第17話 遊びつくすのじゃ
俺は新井が見つめているシャチのぬいぐるみの位置を確認するとボタンに手をかけ、タイミングを見計らってゆっくりと押す。ちょっと緊張すんな。
「おおっと、
そして後、翼がうるさい!
「黙れ三流」
「くっ、なにも言い返せない」
俺が後ろを振り向かずそう言うと悔しそうな声が返ってくる。そして俺はもう一度今度は右のボタンを押す。
「獲ったな」
そしてクレーンはアームでアザラシのぬいぐるみを持ち上げるとそのまま上昇し、景品を持ってくると穴の中へと落とした。鮮やかな色がクーレンゲームの周りを走り賑やかな獲ったことを知らせる音楽が流れる。
「えっ、
後ろから翼の声が聞こえるが俺はそれを無視して景品を取り出すと新井に手渡した。
「欲しがってたアザラシだぞ」
「なんか勝手に記憶が改ざんされてるんですが……」
俺はにこやかにそう言うと少し強引に新井にアザラシさんぬいぐるみを渡した。うん、アザラシを欲しがってたよね。
「いや、完全に
「さぁ、次のいこう。ペン太さんが俺を待っている」
うん、というわけで俺は後ろでブツブツと訳のわからないことを言う翼の口を塞ぐとペン太さんを求めて次のクーレンゲーム機の元へと向かうのだった。
証拠隠滅? そんなことシテナイヨ。ハハ。
*
「でも、ゲーセンなんて初めてでしたけど楽しいものですね」
「「そう(か)?」」
ペン太さんも無事確保し、3人で俺、新井と翼の構図でエアホッケーをしていると新井がふとそんなことを漏らす。
「先輩達が面白いので、楽しい思い出がたくさん出来ちゃうんですよ」
「「そっか」」
俺と翼はその言葉にお互いに見つめ合うと笑い合う。ただ単純に新井の言葉が嬉しかったから。
「あっ、僕お花摘み」
「私もいってきます」
「ここで待ってるな」
エアホッケーも終わりお花摘み(トイレ)へと向かっていた翼達の方を見ながら俺は1人帰りを待つのだった。
*
「今日は本当にすいません伊賀先輩と翼先輩の時間を邪魔しちゃって」
「いいよ気にしなくて、僕も楽しいしさ」
私がトイレにて翼先輩に頭を下げると翼先輩は爽やかに笑みをこぼすと気にするなと言ってくれる。……今日見てたけど本当にいい人だな。裏表がなくて一緒にいるとこちらまで元気になっちゃいそうな、そんな感じ。
「でも、先輩……伊賀先輩のこと好きですよね?」
「ふぁっ!? な、なに言ってるの?」
私の言葉に明らかに反応を示し動揺する翼先輩。……この人、嘘をつくこと出来なそうだな。
「私は伊賀先輩が好きなので翼先輩には伝えておこうと思いまして……」
「えぇっ!? そうなの?」
私がそう言うと翼先輩は焦ったような声を出す。本当に分かりやすい人だ。
「はい、それだけ伝えたくてここまでついて来たので」
「ふ、ふーん」
翼先輩はすぐさま冷静さを取り戻そうとするが足が震えておりパニック状態であることがうかがえる。……本当なら言うつもりはなかった。こんな行為は相手に塩を送るだけである。
でも、翼先輩がいい人だったから、翼先輩が優しくしてくれたから……私は真正面から戦いたいと思ったんだ。例えこれのせいで悪い方向へと向かったとしても、これをせず後悔するくらいならこの方がいいと思ったから。
「翼先輩と伊賀先輩が仲が良いのも分かりました。……でも、私は負けませんから」
「い、い、いや僕違うからね?」
顔を真っ赤にしてそんなことを言う翼先輩を無視し私は帰りを待つ光太郎にぃの元へと向かうのだった。
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次回「学校のアイドル降臨」
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