第25話 家に入るとをあら不思議!これ1つで簡単操作って便利グッズかっ!


「甘えんぼう……」


 余程想像がつかないのか翼先輩はうわ言のように繰り返す。これはちょっと捕捉した方がいいかも。


「突然ですけど、伊賀先輩のお姉さんっていつも馬鹿みたいに動いて強気な態度で仕事をこなすんですよ」

「ま、まぁ、確かに初対面でもそういう人なのはなんとなく伝わって来たけど」


 そう、静さんはいつも自信満々に振る舞い恐れをまるで出さない。しかし、それは正解でもあり不正解でもある。

 正確に言えば、家の外では自分を制御しそうこなすようにある種の洗脳のようなものを自分自身にかけている。


「でも、元々そこまで精神が強い人じゃないので外では気丈に振る舞っているぶん家の中だと弱い部分が前面に出るらしいんです」

「そんなことって……あるの?」


 翼先輩はかなり疑わしげに話を聞いていたが私の真剣な表情を見てそう尋ねてきた。


「それが本当だから困るんですよね。正直、性格が変わりすぎて別人かと見紛うほどなんです」


 私は基本的に静さんには迷惑をかけられぱっなしなので強気な態度で接するが、静ちゃんにはどうしても甘やかした態度で接してしまう。……本当に厄介な人だ。

 私は更に混乱してしまった翼先輩を見ながらこっそりと静さんに向けため息をつくのだった。



 *



「はっ?」

「あっ、光太郎やっと目を覚ました!」


 俺が目を覚ますと目の前には俺の顔を眺めていたであろう静姉の姿があった。……なんか、既視感デジャブだ。

 今日、一回こんなことがあったような。ついでに言えばつい先程あったような気がするけど。


 ただ今回は前回とはかなり違いがある。というのも……。


「このまま光太郎が目を覚まさなかったらどうしようかと思ったよぅ。あんまり、心配かけさせないで」

「ご、ごめん」


 家に入ったことにより静姉が静妹モードに移行しており、先程のようないたずらっ子のような顔はなく涙目で心配しているということだろうか。


 ……涙目の静姉を見て、いやアナタがやったんですけどね。とは思うがさすがに口に出すことはなかった。

 何故なら静妹モードの時にそんなことを言えば更に泣いてしまうことが分かっているからだ。


「だ、大丈夫そうなら久しぶりだしお喋り…

 一緒にしてくれないかな? こ、光太郎と話すのを楽しみにしてたし、ね?」

「分かったよ」


 少し不安そうに震えながらそんなことを言う静姉の頼みを断れるわけもなく俺は頷く。

 ったく、静姉モードなら全力で抵抗出来るが静妹モードでは強気に出れない。


 別の意味で面倒くさいな。……結局、人間は可愛いものには勝てないということだ。

 というかこの感じも1年ぶりだ。外で静姉モードを相手して疲れ、家に帰り静妹モードを相手にして更に疲れる。


 うん、こんなに望んでない久しぶりは中々ないな。本当に家に入るだけでここまで簡単に変わるんだから不思議なもんだけど、静姉だからと言われれば納得するしかない。


「黙ってないでなんか喋ってよぉ。……黙られると怖くて」

「あぁ、分かってるって」


 俺はその後この1年にあったたわいもないことを延々と静姉と喋っていた。静姉の相手をこれからすると思うと面倒くさくはあるが、こうして久しぶりに話せたのは意外と悪くなかったなと俺は思った。


 ……いや、正直に言えば静姉が無事に帰ってきただけでかなり嬉しかったが口に出すことはなかった。そこら辺はさすがにプライドがある。




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 次回「静姉と静姉」


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