ティア・ホーキンスの魔導書個室
暫く歩き続けて、俺はようやく、魔導書図書館へと到着した。
「あぁ…やっとだ…」
足が痛い、もう少し鍛えた方が良いかも知れないな。
俺は足を揉みながら上を見上げると、魔導書図書館を見る。
とにかく、大きい、まるで大企業のビルみたいだ。
俺が居た校舎が小さく見えてしまう程に壮大だ。
「…よし」
俺は立ち上がると共に、鍵を握り締めて魔導書図書館へと入っていく。
魔導書図書館のエントランスホールには、受付嬢が立っていた。
「こんにちは、個室ですか?共有ですか?」
受付嬢がそう聞いて来るので、俺は鍵を出して受付嬢の前に置く。
「個室でお願いします」
「この鍵は…ホーキンス家の家紋が入ってますね、ホーキンス家からの推薦で宜しいですか?」
受付嬢が鍵の持ち手の部分を見つめながら聞いて来るので、俺は頷いてみせる。
「はい、そうです」
「でしたら、この鍵を持った状態で、エレベーターをお使い下さい」
受付嬢がカウンターから出ると、首に掲げられた鍵を持ってエレベーターへと近づいていく。
鉄製で出来た格子の鍵穴に鍵を突っ込んで、開くと共に、受付嬢が中に入る様に視線を目配せする。
「入った後は…」
エレベーターの中にはボタンが無かった。
その代わり、鍵穴がエレベーターのボタンを押す部分にあったので、俺はティア・ホーキンスから貰った鍵を使って、鍵を挿し込んで回した。
すると、エレベーターは動き出して、俺はその揺れに少し体が動いてしまう。
「危なッ」
猛スピードで、エレベーターが動いている。
上に移動したかと思えば、今度は右、次は左、斜め右へと、エレベーターの軌道が全く読めない。
もしかしたら壊れているんじゃないのか、と思ってしまう。
しかし、俺の予想とは裏腹に、扉は一人でに開き出した。どうやら、目的地に到着したらしい。
俺がエレベーターから出ていくと、部屋の中は壮観で、俺が前世の記憶に残る、高校時代に利用していた図書室と同じくらいの魔導書が保管されている。
「すげぇ…これが全部、ティア・ホーキンスが個人で所有している物か…」
所有はしているが、しかし完全に解読は出来ていないのだろう。
こういった魔導書は基本的に別世界から放流してくるので、回収した魔導書は魔導書省へと渡して、検品の末に個人に寄贈される。
これほどまでの魔導書は中々持つ事は出来ないだろう。
流石は、『希代の十席』の称号を与えられたティア・ホーキンスであった。
「良し…じゃあ先ずは…片っ端から読み込んでいくか」
俺はそう思いながら、魔導書…もとい、ライトノベルを探し出すのだった。
ティア・ホーキンスの個室で、俺は二週間くらい籠りっ放しだった。
近くでは、バヨネット・イヴが、休憩室にて紅茶を飲みながら落ち着いている。
ぼさぼさになった髪が目元まで伸びていて魔導書を読むのに面倒だと思っていた時。
チン、と音が鳴って扉が開いた。
俺は音の鳴る方へと視線を向けると、トンガリ帽子を被る、ティア・ホーキンスがやって来る。
「結構、長く居たね。クレイ・マリー」
そう言われて、俺はティア・ホーキンスの方に顔を向ける。
彼女の手には、一枚の手紙が握られていた。
「どうも…ティア・ホーキンス」
「別に苗字まで呼ばなくても良いよ」
と、ティア・ホーキンスが言ってきたと共に、俺に向けて手紙を一枚差し出してくる。
「なんですか。これ?」
「愚弟の退学届けのコピー」
愚弟…あぁ、エリックか。
…え?あいつ退学したの?
俺そんな事望んでないのに、どうして…。
「ホーキンス家の息子が負けたと言う噂が大きくなったからね、事実確認をした実家が、エリックが生徒をイジメてたって言う証拠も発見して、恥晒しに他ならないから強制的に退学させられたんだ」
あぁ、そうなのか。
「ホーキンス家も恥晒しは要らないって、勘当されて追放されたよ、今頃じゃあ漁船で漁でもさせられてるんじゃないのか」
えぇ、かわいそ。
イジメられていた自分がそんな事を言うのはおかしいと思うけど。
「それよりも…」
ティア・ホーキンスが俺に近づいて来る。
「解読は何処まで終わったの?」
魔導書、それがどれ程読み解いたのかと、ティア・ホーキンスは言って来る。
「…『眼』で見てたんじゃないんですか?」
『虚ろなる瞳の握り手』は、『ブラッド・アイ』に出てくる登場人物の『異能の眼球』を所持している。
基本的に、登場人物に与えられた眼球は『片方』だけであり、もう片方を『虚ろなる瞳の握り手』が所持している、と言う設定。
その登場人物の一人には遠くに居る対象を見通す千里眼の能力を持つ『
「楽しみは後で取っておくのが楽しみだから」
成程…じゃあ、俺がどんな魔導書を読んでいたのかは、まだ分からないって感じですか。
俺は、机の上に置かれた魔導書に視線を向ける。
「とりあえず、それくらいですね」
机の上に置かれた魔導書を読み解いたと言う。
ティア・ホーキンスの前では嘘は効かないので、俺は正直に言った。
それを聞いたティア・ホーキンスは成程と頷いた。
「想像以上だ」
と、表情は変わらないが、驚いたと、彼女はそう言った。
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