第11話 生か死か
10秒ク〜イズ!!!
Q:後輩の看病に来た幼馴染美少女にキスをせがまれています。どうするべきでしょう?
チク タク チク タク チク タク チーン
A:いや、分かるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
「光太郎にぃ、まだですか?」
いや、本当にこれどうしたらいいんだ? このクイズに正解なくねっ!? こんな短時間で答え出すの難易度鬼超えて魔王くらいだよね。
しかし、新井は目を閉じたまま開かない。
そもそも俺は新井をどう思っているのだろうか? 新井は俺にストレートに好意を伝えてくれる。だが俺は一度それを断っている。その時は気持ちがなかったからだ。
今だって明確に好きだという感情はない。
でも、俺の今の状況を客観的に考えてみよう。新井は文句なしに可愛い。そんな子が好意を伝えてくれてキスをしたいと言っているのだ。彼女持ちでもない限り男なら基本的に断らないだろう。
俺だって男だ。嬉しくないわけがない。
それに新井は俺の為に土曜日の貴重な休みを削ってまで看病しに来てくれて、部屋の掃除までしてくれた。そしてそんな新井はご褒美としてキスをせがんでいるのだ。どこに断る理由があるというのだ?
……それでも、俺は好きなのかは分からないが新井を大事に思っている。昔も今も努力家で真っ直ぐすぎるくらい目標に一途な新井を。
だからこそ、
「ごめんな、新井……今の俺には出来ないよ」
新井の真剣な思いに対して中途半端な思いで……答えるわけにはいかないんだ。
「……相変わらず光太郎にぃは固いですね。そんなんじゃ女の子には好かれませんよ?」
「そうかもな」
新井はなにかを諦めたように目を開けると少し不満そうに頰を膨らませる。
「まぁ、そんな光太郎にぃだから私は大好きなんですけどね」
「っ、熱が移るかもだからそろそろ離れくれ」
しかし、表情を一転させると俺に満面の笑みをこぼす。俺はそんな新井を見て咄嗟に目を逸らすと気を紛らわすべくそんなことを言う。
「……光太郎にぃがそう言うのならそうします」
すると新井はションボリした顔で俺から距離をとる。結局、新井にご褒美もやれてないしなぁ……なんか凄い悪いことしてる気分だ。
「光太郎にぃ……辛そうな顔をしてますよ? やっぱり熱が治りませんね。今日は私泊まっていきますよ」
「それは止めろ。頼むから」
「冗談ですよー」
俺が即座にそう返すと新井は少し楽しそうにフフと笑う。……もしかしたら、少し落ち込んでいる俺の気を遣ってくれたのかもな。
「これからは私がここに住むので」
「マジで止めろ」
あれ、さっきの冗談なんだよね? 俺を和ませようとしたジョークなんだよね。なんでそんなマジトーンで言ってんの?
俺が額に汗をかきながら笑っている新井を見ていると新井が再び俺へと近づいてくる。
そして、
「光太郎にぃはもう寝てくださいね。私に気を遣ってくれなくて結構ですから、休んでください」
俺をベッドへとゆっくりと倒すと毛布を優しくかけてくる。……読まれてたってわけか。
「あぁ、本当に今日は悪かったな。迷惑かけた上にお前の希望も聞いてやれなくて」
俺は寝る前にこれだけは言っておこうと寝転がったまま口を開く。
「熱が治ったら代わりのものを考えるからそれまで待ってて____」
チュッ
俺がそこまで言いかけた所で俺の額に柔らかい感触とともに耳には可愛らしげのある音が響いた。
「えっ?」
「必要ないですよ、光太郎にぃ。ご褒美なら今もう既に貰いましたから」
そして俺の目の前には顔を朱色に染め薄く笑っている新井の顔が間近にある。……今、なにが起こったんだ?
「じゃあ、私はこれで。光太郎にぃはくれぐれも安静にしててくださいね」
「あ、あぁ」
バタンッ。
持ってきていたバックを背負うと立ち上がって去っていく新井に俺は生返事で返す。そして新井はスキップでもするかのように軽い足並みで俺の部屋から出て行ってしまった。
「はっ?」
未だに状況が理解出来ていない俺は熱で回らない脳みそをフル回転させる。
額には未だに柔らかな感触が残っており指でさすっても消えることはない。そして離れない新井の表情。
「はっ? はぁ……はぁぁあ!?」
何度も蘇ってくるあの音と感触。……それが徐々に俺の脳内を支配し始めると同時に俺の心拍はドンドン上がっていくのを感じる。
「っっっ〜〜っっ!!?」
そしていよいよ決定的な瞬間を思い出してしまった俺の体は熱さを増していく。
それが熱のせいなのかは俺にも分からないところであるが。
その日は額の感触が染み付いて離れなかった夜であった。
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次回「忘れられない感触」新井ちゃん視点です。
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