第34話 こ、光太郎にぃダメですよっ
テレビはつけていいと言われたが正直特に見たいものもないしな。無駄に電気を使うのはヤメた方がいいだろう。
しかし、そうなると特にやることがない。宿題をやろうにも鞄はビチャビチャであり勿論中身も同様。とてもやれるような状況じゃないしな。
しかし、新井が風呂に入ってかれこれ25分くらい。なにもやることがない。人の家の部屋で誰とも話すことなく1人というのはなんというか気まずい。
家主でもいるのならいいのだが現在それに位置する新井は風呂に入ってるしな。
だが、1人でなにもしてないと疲れからか眠ってしまいそうだ。そんな醜態を晒すわけにはいかないので眠気を覚ます意味でも少し周りを見渡してみる。
「おっ?」
俺は机に中々に気になるタイトルのノートを見つけて手に取る。というのも……、
「光太郎にぃのお嫁さんになる為のトレーニング法……か」
こんなタイトルなのだ。俺が気にならないわけがない。というか、写真といいこれといいこんな物新井の友達とかに見せられたら俺に手のうちようがないのだが。
中身は気になる所だが流石に勝手に見るのはよくないだろう。あとで新井に尋ねるなどして聞いて_____。
「光太郎にぃ上がりまし____たぁ。ってダメですっ。それ見ちゃダメですっ!!」
「うおっ」
可愛いらしいモコモコのパジャマを見にまとった新井が姿を現したと思ったら俺が手に持っていたノートを目にも止まらなぬ速さで奪い去ってしまった。……結構気になっていたんだがな。
「はぁ〜、あんまり焦らせないでくださいよ」
「わるかったな。っとそれとその格好って」
俺が新井を指差しながら言うと新井は頰をかく。
「そ、その、今日2回入るのもあれなのでもうパジャマに着替えちゃった的な感じです。ダメでしたか?」
「まぁ、似合ってるしいいんじゃないか? なんか新鮮な感じするし」
少し恥ずかしそうにしている新井に俺が思ったことをそのまま伝えると新井が急速に俺の元へと迫ってきた。うおっ。さっきから素早くないか?
「ほ、本当にですか? 似合ってますか?」
「だから嘘は言わないって。なんかゆるキャラっぽくて可愛いし」
「あぁ……そうですか」
「?」
俺の答えを聞きなにかを諦めたような顔で後ろへと下がった新井を不思議に思いながら俺はそろそろある事を実行に移すことにする。
新井は今現在まるで俺を警戒していない。これは世間一般で見ればいけないことだろう。
そのことを叩きこむ必要がある。
「なぁ、新井」
「なんですか、光太___ひゃっ!? な、なにを!?」
俺は新井の手首を掴むとそのままソファの方へと引きずって新井をソファに無理矢理押し倒す。新井は知らない。自分の可愛さも……している行動の危険性も。
男を親もいない家に連れ込むことがなにを意味するのか知らない。だから、
「俺はお前が抵抗しようと無理矢理する。つまりそういうことだ」
「っっ!? そ、そ、そ、それって」
俺の演技によってそのことを教える必要がある。新井が未来でこうならないようにする為に。
俺は新井の耳へと口を近づけてるそう囁き、さらに顔を寄せる。怖いはずだ。新井もこういう経験は初めてだろう。足も震えているし手もガタガタだ。
「それじゃあ早速______」
新井が足を震わせ目を瞑る。これでわかっただろうか? 新井がした行動の危険性が。流石にこの辺でいいだろう。ここから先をする必要はない。
あとはしばらく黙って新井が疑問を抱き始めた頃合い種明かしさえしてしまえば___。
「あらっ、お邪魔だったかしら。ねぇ、アナタ?」
「ぼ、僕の瑞香が……いやでも、瑞香もいつまでも子供じゃダメだしな。ここはお父さんとして見守るしか」
あぁぁぁぁぁぁぁ!!? えっ、はっ新井は今日遅いって言ってたよな。でもこの人達完全に新井の両親。
違うっ。いや、確かに今の部分だけ見てたらそういう風にしか見えないかもだけど、今から種明かしするところだったんですっ。誤解なんです。そんなに気まずそうな顔しないでください。
いや、お母さんの方は笑ってるけど。
「じゃあ、あとはお二人で」
「ぼ、僕の瑞香をお願いします」
「違うんですぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
その日、新井宅にて俺の絶叫が響き渡るのだった。
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次回「娘をどうかお願いします」「だから誤解ですって!」
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