第13話 先輩、新井さんとキスしたみたいな顔してどうしたんすか?


「ふぅ、朝早くに出て正解だったな」


 俺はそんなことを呟きながら学校への道を歩いていく。時刻は現在7時5分。いささか学校に行くには早い時間という気がしなくもないがこれはすべて新井との接触を避ける為である。

 基本的に新井の朝は遅い。本人も自覚しているところではあるが起きるのは遅くなってしまうらしい。つまり朝早くに登校すれば新井が待ち伏せをしようとしていてもそれより早く学校につけるので新井との接触を避けることが出来るのだ。


 何故そこまでして新井を避けるのかと言えば……一昨日のキスの件とかは一切関係なくただ目立つのが嫌なだけである。……本当だよ?

 嫌だってアイツは目立ちすぎるし大分噂も本当みたいになっちゃってるから、ここら辺でしばらく空白の時間を作らないとまずいわけで。


「あっ、伊賀先輩〜おはざまーす」

「誰がキスのこと気にしてる顔だっ」

「い、いや誰もそんなこと言ってないっす」


 俺が伊賀先輩というワードに反応し焦ってそんなことを口走ると後ろからは少し戸惑ったような声が聞こえてくる。この声……。


「あの時の新井に振られた男子生徒Aか」

「間違ってないっすけど、言い方酷いっす伊賀先輩」


 それはいつかの……というかつい最近俺に新井のことを相談してきて新井が俺を結婚相手と呼んでいることを教えてくれた後輩のイケメン男子くんだった。


「じゃあ、俺のMP精神をガリガリ削ってくるタイプの男子生徒か」

「そんなドラク◯に出てくる厄介モンスターみたいな言い方しないでくださいっす」

「経験値をくれそうでくれない男子生徒か」

「いえ、そんなメタルスライ◯的な攻撃かわしまくって逃げるウザいキャラでもないです。つーか、先輩ワザとやってますよね?」


 後輩イケメン男子くんにジト目でそう言われてしまい俺は知らないといわんばかりに目を逸らす。……だって、この子と話してるとまた俺と新井のカップリングがどうとか言われ始めて俺の精神が尽きる可能性があるからな。

 だつたら主導権をこちらが完璧に握ってしまえばいいだろうと考えたわけなんだが。


「んで何の用なんだ?」

「さすが伊賀先輩、話が早いっすね」


 普通に話しているぶんには分かりづらいがこの後輩イケメン男子くんはかなり気が遣える人物であり、今の俺が出している疲れてるオーラを無視して話しかけてくるような人物ではないことは前一回喋った際に把握している。


 そして、そんなこの子が今の俺に話しかけてきたということはそれだけ急を要する事態が起こっているということであり、それを俺に相談したいということだろう。

 それに言ってしまえばこの偶然も偶然を装った出会いだろうな。確実に俺が来るのを待っていたんだろう。


「先輩、これを……」

「? ファイルか」


 後輩イケメン男子くんが差し出したものを俺は受け取ると目を細める。恐らくこのファイルの中に大事な要件でも書かれているのだろう。後輩イケメン男子くんは気を遣える子ではあるが一般生徒のはず。

 そんな彼がここまでするとは一体どんなものが入って……。


「先輩、ファイルの中じゃなくてファイル本体をよく見てみてください」

「ファイル本体?」


 後輩イケメン男子くんに言われた俺が改めてファイルを見てみる。そしてよく見れば、


 俺と新井がハートの中に映し出されておりお互いに手を握り合っている絵が描かれているファイルだった。


「伊賀新井カプファイル……いうなれば推しグッズです。是非、これの商品化の許可を____」

「ふんっ」

「あっぁぁぁ、なんで折るんですかっあ!?」


 俺は聞いた瞬間に迷いなくファイルを折り曲げる。後輩イケメン男子君からは悲鳴が聞こえるが気にしない。


「というか、こんなこと俺と新井したことなんてないのにどうやったら出来るんだ?」


 俺は泣き崩れている後輩イケメン男子くんに俺と新井が手を握り合っている写真を指差しながら尋ねる。


「それはですねウチの優秀な盗撮班____じゃなくて情報収集班が集めてきたものを、精密班がそれを編集して出来ました」

「なんて無駄にレベルが高い変態たちなんだ」


 俺が頭を抱えてそう唸っていると後輩イケメン男子くんが俺に近寄ってきて、


「まぁ、先輩が認めないって言うのなら俺たちはそれに従うんすけど……実はもう一つ用がありまして、そっちの方が本命というか」


 耳元でそう言うと周囲を見渡して誰もいないのか確認している。よほど大事なことなのか?


「実はすっね、新井さんが____」



 *



「午前も終わりお疲れな僕!」

「その割には元気に見えるがな」


 午前の授業が終わり昼放課へと突入すると翼が駆け寄ってきて元気いっぱいにそんなことを言う。というか今日の翼はいつも通りであの時のような変な雰囲気はない。

 やはりあの時は熱で頭が回っていなかったのだろうか?


「さー、弁当を早く食べようか」

「そうだな」


 俺がそう返事をし弁当を取り出そうとした時であった。


「い、伊賀先輩私もいっしょに食べていいですか?」


 教室いっぱいに響くようなそんな新井の声が聞こえてきたのは。



 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→


 次回「先輩、アーンです」


 昨日は更新出来ずすいません。実は自分コロナでして昨日は40度くらい熱があって今日も39度くらいでした。その為中々につらく書くことが出来ませんでした。本当に申し訳ないです。まだ熱は下がっていないので明日も投稿出来るかは分かりませんがなんとか頑張ろうと思います。


 あともし良かったら星や応援お願いします。


 では!

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