第37話 付き合ってるんだよね?
「マジか……」
俺は翼が去っていってしまった廊下をしばらく見つめた
だが、どうして泣いていたのだろうか?
色々と気になる所はあるがそこが1番引っかかる。
しかしこうなると他に打てる手は限られてくる。翼は今、接触してもダメだろう。理由は分からないが先程の様子から避けられる可能性が高いと見るべきだ。
しかし、このままでは噂は広まる一方。学校では収まらず町内に溢れる可能性もある。それだけは絶対に避けたい所だ。だが、新井本人にも誤解だということが伝わっていない。
「……やるしかないか?」
俺は自分自身に問いかけるかのように独り言を呟く。俺が考えたのは直接新井の教室へ行き新井に誤解だと伝えることだ。
正直に言えばリスクが高い。この噂の中俺が新井の元へと行ったとなれば拡大の恐れは大きいし、もし信じてもらえなかった場合リターンは得られない。
だが、このままなにもしないでいれば噂拡大の歯止めをすることは出来ない。ここはリスクを負ってでも行くべきだろう。
「っし。行くか」
俺は両手で頰を叩き気合を入れると1年の教室の方へと足を進めるのだった。
*
「おいっ、あの人って……」「確か新井ちゃんと付き合ってるんだよね?」「というか昨晩はお楽しみだった人じゃないの?」
俺が新井のクラスの教室の前までやってくると案の定、様々な所から視線を集め色々な声が聞こえてきた。……どうやら、1年生ではかなり噂が広まっているらしい。
とはいえここで怖気づいて迷っていては余計に注目を集めるだけなので、気合いを入魂し新井の教室の中へと入ることにする。
周囲からどよめきが上がったようにも感じるが気にせず新井の席へと向かう。
「おはよう、新井。朝早くで悪いんだが少し話したいことがあるんだが……いいか?」
「お、おおおはようございます、伊賀先輩。も、勿論だだ大丈夫です」
周囲の声からか俺が来ているのは分かっていたらしい新井だが声がガチガチで動きもロボットみたいにカチコチである。……正直、かなり不安だ。
「なんの話してるんだろう?」「わっ、本当に新井ちゃんが顔赤くしてるっ。いつもクールな感じなのに」「これがリアル伊賀新井カプ……ファンとして光栄ですぅぅぅぅ」
俺と新井が挨拶を交わしていると周囲から様々な声が聞こえてくる。というか、あの後輩君も入ってるファンクラブの子いなかった?
「それで昨日のことなんだが……」
「き、昨日の……はい」
このまま注目を集めすぎるのはマズイので手早く終わらせることにした俺は早速本題へと入ろうとするが、新井が顔を真っ赤に染めて俯いてしまったのでどうしていいのか分からなくなる。
「えっと、話しても大丈夫か?」
少し心配になった俺は新井にそう尋ねてみることにする。すると返ってきたのは、
「だ、だ、大丈夫でしゅ」
「……」
「……」
そんな頼もしい返事だった。というかこれダメな奴だろっ。そして当然のごとくその場に微妙な空気が充満する。新井の方も相当恥ずかしかったらしく顔を手で覆って隠してしまっていた。
「だ、大丈夫だから。俺なにも聞いてないから。落ち着いて、な? ゆっくりでいいから」
「はっ、はい。……その、ありがとうございまみゅ」
「……」
「……」
そして再び流れる非常に微妙な空気。本人はいたって真面目に言っているからツッコムのもなんか違うし、どうすればいいのか対処に困る。
「うぅっ、なんかダメダメですいません……」
流石に2回目ということもあってか新井は普段の元気をなくし完全に俯いてしまう。
「っ……!? せ、先輩?」
どうしようかと考えた末に俺は俯いている新井の頭を撫でて少しでも安心させる方向へと舵をきることにする。
「大丈夫だから……ゆっくりでいい。焦らなくいいから」
「はっ、はい。えへへ」
俺がゆっくりと撫でてやると嬉しそうに目を細めてだらしなく笑みをこぼす新井。しかし、どうやらこうすることによつて落ち着いているみたいなのでしばらく続けることにする。
「うっう、ぅぅゔぅ」「ど、どうしたの恋慕ちゃん!?」「尊……尊すぎるよぉ。これが生伊賀新井……尊いよぉ」「そっ、そっか」
まぁ、ダメージはかなり深いけどねっ!(やけっぱち)
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次回「? 先輩なら私は全然構いませんけど?」
投稿休んでてすいません。ここからカクコン終了までは毎日投稿で今週の土日は多分大量投下することになると思いますが、カクコン終了後は2日に一回とかに落とすと思います。
正直、気力が持たないからです。すいません。最近休んでたのも色々あってスランプ入ってました。ごめんなさい。
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