第36話 「どうせ、結婚の噂___えっ、なにその噂!?」


「先輩〜」

「どうした?」


 色々とありすぎた昨日を経て俺が今日の朝いつものように登校していると後ろから例の後輩くんが息を切らして走ってきた。

 その顔は焦っているようにも、喜んでいるようにも見えるが一体どうしたんだろうか?


「ついにやりましたねっ!」

「? 何の話だ?」

「なにって……先輩はぐらさないでくださいっす」


 いや、そう言われた所でまるで思いあたる節がない俺は疑問符を浮かべる。


「? ついに結婚が決定したということで」

「してねぇっ!! つーかなんだ。また同じようなのか?」


 定期的に流れる俺と新井が結婚するという噂。伊賀新井カプの後輩くんにとってはご褒美デイなのかもしれないが俺にとっては頭痛の原因だ。


「違いますっす。あの、ついにデキたって聞いたんすけど」

「なんだその話!?」


 デキたってなにが!? 俺と新井が? 今まで結婚の噂(嘘)が流れることはあってもそんな噂始めてだぞ。


「いやぁ、これでR-18的な妄想も捗るっす。

 ありがとうございます」

「……一体どういう話を聞いたんだ?」


 余程興奮しているのかいつもの冷静さを無くしてしまっている後輩くんに俺はゆっくりとそう尋ねる。


「昨日、先輩が新井さんの家に入って帰ってその後、新井さんの友達がライ◯で新井さんの様子が変なことに気づいたって言ってた気が……」

「まて、それだけじゃ確実性はないだろ?」

「え〜、今頃隠そうとしても無駄ですよ。だって新井さんは「押し倒された」とかなんとかメッセージを送ってたそうですから」


 しまったっっ。そういや、昨日結局新井に事情話せてないんだった。新井からすればそう言う風にしか見えてないというわけだ。どおりでこんな噂が……というか、あの時誰かいたのか。疲れていたとはいえ油断しすぎだな、俺。


「悪いな、用事が出来た」

「うっす。じゃあ、お幸せに!」


 いや、違えよっ。と言いそうになったがこの場でそれを言ったところで新井本人がそう言っているという、この状況を改善しないことにはどうにもならないので俺は無視して全力で学校へと走っていくのだった。



 *



「ハァ、流石にまだ新井は来てないか……」


 俺が学校へとつくがまだ時刻は8時。いつも割と登校がギリギリな新井が来ているなんていう偶然があるわけもなかった。


「だが、翼はいるだろう。なんとか話をして噂を塗り替えて貰わないと」


 だが、翼なら話は別だ。朝早くに登校する翼は学校の中で幅広く人間関係を形成する人物であり、その影響力は偉大。それに俺が話せば信じてくれる気がする。


「おっ、翼! なんか変な噂が……」

「ごめん今は無理だよ」


 俺は翼を見つけ声をかけるが翼は俺になんのことか尋ねることもせずただ拒絶する。


「まだ、なにも言って___」

「分かんない。分かんないけど今はこうくんと話すのが……辛いんだ」

「っ!?」


 見れば翼は涙を流していた。そして、そんな翼に俺が驚いていると翼はその場から走り去ってしまった。










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 次回「付き合ってるんだよね?」


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