第8話 人肌は心を温める
「おいっ、つば____」
俺は翼が熱にやられたのではないかと心配し、翼のセリフの真意を読み取るべく聞き返そうとするが俺がそれをする前に更に強く翼に抱きしめられてしまう。
「ねぇ、逃げないで答えてよ……僕は、僕はっっっ」
*
「新井ちゃん、だったよね? まぁ、新井ちゃんが伊賀くんを好きなのは見てれば分かるんだけどさ……そのー、どの辺が好きなの?」
「伊賀先輩の好きな所……ですか?」
光太郎にぃのクラスメイトの人達に囲まれ、光太郎にぃの情報を集めていた私に1人の女の先輩がそんなことを聞いてきた。
「甘酸っぱいの聞きたいんだよ! やっぱ、ほら若い子の恋話は楽しいし」
「先輩と1つしか変わらないんですが……」
「私に甘酸っぱい恋話なんてないのよ。……はぁ、滅びろ青春」
「!?」
その女の先輩のあまりの変わりように私がギョッとしているとまた違う女の先輩が慌ててフォローをしてくれる。
「ご、ごめんね。この子、
「そ、そうなんですね」
「青春なんて必要かしら? そもそも人々は青春、青春言うけどどこまでを青春としどこからを青春としないのかしらねぇ。……所詮、私にはありませんよ、ええ。青春に向かってありったけの……バニ◯ュデス」
私は苦笑いしながら今なお怨念を呟き続ける
「そ、それで伊賀先輩の好きな所でしたよね?」
そして私はそんな
*
光太郎にぃと私が出会った日……それは私が光太郎にぃに恋をした瞬間でもあった。
当時、8歳だった私は今とは違い髪で目を隠し暗く沈んだような雰囲気の女の子だった。
そんな私であったからクラスの男子にはホラーに出てくる化け物みたいだとよく殴られ蹴られていた。恐らくあの頃の男子達にとって自分達がヒーローになる為に敵である化け物が欲しかったんだと今なら分かる。
そしてその化け物役にちょうど良かったのが私というだけなのだ。そして光太郎にぃと出会ったのは冬の公園であった。
帰りの際、男子達に追いかけ回され公園へと必死で逃げ込んだ私が走っていると光太郎にぃにぶつかってしまったのだ。
そして男子達も追いつき私を人を怪我させた化け物だと囃し立てると私に手を上げようとした。
私はいつものように目を閉じその攻撃を静かに受け入れる。そして悟る。逃げ回った所で無駄なのだと。だった最初から逃げ回らず大人しく攻撃を受けていればいいのではないかと。
しかし、覚悟した痛みが来ることはなかった。不思議に思った私が目を開けてみると目の前には男子達が縄で縛られて地面に転がっていた。
「えっ!?」
「大丈夫? 君」
あまりの光景に私がびっくりしていると光太郎にぃが不安そうな顔をして私の顔を覗き込んでいた。そして光太郎にぃの手には縄が握られており、光太郎にぃが男子達を制圧したことをそれが示していた。
そして光太郎にぃは縄を解こうともがいている男子達に近寄るとなにかを言う。そうすると男子達は震えた顔でコクコクとなにかを頷き光太郎にぃに縄を解いてもらうと逃げるように走っていってしまった。
「えっ、あっありがとう。そ、それとさっきはごめんなさい」
私はしばらく呆然とした後、それだけをなんとか絞り出すと光太郎にぃにペコリと頭を下げてその場を去ろうとする。
「待って」
しかし、光太郎にぃは去ろうした私の手を捕まえると私に自分の着ていた上着をかけてくれた。
私は慌てて返そうとするが光太郎にぃは受け取らない。
しかし、私があまりに必死に返そうとしたせいか光太郎にぃは「しょうがないなぁ」と笑うと私をギュッと抱きしめた。
「ちょっ、えっ、あ!?」
あまりの出来事に私が戸惑っていると光太郎にぃはフフフと笑い、
「これで僕も君もあったかいでしょ? お母さんが人はお互いに温め合うことで心もあったかくなれるって言ってたんだ」
そこで光太郎にぃは言葉を区切ると更に笑みをこぼして、
「だからさ、君にそんな心まで寒そうな顔をさせないように僕が君の心が溶けるまでギューってしてあげる」
そんなことを無邪気に言っていた。そして私の心は溶かされるばかりか熱くなっていた。
その瞬間に私は光太郎にぃに恋をしたんだ。
それが私と光太郎にぃとの出会い。
*
「やっぱり……温かいところですね」
「温かいところ?」
「はい、ギューってすると凄く温かいんですよ」
「冷たいイメージなんだけどなぁ」
「普段はそうかもですが……困っている人の心ごと温めてくれますから」
意外だという顔をする
早くもっと色々光太郎にぃと話したいなぁ、そんなことを思いながら。
*
「僕はっっ、
「俺はっっ、俺は……」
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次回「溶けてしまいそうだよ」
続きが気になるって方は星や応援是非是非お願いします。スピードが上がるかもです。
では!
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