第7話 翼はただの友達です
「お、女の子なんですか!?」
「う、うん。そうだけど」
私が取り乱しながらそう尋ねると男の先輩も少し焦ったようにそう答える。すると先程までの私の様子を見て私の気持ちを理解したのか、
「いや、まぁ翼と伊賀くんは実質男友達的な感じだし男女って感じじゃないから大丈夫だと思うよ?」
私をそうフォローしてくれる。私は安心とまではいかないまでも少し心を落ち着ける。
今、焦ったところでどうしようもないしね。
「うん、大丈夫だと思う……多分」
*
「おーい、翼来たぞ」
「ゴホッ、ゴボッ……開いてるから入って」
あのあと少しコンビニなどにより翼の家まで来た俺がそう言うと翼から少しセキをまじえた返事が返ってくる。やっぱり、今朝話した感じで体調が大分悪そうだな。
声に元気がない。
俺がゆっくりドアを開け、翼の家の中に入るとそこにはマスクをしパジャマ姿でなんとか立っているといった感じの翼がいた。
「……」
「ゴホッ、なんだいそんなに僕を見つめて。僕のパジャマ姿に見とれちゃったのかな? ゴホッ」
翼が少し冗談まじりにそんなことを言ってくる。
確かに翼がピンク色のパジャマを着ているところを見るなど珍しい……がそこではなく翼は今日はいつもなら短くゴムで縛っている髪を下ろし長髪になっていたのだ。
普段の男っぽい髪型とは違い熱のせいか頰を赤くし、腰まで金色の美しい髪を伸ばしている翼。
「まぁいいや。とりあえず翼は自分の部屋で寝ててくれ。少し洗面台とキッチンを使わせてもらうがいいか?」
「……うん」
このまま立たせて体調を更に悪くしてはいけないと判断した俺は翼にそう言うと持ってきた物をキッチンへと運ぶのだった。
*
「……入るぞ?」
俺は一応部屋をノックし、片手でドアを開ける。
「ゴホッ、遅かったじゃないか
少しでも俺に元気なのをアピールしたいのか、そんなことを冗談めかしに言う翼。しかし、やはりいつもの元気はない。本当に弱ってるな。
「ちょっと起き上がれるか?」
「ゴホッ、余裕だよ」
俺は一応そう聞くとベッドで寝ている翼はなんとか体を起こそうとするが起き上がらない。
「しょうがない」
「ひゃっ!?」
俺はそう言うと翼の背中に触れ支えるとゆっくりと起き上がらせる。なんか一瞬、翼らしからぬ声が聞こえてた気がするが気のせいだろうか?
「飲めるか?」
「うん……」
やはりかなりダルそうな翼に俺は買って来たスポドリを渡す。翼はゆっくりとそれを飲んでいく。その間に俺はあるものを用意する。
「本当に今日はありがとね。ゴホッ、僕はこの通り大丈夫だから
「おい、どうせなにも食ってないんだろ? 口開け」
病人なのにごちゃごちゃとなにかを言う翼を無視し、俺は先程翼の家のキッチンを借りて作ったお
……いつも元気すぎるくらいなんだから今日くらいは休んでもいいと思うんだがな。
*
「僕……帰っていいって言ったのに」
「看病するって言ったろ?」
結局、お粥を食べ終えた翼は少し恨めしげに俺を見てくる。
「僕だって、ゴホッ、今日が普通の日なら病気をいいこと
「おい。 ていうか無理して喋るなよ」
翼らしいボケに反応しつつも無理をして喋る翼を俺は止めうよとするが翼は構うことなく続ける。
「でも、今日は君にとって大事な日だ。
「友達が病気だってのにそれ以上に優先することってなんだ?」
「ゴホッ、少なくとも僕のことなんかよりもよっぽど大事なこと____」
翼がそれを言い切る前に俺は更に言葉を続ける。
「俺だけじゃない。あの人がいたならそうやって言ったはずだ。あの人は友達を大切にしろってよく言ってたからな。翼は俺の大事な友達なんだ。だから、それ以上に優先することなんてないんだよ」
「はぁ……」
それに大雑把な人だったからな笑って許してくれる、と俺は続ける。そうすると翼は嬉しそうな困ったようなよく分からない顔をする。
「
翼はどこか呆れたような声を出すと少し咳き込みながら笑いを上げる。
「だからこそ僕は……」
「翼?」
翼はなにやら小さく呟く。そして俺が聞き取れなかったので翼へと近寄ると突然翼に抱きしめられた。
「っっっ?!!」
そして翼は俺がなにか言う間もなく俺の耳元に口を寄せると、
「じゃあさ、友達思いの
そう甘い息をはきながら囁いた。翼の体は熱のせいかとてつもなく熱く、そして部屋の中には甘い香りが渦巻いていた。
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次回「人肌は心を温める」
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