第14話 先輩、アーンです


 油断。そう、今になって考えてみればそれは間違いのない圧倒的な油断。ここまで油断をしてしまったのは病み上がりでまだ完璧には頭が回っていなかったというのもあるのかもしれないが……。


 具体的に言うならば前はお昼休み来ることはなかったので、帰りは新井が来るまでに速攻で帰ればいいと呑気に考えていたら普通にお昼休みに来たというだけの話ではあるが。


「伊賀先輩、伊賀先輩が好きな唐揚げも作ってきたので是非食べてください」

「……こうくん。ここ2年生の教室なのになんで1年生がいるの?」


 まぁ、それだけの話とはいえかなり致命傷なんだけどな。油断なんかしないで屋上とかにでも行っていれば良かったなと、俺はニコニコと笑顔の新井と珍しく少し不機嫌な様子の翼と囲んで弁当を食べるのであった。


「あっ、翼先輩も食べますか?」

「なんで僕が……あっ、でもいい匂い。いや、でも食べないよ? とりあえず味付けが最高だね」

「なんでナチュラルに食ってるの? 俺は食わないからな」


 先程まで不機嫌で食べない宣言をしていた翼は新井が持ってきた唐揚げの匂いにやられあっさりと餌付けされていた。くっそ、これで俺の味方陣営はいなくなってしまった。


「ほら、先輩も遠慮してないで食べてください」

「パリッという食感もいいのだけどやっぱり適度なスパイスがよく効いた味付けがやっぱり最高」

「それは分かったけど君達もう少し声量下げてくれないか? さっきから教室中の視線が痛いんだ」


 ただでさえ、新井は視線を集めるというのに俺に食わせるだなんだを大きな声で言うせいで視線がエゲツないことになってしまっている。中には早く食ってやれ的な視線も多く感じるのだが……今ここでそんなことをしてしまえば本格的に致命傷な気がする。


「ほら、先輩食べてくださいよ」

「絶対に嫌だ」

「一口だけでいいので」

「その一口が致命的なんだよ」


 そう、もしもここで俺が一口でも食べてしまえばいよいよ終わり。噂は広まり誇張され打ち止めが効かなくなるだろう。例えば「伊賀は新井ちゃんに愛妻弁当を作って貰っている」とかいった具合に。


 恐らく俺の為に沢山唐揚げを作ってきたであろう新井には悪いがさすがに食べてやることは出来ない。俺が少し罪悪感を抱きつつも断りを入れていると少し新井がプルプルと震え始めた。


「……な、なんでそこまで拒否するんですか」

「いや、本当に悪いけど無理だ」


 俺としては周りの視線とかという意味で言ったつもりではあったが新井としてはそう意味とは考えられなかったらしく、その可愛らしいほっぺを膨らませてみるみる顔を赤くしていく。


 するといよいよやっけになったのか、新井は唐揚げを箸にとると俺へと差し出してきた。


「ほ、ほら先輩アーンですよ」




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 次回「屋上デートでもいきましょうか」


 文字数少なくてすいません。(>_<) 39度から下がらずこれが限界でした。本当なら昨日の22時ごろには投稿したかったですが間に合いませんでしたしたし。今日は今日でもう一個キチンと投稿するので許してください。


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