ぴっぴ
小学生のとき、ぼくはよく保健室にいました。理由は様々です。喧嘩や遊びでケガをすることもあれば、体調不良で寝込むこともありました。
ある日、お腹が痛くて保健室に行きました。原因は下痢でした。ぼくは保健室の先生に訴えました。
「先生、おれ、ぴっぴやねん」
「ぴっぴ?」
“ぴっぴ”とは、下痢のことです。調べてみると、確かに下痢の意味で使っていた人がいるようです。でも明らかに公共用語ではありません。
ぼくが下痢の症状を必死に説明(どんな風に言ったかは忘れた)すると、先生は何とか理解してくれました。
「ああ、下痢ね。ふふ」
先生は笑いました。このときの笑い方はハッキリと覚えています。微笑ましいとか、かわいいといった感じではなかったです。明らかに、「プッ!」といった感じで、ちょっとバカにされてたような気がします。ぼくの思い過ごしでしょうか。
このときぼくは、“下痢”という単語を覚えました。家では、両親が下痢のことをいつも“ぴっぴ”と言っていました。
ぼくは家に帰ると、母に文句を言いました。何故、正しい言葉を教えてくれないのかと。母は言いました。
「“ぴっぴ”の方が可愛いやん。あんたはいろんな言葉がちゃんと言えへんねんから、いちいち気にせんでええねん」
ぼくはいろんな単語を間違えたり舌が回らなかったりで、ちゃんと言えないことが多かったのです。そして大人になった今でもよく噛みます。
母の言い分は何か違うと思いましたが、当時のぼくはそれに反論できるほど頭も舌も回らず、結局その後も暫くは“ぴっぴ”を使い続けることになりました。
お腹を下して“ぴっぴ”にならぬよう、皆さんも十分お気を付けください。
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