第16話 光太郎にぃの帰り道
「おーい、
授業が終わり元気いっぱいに俺の元へとやって来た翼が俺を見るなり不思議そうに首をかしげる。
確かに俺は鞄に教科書などを急いでつめて教室から出て行こうとしている最中である。ちゃんと理由はあるんだが
「早くしないと面倒くさいことになるからな。ちょっと今日は早く帰る____」
そして、今日も色々あった為体力を使い果たしてしまったので翼に遠回しに今日は無理だと俺は伝える。
「クーレンゲームに今だけ限定でペン太さんヌイグルミ特別バージョンがあるみたいだよ?」
「翼、準備はできてるか? 早くいくぞ」
今日は無理?だれがそんなこと言ったんだ?
行くに決まってるだろ。逆に行かない方が不思議だわ。
「……
翼が何故か遠い目をしていたが俺はそんな翼の手を掴んで足早にゲーセンへと向かうのだった。
*
「なんかこうして一緒に帰るのは久しぶりな気がするなぁ」
「そう言われるとそうだな……まぁ、精々4日ぶりくらいだけど。今まで基本毎日一緒に帰ってたからな」
ゲーセンへと向かう途中も翼は絶え間なく喋り続ける。……こいつの話が途切れる時はほとんどないのだ。常時喋っている。
「あっ、そういや昨日のお笑い番組見た? ゲストの人が最高で」
「ふーん」
「ふーんじゃなくてちゃんと聞いてる?」
俺がそう答えると翼は少し怒ったようにそう尋ねてくる。
「いや、ペン太さんでいっぱいで聞いてない」
俺はそこで素直に答えることにする。
「ペン太さんもいいけどちゃんと僕の話も聞いてよね。全くこれだから最近の若いモンは」
「いや、お前もその若いモンだろ」
翼はやれやれと言わんばかりに肩をすくめると口を尖らせそんなことを言う。
「まぁ、僕レベルになると1日が8時間で終わるからね。だから今は実質48歳なわけだけど」
「人類の枠を軽々と超えるのやめてもらっていいか?」
「更に僕レベルになると1年が365日に感じるし」
「それは普通なんだな」
いつも通りの翼の冗談をいなしながら歩き続けること10分程度。いよいよお目当てのゲーセンが見えてきた。
「というかさ、なんでそもそも今日あんなに急いで準備してたの?」
「さっきも言ったけど面倒くさいことになんだよ。翼は金曜日休んだから知らないかもだけ_」
とそこで俺はあるものを見つけ固まってしまう。
「えっ? どうしたの? 急に固まって……」
俺が突然足を止めると翼が驚いたような表情でこちらを見てくる。先程から汗が止まらない俺は
「翼、今日は帰らないか?」
「なんで!?」
翼の手をひき、きた道を引き返そうとするが翼に拒まれ結局ゲーセンへと行くことになってしまう。いや、別に俺だってなにも気分でイヤと言ってるわけじゃないんだ。
ただそこに……。
「なんで急にそんなに嫌がるのさ。ってあれ? あの子……確か新井ちゃん?」
ゲーセンの前に何故か新井がいるんだよぉぉぉぉぉぉぉ。
「あっ、先輩方偶然ですね」
そして新井も俺たちの方に気がついたようてこちらへと近寄ってくる。いや、これ絶対偶然じゃない。だってそんなわけないだろ。
「なんか今日は伊賀先輩を迎えに行ったらいなかったので落ち込んでたら先輩のクラスメイトの皆さんがここのゲーセンに行くと良いことかあるよって教えてくれまして……なので走ってここまで来たんです」
「へぇ〜、それでかぁ。面白いこともあるもんだね」
翼は気づいていないのか興味ぶかそうにウンウンと頷いている。
いや、クラスメイトの奴ら売りやがったなっ!? ……明日会ったら覚えとけよ。
俺は心の中で毒を吐くと目の前で嬉しそうに笑っている新井に向き直る。
「そうか、でなにかしたいのがあったのか? せっかくゲーセンに来たんだし」
どうせ別行動とはいかないのは分かっているので俺は諦めて次の行動へと移る。
「じ、実は私ゲーセン?というものは初めてでしてまだよく分かってないんですけど」
「初めてなんだ。じゃあこのゲーセンマスターである僕になんでも聞くとよいぞい」
新井がそうおずおずと言うと翼が(ない)髭をさすりながら自信満々なようで胸をはる。
あと、口調どうした。
「じゃ、じゃああのシャチさんのぬいぐるみが私気になってるんですけど」
すると新井がガラス越しに海の動物であるシャチの小さなぬいぐるみが設置されている台を指差す。
「ふーん、あの程度の獲物か。じゃあいくぞ。僕についてこい新井ちゃん!」
「はいっ、師匠!」
「あんまり走るなよー」
ゲーセンの中へと駆け出していってしまった
「し、師匠。現物は思ったより可愛いです」
「ふっ、焦るな弟子よ。しっかりどうすれば取れるか考えてからお金を入れるようにするのじゃ」
俺が2人に追いつくとそこにはシャチのぬいぐるみが設置されているクーレンゲームの前で、お金を構えシャチぬいぐるみを凝視する新井を翼が止めていた。
「イメージ出来たかのう?」
「バッチリです!」
翼の問いに元気よく答える新井。
「よし、ではいけ我が弟子よっ。取ってしまえ」
「イエッサー」
そして新井はためらうことなく100円玉を1つ投入。
「あっちなみに左手のボタンで右に動いて、右手のボタンで奥に進むから気をつけるんじゃぞ」
「流石にやったことのない私でも見てれば分かるので大丈夫です」
そして新井は迷いなくボタンを押してクーレンを動かしていく。
そしてクーレンはシャチのぬいぐるみにかすることなくアームに一回空をすくわせると戻ってきた。
「な、なんでですかぁ」
「恐ろしいほどのズレ。ラインに来てから押してるから全く間に合わずになにもないところにいってしまった感じじゃな」
その新井の腕前に翼も冷や汗を流しながら変な口調のまま解説を入れる。……新井も涙目だが初心者だしこんなものだろう。
「まぁ、ここは師匠の凄さというものを見せてやろう。クーレンゲームを確率機とのたまうのでは三流。一流の格の違いを思い知らせてやるかのぅ」
「し、師匠」
続いては翼が新井に手本を見せるようで100円玉を入れ迷いなくボタンを押していき確実にシャチのぬいぐるみへと焦点を合わせていく。そしてクーレンのアームがシャチのぬいぐるみを捉える。
「もらったっっ!」
そしてクーレンのアームは上に上がるとシャチのぬいぐるみを途中で落っことし戻ってきた。
「あ、あの師匠?」
なにも落ちてきていない景品取り出し口に手をつっこみこちらに顔を向けようとしない翼に新井は声をかける。
そしてようやくこちらに顔を向けた翼は、
「ま、まぁクーレンゲームって所詮確率機だから」
「さっきと言ってることが違いますよ!? 師匠!?」
そんな言い訳をし始めていた。
「そ、そんな目で見るなら
「なんで俺が」
「伊賀先輩……」
しかし、2人から見つめられてしまい、
「分かったよ」
俺はそう答えると100円玉を取り出し投入した。
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次回「遊びつくすのじゃ」
面白かったら星や応援お願いします。星を……くだせぇ。カクコン終了までに10万字は頑張るつもりです。
では!
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