第5話 よく来たな、ワシがこの国の王じゃ
よく来たな、ワシがこの国の王じゃ。
この国は魔王の存在に脅かされておる。
このままでは、この世界は魔王によって破壊されてしまう。
嘘である。
先先代の頃は確かに魔王軍が攻めてきて、この世界は荒れていた。
それを倒した勇者によって、この世界は平和になった。
じゃが平和になると、武器屋は武器が売れず、道具屋は道具が売れず、宿屋くらいしか残らなかった。
王都に金は流れず、人々に不満が現れ始めた頃に、二代目魔王が現れた。
するとどうだろうか?
武器屋は繁盛、道具屋は繁盛、さらには他国が我が国の武器の生産技術を教えて欲しいと言ってきたではないか。
奴は救世主か?
この国の救世主ではないか?
しかし、魔王を勇者が倒してしまった。
再び国は疲弊した。
そこで一つの計画を立てた。
まず、魔王が現れてもなるべく長引かす為に、勇者の支援は10ゴールドだけにする。
強い武器を渡すと魔王を倒してしまう。
なるべく魔王には生き永らえてもらわないといけない。
勇者以外に全軍での突入はしない。
遺族への支払いや、軍備にかかる費用、突入している間に街が破壊された場合の費用、
戦後処理の費用が莫大にもかかわらず、
利益が平和だけなのだ。
魔王を撃つ為の伝説の剣が刺さっている村があるらしい。
調査に行かせたが、あからさまな偽物だった。
台座と溶接されたように引っ付いて入るとの報告。
ならば、魔王が現れても大丈夫。
倒されることはないな。
そしてやっと三代目の魔王が現れた。
彼こそは希望だ。
だが、勇者を探してますくらいの貼り紙はしないとな。
王都だけに貼り紙をした。
これなら、見つからないだろう。
だが数日後、ガラの悪そうな勇者と名乗る四人組が現れた。
一度は肝を冷やしたが、勇者の子孫であるという証明の石碑を見ると明らかに偽物だ。
しかし、勇者と名乗る偽物が魔王を倒せるはずがない。
ほんの僅かな資金を与えて旅立たせる。
ところが予想に反して勇者達の活躍が聴こえてくる。
魔王を倒したら、金をやらねばならん。
英雄を讃えるパレードをやらねばならん。
そんな資金は残っていない。
そうじゃ!影武者に王をやらせて、ワシはこの金を持って海の向こうの国で一生をのんびりと過ごそう!どうせ独り身じゃ、子供も出来なかったから丁度良い。
こうしてワシは海の向こうの世界に辿り着いた。
その頃、影武者の元に魔王から取り戻した王女【魔王】が影武者王の死後、女王になり、魔王【勇者】を討伐しに全軍を率いて行くのは別の話である。
俺は賢者じゃない!【連載、各話短編1話完結】 星進次 @puchirouge
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