第24話 ゲームオーバー


「そうなんですね」

「僕もこうくんのお姉さんを実際に見たのは初めてだったけど……めちゃくちゃ美人さんだったけど迫力があったなぁ」


 翼先輩は私が光太郎にぃに想いを寄せていることを知っている為か私に少しでも情報を渡そうとしてくれる。……翼先輩も光太郎にぃのこと好きなのになんか申し訳ないな。


「すいません、先輩。実は私は会ったことがあります」

「そうなの!?」


 隠しておくのはズルい気がした私がそう切り出すと翼先輩は明らかに動揺した様子でこちらへと身を乗り出してきた。


「でも迫力というものはあまり感じませんでしたね」

「えっ? いやいや、僕としては化け物みたいな異質な雰囲気が漂ってたし正直思い出すだけでも寒気がしてくるレベルなんだけど」


 なにを見たというのかそんなことを言って肩を震わせる翼先輩。……どうやら、余程怖い現場を目撃してしまったらしい。


「ま、まぁ、大勢前では照れ隠しからかかなり暴力的ですけど……」

「照れ隠しで弟を一瞬で気絶させるのか……」

「確かに普通の照れ隠しとは比べ物になりませんが……私とか伊賀先輩の前とかだと」

「だと?」


 ここから先言うべきかは正直迷いどころだ。静さんの家での様子を本人の許可を得ずに話すのは流石に忍びな___いや、静さんから私、大分迷惑受けたしなぁ。


「どうなの!? 教えてよ。ねぇ、ねぇってば」

「わわわ、揺らさないでくださいよ」

「ご、ごめん。だけどさ、そこまで言われたら気になるって!」


 翼先輩が申し訳なさそうな、でも聞きたいと言うような2つの思いが入り混じった表情をする。そして私は静さんが今まで私にしてきたことを振り返る。

 すると答えは1秒と待たずに出た。


 教えよう。そうしよう。うん。正直、申し訳ないとか考えなくていいや。静さん迷惑かけすぎだからこれくらい掛けても怒られる要素ないや。


「そ、その……甘えんぼうなんですよ」

「甘えんぼう?」


 翼先輩は思いもよらなかったのか一瞬あっけにとられたような顔になるがそれも仕方ないのかもしれない。実際、静さん外と家でのギャップは凄すぎるからだ。



 *


「はっ」

「あー、もう目を覚ましちゃったかぁ。もう少し見てたかったんだけどなぁ。光太郎も当たり前だけど強くなってるね」


 俺が目を覚ますと目の前には恐らく俺の寝顔を眺めていたであろう静姉の姿があった。周りを見渡してみると遊具などがあり俺はどうやらベンチの上にいるようだ。

 というかここは家の近くの公園だ。


「懐かしい? 昔はここでよく遊んだよね」

「待って! なんかいい感じの懐かしいねムード出してるけど、一年ぶりの再会の弟に手刀を叩き込んで気絶させておいてなんでそんな笑顔が出来るんだよっ。普通に恐怖だわ」

「あの頃は光太郎も可愛げがあったのに……今では生意気な口ばっかり、どうしてこうなっちゃったのかなぁ」

「静姉さん、まずは俺との会話のキャッチボールをしてくれないか。話はそれからだと思うんだ」


 完全に昔を懐かしみムードを漂わせ、周りを見渡して俺の発言をスルーする静姉にそう言うが目を逸らしたまま合わそうともしない。

 どうやら少し悪いことをしてしまった自覚はあるらしい。


 いや、その自覚があるなら一年ぶりの弟に暴力装置は取らないで欲しいんだが。


「さぁて、積もる話もたくさんあるし家に帰ってたくさんお喋りしよっか」

「いっとくけど、今はお喋り出来てないからね? 静姉が一方的に話も聞かず喋ってるだけで俺とのお喋りは成立してないからね!?」

「早く立って! いくよ〜」

「……分かった」


 もう無駄だと言うことが分かった俺は「こっち、こっち」と手招きしている静姉に大人しくついていくことを決める。静姉はこういう時は大抵、話曲げないからな。時間を無駄にするだけである。


「それにしても静姉さん、あと1年は海外での任務があるんじゃないのか?」

「そうだよね。光太郎にはそう伝えられてたよね。不思議だよね? なんでだと思う?」


 俺は静姉の横を歩きながらふと気になったことを尋ねてみた。どうせ家じゃまともに聞けないだろうし。


「サプライズでもしたくて俺に偽の情報を渡してたのか?」

「あー、15点」


 俺としては1番あり得そうなことを言ったつもりだったが返ってきたのは厳しめな点数。テストなら赤点といったところだろう。


「正解は本当にあと1年かかる予定だったけど光太郎をからか____光太郎に会いたくて全て一瞬で片付けて来たでした」

「相変わらず頭おかしい」


 あと今、俺をからかいたくてって言いかけたろ。ったく、なんて性格の悪い。


「お姉ちゃん頑張ったんだよ? どう? やっぱり嬉しいでしょ、お姉ちゃんに早く会えて」

「ウンソウダネ」


 静姉に俺は適当に合わせる。ここで歯向かおうものならさっきと同じく気絶させられてしまうだろう。本心じゃなくてもこう言うのが1番いい選択なのだ。


「で、本心は?」

「父さんちゃんとあと1年は絶対にかかる任務与えとけよっ。なんで、静姉をこの大変な時に相手しなくちゃなんないんだよ。あぁ、面倒くさい。バイオレンスな姉は怖いんだよっ。少しは平穏な___はっ」


 ヤバイ、あまりに適当に話しすぎて気づかぬ間に本心が完全に漏れてしまっていた。い、いや、でも流石に静姉と言えど1日に2回も弟に暴力を振るうなんて……。


「ねぇ、光太郎。人が生身でどの高さまで飛べるのか知りたくない」


 あっ、これダメな奴だ。気絶どころか下手したら俺殺されちゃうレベルだわ。これ。静姉がゆっくりと拳を目の前で構える。

 ……今まで色々あったけど振り返ってみれば意外といい人生だった。


「って、なるかっ。絶対に嫌だ」


 と俺は拳が直撃するすんでのところで駆け出すと全速力で家へと向かう。家の中にさえ入ってさえしまえば姉さんが暴力を振るうことはない。つまり家の中に入った時点で俺の勝ちだ。


 足を回せ。脳をフル回転させろ。いくら静姉が相手とはいえ家まではあと30メートル、流石に逃げ切ることだって出来____。


「ふふっ、つぅかまえた☆」

「えっ?」


 えっ?


「さぁてと、さっきの話の続きをしましょうか」

「嫌だなぁ、姉さんなんでそんなに高々と拳を掲げているんだ。というか手を離して! お願いっ。お願いだから」

「ダメ♡」

「あっ、あぁぁぁぁぁっっっっ___________」













『You Are Die』

 →コンテニュー?





 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→


 次回「家に入るとあら不思議! これ1つで簡単操作って、便利グッズかなにかかっ!」


 やばい、遊びすぎました。じ、次回頑張ります。よ、良かったら星や応援お願いします。


 では!(いつもより素早く)










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