第30話 先輩、約束を履行する時が来ましたよ
「じゃあ、
「雨なのに部活とは陸上部は大変だな」
「まぁ、走れないから軽い筋トレだけどね」
翼はそう言うと軽く笑って鼻をかく。本当に部活に熱心な奴だ。
「まっ、いつも通り怪我しないように頑張れよ」
「あー、いつも
「誰がお母さんだっ」
なんと心外な。
「俺は男なんだからお父さんに決まってるだろ」
「
「また明日な〜」
鞄を手に持ち全力で駆けていく翼の後ろ姿を眺めながら俺は大きな声をかける。来月には大会も控えているようだから頑張って欲しいな。
さ〜てと、今日は静姉も学校でやることがあるみたいだしこの時間になっても来ないってことは新井も帰ったのだろう、久しぶりにのんびり帰るとしますか。
俺はゆったりと立ち上がると机の脇に掛けてあった鞄を手に取り教室から出る。
そして階段を降り2年生の玄関へと向かう。最近周りが騒がしいことが続いた為やけに静かに感じるがこういうのもいいものだ。
「あっ、先輩偶然ですね」
と思ったらこれですよ。玄関で待ち構えってやがった。確かに教室なら俺は窓から飛び降りて逃走も可能だからな。確実に退路を絶ったということだろう。
いや、まぁ窓からの飛び降りは流石に目立ちすぎだからしないけど。とまぁ、変な所で感心したがこれだけは言っておかねばならないだろう。
「どうしたら2年生の玄関で1年の後輩と鉢合わせるなんて偶然が起きるんだ?」
「まぁ、いいじゃないですか。学校探検ですよ。学校探検」
うわっ、どうせ俺にバレてるからって理由適当だよ。誤魔化す気ゼロだ。
「それより私も丁度帰る所だったのですが先輩もそうみたいですね……良かったら一緒にどうです?」
「よろしくないので1人で帰ってくれ」
「先輩〜、前の約束忘れてませんよねぇ?」
「グッ」
ここでそれを持ち出して来たか。
「いや、でも今日はご覧の通り雨だし手を繋いで帰るってのも……」
新井が言っているのは俺が翼の看病に行く際に新井に約束した一度だけ手を繋いで帰るというもの。だが、新井にも言うように今日は雨。正直、新井に濡れて風邪をひかれたくない。
「大丈夫ですよ、先輩。確かに2人が傘を持ちながら歩いた場合濡れるかもしれませんし、ほかの通行人にとっても邪魔になります」
「分かってるんなら……ムグッ」
俺がそこまで言いかけた所で新井の小さな手によって口を塞がれてしまう。
「で、す、が……1つの傘を2人で分け合ういわゆる相合傘というものならどうですか?」
「お前……その為に雨の日選んだだろ」
そんなことをした暁には最早、学校において俺と新井はラブラブカップルという認識になるだろう。いや、もう手遅れという気もしなくないが。
「あのなぁ、流石にそれは……」
「今日傘持ってきてないんですよっ。先輩のに入れて貰えないと私濡れて帰っちゃうことになるんです」
「完全に今日天気予報を見て傘を抜いてきやがったか……」
コイツ……俺の退路を完全に断ちやがっ___んっ? いや待て。それマズくないか? 俺の傘はアレだし……。マズイ。
新井はしてやったり顔だが今の状況は全然よろしくないぞ、俺にとってもお前にとってもっ。
「分かった。しょうがないから入れて送っていってやる……」
「やった!」
しかし、このままここで考えた所でどうしようもないし雨も強まるばかりだ。なら、弱いとは言えないまでも普通くらいの降りをしている今さっさと帰るべきだろう。
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次回「まさかこんな展開になるなんて想像もつきませんでした……(泣)」
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