第6話 えっ!? それ、本当ですか? ど、どうしようっっっっ


「するわけないだろ」

「流石に公衆面前じゃ出来ませんか……」


 俺は否定の意を示すがそれに対して新井はまるで2人の時はしているような含みのある言い方をする。いや、してないけどな?

 まるでいつもならしてくれるのに、みたいな悲しげな表情してるけどしたことないからな?



「じゃあ、手を繋いで帰りましょう」

「嫌だよ」


 そして妥協案とばかりに手を差し出してくる新井。……キスという前提があるせいか軽く聞こえるが騙されてはいけない。

 いわゆるドア・イン・ザ・フェイス・テクニックと呼ばれる手法。だから無駄な所に頭回してんじゃねぇよ!


「手を繋ぎましょう?」

「嫌だって!」

「手を……」

「……」


 俺が何度も断る為か周りからは「いや、繋いでやれよ」的な雰囲気を感じるが、おかしいからね?

 俺、別にコイツと付き合ってないからね?と言いたいがここで言っても照れ隠しにしか聞こえないんだろう。

 すると新井の方も無理だと悟ったのか少し残念そうに「 分かった」と頷くと、


「じゃあ家まで送っててくれませんか?」


 と頼んで来た。まぁここら辺だろうと思った俺は首を縦に振る。


「分かった。今日くらいは送っていって____」


 とそこまで言った所で俺の脳内で翼の「僕の看病は!?」という声が聞こえた。


「すまん、無理だ」

「……理由だけ聞いていいですか?」


 俺の行動に少し不自然さを覚えたのか少し不満そうに新井がそう尋ねてくる。


「友達が今日熱出して倒れててな、看病しに行く約束なんだ」


 まぁ、翼は来なくてもいいと言っていたが行きたい翼を止めたのは俺だからな、責任もって看病くらいはしないとな。


「じゃ、じゃあそれについていっても……良いですか?」


 よほど俺と話したいことでもあるのかそう粘る新井。俺の性格上無理だと言うことは分かっているだろうに。


「悪いな。俺だけならいいが新井に熱が移るのはマズイし、アイツも調子悪い時に知らない奴が来ると疲れるだろうから」

「……分かりました」


 俺がそう言うことは分かっていたのか仕方なさそうに頷く新井。……しかし、さっき一緒に帰るって言ったのに破るのはなぁ。

 ……しょうがない。


 俺は覚悟を決めると周囲に聞かれないように新井の耳元に近寄ると、


「代わりに今度手を繋いで帰ってやるから、それで許してくれ」


 そう伝えた。すると新井は飛び上がり、


「言いましたね? 絶対ですよ? 絶対!」

「分かってるよ」


 俺の手を握ると何度も嬉しそうにジャンプした。……そんなに嬉しいことか?


「んじゃ、まぁ今日はごめんな」

「いえ、全然大丈夫です」


 俺はそう新井に言うと鞄を持ったまま玄関の方へと歩いていく。


「クールって噂の新井ちゃんがあんな感じに……」「やっぱ夫の前だと違うのかな?」「なんか小動物みたいで可愛かったな」


 そんな頭痛のしてくる言葉を聞かないように必死に耳を抑えながら。


 *


 新井 瑞香視点


「あのー1つ質問していいですか?」

「「「いいですよ〜」」」


 光太郎にぃは出て行ってしまったが、光太郎にぃの教室の中に残った私は光太郎にぃのクラスの先輩達にとある質問をしていた。

 すると返ってきたのは温かい返事。……なんか揃いすぎて逆に不気味にも感じるけど。



「あの、光太郎にぃ____じゃなくて伊賀先輩が言ってた看病しにいく友達って誰ですか?」


 光太郎にぃの情報を少しでも集めておきたかった私はそれを尋ねる。

 すると1人の男の先輩が手を上げて答えてくれた。


「あぁ、翼のことだね」

「翼先輩?」

「うん、伊賀くんが1番仲がいい奴だよ」


 そう言ってその先輩が1つの写真を見せてくる。私はそれを見る。恐らくこれが翼先輩なのだろう。


「金髪ですか? でも、結構カッコいいですね」

「あぁ、翼はハーフでね。まぁ本人はいたって日本人って感じだけど」


 そこに移っていたのは黄色の髪をゴムで短くまとめ、青色の瞳と元気そうな様子が特徴的な男子であった。


「へぇ、伊賀先輩と本当に仲が良さそうでまさしく男友達って感じですね」

「んっ? あっいや」


 私の言葉を聞いて男の先輩が微妙な反応を示す。そして、少し申し訳なさそうに、


「いや、こう見えて翼は……女の子、なんだよね」

「えっ!?」


 そう言うのだった。待って、じゃあ今光太郎にぃは女の友達の家に行ってるの!?

 ど、どうしようっっっっ。



 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→


 次回「翼はただの友達です」


 今日はあと1話出せるかと……良ければ星や応援お願いします。では!













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