第13話 オーガ
俺は、ユキの胸の内のものをすべて聞いた。
ユキが公爵家だということ。
大きすぎる期待のこと。
父親のこと。
なぜこんなことをしたかということ。
全部全部聞いた。
「話してくれてありがとう、ユキ」
そう言って俺はユキを抱きしめる。
「もう大丈夫だから」
そう言ってより一層強く抱きしめると、ユキは耐えきれなくなったのか、俺の胸の中でしばらくの間泣き続けた。
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どうしてこうなった
「な、なぁ、ユキさん。そろそろ離れてくれないかな?動けないんだけど」
「やだ」
「で、でも、そろそろ帰らないと、公爵様が怒ると思うんだけど」
「今日は帰らない」
「え?」
「ソラの家に泊まる」
もう一度言おう。
どうしてこうなった!!
今までの高圧的で自信満々のユキはいなくなり、今では俺に抱き着いて絶対に離れずに全力で甘えるように変化してしまっている。
これはまずい、非常にまずい。
何がまずいのかというと、ユキが抱き着いているということはの小さいとも大きいとも言い難いユキの胸が俺の腕にあたっているわけでね、うん。
いやがおうにも意識しちゃうわけなんですよ。はい。
「じゃ、じゃあ、俺の家に来てもいいから一回離れてくんない?」
「やだ、だっこして」
「さ、さいですか」
ソラはユキをお姫様抱っこした。
「ッッ////」
なんでユキの顔が赤く染まってるんだ?
ソラはユキをお姫様抱っこしたまま、村に向かって歩き出した。
移動中に、なぜか会話はなかった。
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村に着くと、そこには凄惨な光景が広がっていた。
いくつもの建物が破壊され、道端には何人かの人々の死体が転がっていた。
初めての死体に、俺もユキも吐き気をもようす。
「ソラ…」
「ああ、周りに人の気配がしない。おそらく何人かは避難したんだろう。それにこの死体の形…嫌な予感がする」
死体は何か大きなものに押しつぶされたか、もしくな何者かにねじ切られたかのような形をしていた。
「俺は家族が心配だ。様子を見てくるから、ユキは先にどこかに避難していてくれ」
「あ!ちょっと!」
俺は自身に身体強化をかけ、一目散に家に向かう。
「父さん!母さん!」
家の中をのぞくと、中には誰にもいない。おそらく、もう先に避難していたのだろう。そのことに安心していたその時、
ゾクリ
とてつもない恐怖が体にほとばしる。
「ッッバリア!!」
刹那、
ドゴゴゴーーーン!!!!!!!
ソラが何者かによって吹き飛ばされる。そのまま勢いよく隣の民家に激突する。
「かはッ」
壁に衝突した衝撃で腹の中の空気をすべて吐き出す。
なんだ!!何が起こった!!
前方を見上げてみるとそこには、
「オーガ…」
「ガアアアアアアアアアアアア」
オーガの雄たけびにより大気が震える。
最悪だ。よりにもよって、オーガに遭遇するなんて
オーガはゴブリンキングよりも上の上級の魔物。今のソラでは逆立ちしても勝つことのできない程の圧倒的格上だった。
さっきの衝撃はオーガに蹴られたものだったのか!!
ソラはオーガの蹴りにより、バリアごと壊され吹き飛ばされて、左腕が完全に折れていた。
どうする!今の俺じゃあオーガには絶対に勝てない!そして、逃げることもできないだろう!かといって戦っても、おそらく陀仏。加えて、ユキとの戦闘もあったため、まだ魔力は全回復しきっていない!
どう転んでも詰みじゃねーか!!
瞬間、
オーガがこっちい向かって突進してくる
「ま、まずい」
オーガがソラの前で拳を振りかぶろうとしその瞬間、
「”雷鳴”」
オーガに複数の雷が襲い掛かる。
「ガアアアアア」
オーガは思わず、膝を地面につける。
こ、この雷は、
「ユキ!なぜここに来た!」
「やっぱり、オーガだったのね。あんなに凶暴な雄たけびはオーガしかありえないもの」
最悪だ!よりによってユキも来てしまった!
「オーガだとわかったのならなぜ逃げない!お前だけでも助かる可能性があったんだぞ!!」
「いやよ」
「なんで!!」
「だって、それだとソラが死んじゃうじゃない」
「だ、だけど、このままだとどっちもお陀仏だろうが1」
「ソラが守ってくれるんでしょ?」
『 お前といるためなら、どんなことだって乗り越えてやる 』
先ほど、自分がユキに対して誓った言葉。
「大丈夫、私とあなたなら、どんな相手だろうと降り超えられるわ」
危うく、ユキの目の前で、自分が誓った信念を曲げるところだった。
はぁ、ったく、かなわねぇなぁ
「ユキ___力をかしてくれ__」
「__もちろん__あなたのためなら__」
少年は覚悟を決める。
オーガ本格的に戦うなら、俺が前衛で、ユキが魔法を唱えやすいように、ユキを守りながら、オーガの注意がユキに向かないよう、オーガに一撃ももらわずに常に自分に注意を向けさせる必要がある。
とんでもないムリゲーだ。だが、
「不思議と負けるいはしねぇ」
上等だよ。
「かかって来いよクソ鬼」
今ここで、お前を倒す!!
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