もめんきぬ戦争



 いつからか、世間では度々繰り広げられている「きのこたけのこ戦争」 。これは明治製菓のお菓子「きのこの山」と「たけのこの里」について、どちらが美味しいのかという論争で、1980年頃から始まっているそうです。

 ぼくはこの「きのこたけのこ戦争」には興味がありません。だって、どっちでもいいじゃないですか。どっちもお菓子として美味しいのだし、好きなときに好きな方をそれぞれの好みで選んで食べればいいのです。それに、ぼくは普段お菓子を食べないので、そもそもあまり縁のない話なのです。

 しかし我が家では、「きのこたけのこ戦争」に似た戦争が繰り広げられています。我が家はほぼ毎週お鍋を食べます。真夏だろうが関係なく、ぼく達夫婦はお鍋が大好きなのです。お鍋の素や具材も、二人の好みはほぼ一致しています。ある具材を除いて。


 ある日、妻が言いました。


「何でいつも木綿豆腐なん? 絹にしようよ」


 そんなもん、決まってます。豆腐は木綿一択。絹は形が崩れるから嫌なのです。あの美しいフォルムを維持できるのは木綿であって、絹にはできません。しかし、フォルムの維持にこだわるぼくを、妻は一蹴します。


「どうせ食べるんやから、崩れてもええやん。むしろ崩したほうが食べやすいやろ」


「形を崩したらそれはもう豆腐じゃない! 豆腐のアイデンティティを守らんとあかんやろ!」


「絹には絹の崩れやすいというアイデンティティがあるんや!」


 アイデンティティの意味が違う気がしますが、そんな言い合いを経て、今ではとりあえず鍋の中に木綿と絹一丁分ずつ豆腐が入るようになりました。只今我が家の木綿と絹は休戦中となっております。でも、ぼくにはやっぱり絹の良さが分かりません。いや、絹も美味しいのですが、やはり形を崩してはいけないと思うのです。


 そういえば昔、クレヨンしんちゃんのお話でしんのすけとおじいちゃんが納豆に卵を混ぜるか否かで揉める話がありました。しんのすけ曰く、納豆に卵を混ぜることは同じ映画にシルベスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーが同時に出演しているみたいでクドいらしく、おじいちゃんによると、卵を混ぜることによって納豆の潜在能力を引き出して何が悪い、とのこと。

 そんな二人の言い合いをよそに、しんのすけの父ひろしは納豆を見つけ、「今日は久しぶりに卵をかけてみるか」と言います。その言葉に感動? したしんのすけとおじいちゃんは、互いの趣向の違いを認め合い、めでたしめでたしとなりました。


 ぼくは今でも絹豆腐を認めていませんが、ひろしのようなカッコいいサラリーマンになりたいので時々は絹豆腐を食べてみようと思います。


 絹豆腐が好きな人へ。オススメの食べ方、調理法などありましたら教えてください。

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