逃げるのコマンドを選択っ」
10万字達成!!!! カクコンギリギリセーフ!(残り30分でした)
ちなみにカクコン終わって明日からの話ですが前言っていた2日に一回投稿の話はなしです。
出来る限りは1日1話投稿で頑張りたいと思います。理由は単純にもうこのままの勢いで最終回まで走りきりたいからです。
もし、無理そうだと思ったらその時に報告します。
では! あ、あと良かったら星や応援お願いします。
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