第26話 静姉と静妹
「こ、光太郎、光太郎」
「う、うーん」
なんだ? なんかボンヤリとした声が俺を呼んでいるような、呼んでいないような。なんだこの微妙な感じ。妙に懐かしいような。
「光太郎ってば、起きてよぉ」
「って静姉さんっ!」
そうだ、昨日から静姉が家に戻ってきてるんだった。俺は昨日の一連の流れを思い出しベッドから飛び起きる。
それで朝から音がするのか。いや、正確に言えばドアのすぐ向こう側から聞こえるんどけどな。
「今、起きたよ静姉さん。でも、なんだってこんな朝早くに……」
現在の時刻は午前5時。流石に高校生が起きるには早すぎる時間なのだが、静妹モードの静姉がそこまで気をつかえないとはおもわないからなにかあったのだろうか?
「は、ハチが私の部屋に出たのっ」
「ハチ?」
かなり焦っているような静姉からそんな言葉が飛び出して来て思わず俺は聞き返す。……いや、正直な話静姉とか怖すぎてハチが怯えてると思うんだけど。それに刺されても全く効かないだろうし。
いや、それを静妹モードの時に言うのは酷な話か。
「……今いく」
「な、なるべく早くねっ? お姉ちゃんもう長くは保たないからっ。怖いから」
「分かってる」
正直、10分の一でいいから外でもこの性格を受け継いで欲しいぐらいだ。差がありすぎるんだよっ。久しぶりだとマジで調子が狂う。
俺は寝起きの体を動かしてドアの元へと向かう。
普段こんな時間に起きないから中々に辛いな。体が重い。そんなことを考えながら俺はドアに手をかけ開ける。すると、
「こ、光太郎だっ。怖かったよぅ。お姉ちゃん何度呼んだのに中々起きないからどうしようかと」
「分かったから。だからそのハチの元まで早く案内して」
ドアの前にいた静姉(恐らく寝起き)が涙目で俺の足にしがみついてきた。いや、静姉に足掴まれると動けないんだけど!?
「うん、分かっ____たぁぁぁぁぁ」
「ちょっ、急にどうし____ギャアァァァ」
一つ目の悲鳴は静姉のものであり、もう一つは悲鳴を上げた静姉に更に足が強く掴まれて痛みのあまり俺が出した悲鳴である。
いや、折れる。折れちゃう。というか最早粉砕しちまいそうな勢いなんだけど。
「は、ハチがすぐそこまでっ」
「は、離してお願いだからっ! なんでもするからぁぁぁぁぁぁ」
静姉が廊下の方を指差しそんなことを言うが激痛でなんにも入ってこない。痛い。ただひたすらに痛い。
なんだこれ。むしろ痛くないまであるくらいに痛いぞ(混乱)
「というかあれアシナガァァァァァだからっ、滅多に刺さないぃぃぃぃぃぃぃから、あぁぁぁぁ痛いぃぃぃぃぃ」
静姉の指差す方を見てアシナガバチを見つけた俺はなんとか静姉を宥めようと激痛に耐えながら奮闘するが、それも虚しく足が限界を迎えつつあった。
「と、とりあえずじゃあ姉さんは外にでも逃げてっ、窓から外へ行くことくらいできるゔぅぅぅぅぅだろ。その間にぃいぃぃぃ俺が片付けておくからっっ、だからマジで離れてお願いっ」
「う、うん、分かった」
俺の涙ながらの言葉(激痛のせい)を聞くと静姉は少し落ち着きを取り戻し俺から離れると窓へと駆けて行く。
な、なんとか助かった。あのままだったら今日の学校は松葉杖ついていくことになっていただろう。まさしく危機一髪。
そして静姉が窓から外へ出たのを確認した俺は目の前のアシナガバチへと向きなおる。
正直、足を早く冷やしたいからアシナガバチには悪いが素早く済ますとしよう。
普段なら外へと追い出すところだが……まぁ、静姉がいる時に家に侵入したアシナガバチがついていなかったということで。
ごめんなっ。
「っ痛」
俺は心の中で謝りながら拳を突き出すがその瞬間に猛烈な足の痛みに襲われ拳は減速。当然、アシナガバチにアッサリと拳はかわされてしまった。
くっそ、思ったより味方(静姉)からのダメージが深刻だ。
「グッ」
その後もしばらく倒そうと蹴りや拳を繰り出し続けるがどれも痛みによりまともに出すことが出来ず、どれもが簡単にかわされてしまい気づけばジリジリと後退して俺は俺の部屋へと戻ってきてしまっていた。……ヤバイ、痛すぎる、なんかもう泣きそうだ。
「ブゥゥゥゥン」
度重なる俺からの攻撃で流石に怒っていたアシナガバチが俺の元へと迫る。くっそ、近づいて来てくれるんだからチャンスなんだがまだ痛くてなにも動かせない。
どうする? どうすれば仕留められ___。
「えい♪」
「はっ?」
アシナガバチに対し必死に考えを巡らせていた俺の前で迫っていたアシナガバチが突如としてどこからか攻撃をくらい地面へと落ちた。
というか、これ小ちゃい針が突き刺さってるな。なんかグロ映像な気がしなくもないけどこれって……。
「光太郎が苦戦してそうだから私が仕留めちゃいました〜。もっとトレニーングが必要だよ。トレーニングが」
「……そうかもな」
そうだよねっ。静姉(静姉モード)だよね。さっきまで家の中にいた時は涙目で怯えてたのに家の外に出た途端に嬉々として針で殺すって頭おかしいだろ。
「なんか疲れてるけど今日はまだこれからよ」
「分かってる」
はぁ、本当に静姉の相手は疲れるな。朝から余計な体力を消耗しすぎた。
そして後、これが一番なんだけど足が痛いです。(涙目)
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
次回「アナタが翼ちゃんなのね。そっか♪」
よかったら星や応援お願いします。
では!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます