第7話 俺と
「し、死ぬかと思った。」
「ほんとよ。人生で一番濃い体験だったわ」
「違いねぇ」
そう言って二人で生き残った喜びを分かち合いながら、ともに、この現状がおかしく感じ、笑い出す。
二人は今、ゴブリンの大量討伐を終えて、互いに帰路についていた。
「今回のこと、なんて言おうかなぁ」
これだけのことをやらかしたのだ。冒険者組合や騎士団に報告しなければならない。だが、報告したところで、ソラ達ほどの子供がゴブリンキングを討伐したなんて、信じられるはずもなく、面倒なことになるのは目に見えていた。
「それなら、私が先にやっておくから、あなたは今日はもう家に帰って休みなさい」
「え、あ、おおう、ありがとう」
こいつ、騎士団か冒険者に繋がりかなんかでもあんのか?冒険者登録はしてないって言ってたし、あるとしたら騎士団か。
騎士団とつながりがあるって、こいつなにものだよ。
雷魔法に騎士団と思しきつながり。ソラにとっては、一か月一緒に行動しても、未だに謎が多い女ユキなのであった。
でも、
「では、さよなら」
「ちょっと待てよ」
これだけは言っておきたい。
「お前と過ごしたこの一か月は本当に楽しかった!!正直出会い方は最悪だったけど、一緒に過ごすうちに段々とお前が良いやつってことに気づいて、それから本当に時間が過ぎるのが早くて、ユキといる時間が宝物のように感じられた!!だから…」
「ッッ////」
「だから…俺と、友達になってくれ!!」
そう言って俺はユキに向けて手を差し出し、体を90度に倒した。
……
いつまでたっても返事が来ない。
待ちきれなくなって、顔を上げると、
「……」
「え?お、おい、なんで泣いてるんだよ!!」
ユキは涙を流して、声を漏らさないように手を口に当てて、必死に声を押し殺していた。
「あーもう!!ごめん!!俺が悪かったから!!」
友達になってくれって言っただけなのに泣かれるとか、俺どんだけ嫌われてるんだ?
「ち…ちがうの」
「え?」
「謝るのはむしろ……!!」
そう言って、ユキはどこかへ走り去ってしまった。
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