第2章 転入生の美少女が告白を断る際に俺と結婚の約束をしているからと言っているらしい

第43話 2つの結婚の約束


 いつも以上に多くの人を巻き込みあわや町内にまで知れ渡るところであった「できちゃった婚騒動」から1ヶ月ほど経ったある日、最近俺に関する妙な噂が流れ始めていた。

 いや、ここで勘違いして欲しくはないのだが今回のは俺と新井がとか言ういつものたぐいのものとは明らかに異なるのだ。


 というのも約3週間ほど前に我が高校には珍しく転校生というものがやってきた。その名は市ノいちのせ 花音かのんさん。中学や小学校の頃などは割といたが高校では滅多に見ることのない転校生。

 しかも、同級生で2年生に入るということもあってか当然俺たち2年生の間ではかなり前から騒がれていた。


 まぁ、ただの同級生であるなら異常と感じるかもしれないが偶々その子が学校を見学しているのを見てしまった生徒達が口を揃えて「とんでもない美人」だったと言っているのだ。

 これに転校生というワードが重なって盛り上がってしまったのだろう。……特に男子達にとってはまたとない好機。

 その転校生が来る前日、一部の男子生徒は美容室へと行き脱毛をして必死に頑張っていたらしいが……その全員が当日に告白し、見事に振られたというのはかなり噂になっていた。


 別にそれだけなら俺にとっては関係のないことだ。翼との会話のネタとして使い「ふーん」くらいで済まされる程度の話。だが、問題はここからである。

 どうやら、振られた男子達の証言によると断られた理由が「伊賀 光太郎くんと結婚の約束をしているから」とのことらしいのだ。


 どこか聞いたことのあるようなないような話だが当然そんな話が出回れば当然噂も大きくなっていく。

 その上、俺と新井が結婚の約束をしているという噂も一部ではまだ残っている為「二股」「浮気」などというワードも上がっているらしい。

 最初は新井の時同様に放置で時による沈静化を待っていたが、収まるどころか勢いを増していく噂を流石に無視できなくなった俺はいよいよ直接本人に聞きに行くことに決めたということである。


 いや、3週間前はこんな事になるとは全く予想していなかった。

 思えばあの騒動が一旦落ち着いたことにより俺自身どこか油断してた所が___いや、警戒しててもこれは防げないか。



 *



「あっ、お殿様っ!」

「多妻制時代の住民じゃないっ!」

「……だって、新井ちゃんも入れたら2つも結婚の約束してるんでしょう?」


 登校中、後ろから元気な声が聞こえてきたので俺がそう返すと翼がジト目でなんとまぁ言い返しにくいことを言ってきた。


「いや、でも新井のは新井の誤解であって約束ではないというか」

「そんなこと分かってるけどさ、一部の人達はそうは思ってない。 ハーレム許すまじ、みたいな過激派もいるから気をつけてよ?」

「どこもハーレムじゃないんだけどな」


 俺がそう言うと翼は可笑しそうに大きな声を立てて笑う。本当に気持ち良さそうに笑う奴だと思いながら俺は翼が落ち着くのを待つ。


「? ど、どうしたの? そんなに見つめて」


 しかし、そうしているとやがて俺の視線に気がついた翼にそんな声がかけられる。


「いややっぱ俺、翼の笑ってる顔が好きだなって」

「へっ!?


 特段隠すことでもないので俺がそう言うと翼が間抜けな声を上げる。? どうしたのだろうか?


「……色々な問題は割とこうくんに原因がある気がしてきたよ」

「なんで!? 今の俺にそんな悪い所あったか?」

「うーんと、例えるなら軽い凶悪殺人犯みたいな?」

「大犯罪者だっ!」


 軽くは全くないなと思いながら俺は翼にツッコミを入れる。多分、冗談で言っているんだろうが割と目が真剣なのが気になるな。

 ……もしかして、ガチで言っていたりするのだろうか?

 俺は少し不安を抱きながらも学校に到着するのであった。



 *



「確か1組だったよな?」

「うん、1組は確か1つだけ三階にあるクラスだからね。間違えないように」


 翼に一応確認をとった俺は玄関でスリッパへも履き替えるとある程度のスピードで三階へと上がっていく。


「さぁて、1組……ついたは着いたけどまだいないだろうな」


 俺は1組の目の前まで来るとそう呟く。というのも現在時刻は7時55分。各クラスに1人くらい来ているか来ていないといった時刻だ。

 来るにはあまりに早い時間。


「まぁ、来るまで待つかな……うん? でも、一応人はいるな」


 目立つだろうが待って確実に会うことを選択していた俺は教室の中に1人の生徒を見つける。ちなみに俺の視線に対する抵抗だったり、目立つことに対する耐性はこの2ヶ月ほどでかなりついていたりする。


「「あっ」」


 すると偶々教室に1人いた生徒と目があってしまう。しかし、俺が驚いたのはそれだけではない。その生徒は声も出ないほど美しく、そして銀髪であったのだ。まぁ、彼女の方も驚きすぎな気がするけど。


「ど、どうも市ノいちのせさんに会いたくて来たんですけど……」


 一瞬この人が市ノ瀬かとという考えがよぎったがもし違った場合、かなり失礼にあたると考え俺がそう声をかけると彼女は少し驚いたように肩を震わせていた。


「わ、私がそうだけど?」


 一瞬の静寂の後に彼女から出た言葉に驚きつつも納得する。……同級生に銀髪の人なんていなかったからな。


「少し話したいことがあって来た伊___」

「伊賀 光太郎……でしょ?」


 俺が名前を言う前に彼女から出た言葉に俺は固まる。というのも、彼女に会った時点で俺は安心しきっていた。

 何故なら彼女とは間違いなくあったこともないからだ。あの噂もなにかの間違いだと確信していた。

 しかし彼女の口から出た俺の名前。だが、俺はこの人を知らない。一体これはどういうことなんだ?





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 次回「忘れたとは言わせないわよ?」


 現場は大混乱の模様。2章も引き続き楽しんで頂けると嬉しいです。

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 では!


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