第42話:カーラ・カルカテルラ ※センシティブな内容が含まれます




 私の名前は!カーラ・カルカテルラ。

 子爵家の令嬢よ。

 兄が一人居るのだけど、本当に血が繋がっているのかと疑いたくなるほど似てない。

 見掛けも!中身もね!


 私はとても美しく生まれた。

 学校でも初等部でも中等部でも、とてもモテモテだったわ。

 だって、私以上に可愛い女の子は居なかったから。

 に興味津々な年齢の同級生に、オッパイを触らせる代わりに、綺麗な飾りを貰っていた。

 服の上から、下着の上から、直接……貰った贈り物の金額で差を付けた。


 そんな事をしていたら兄にバレてしまって、遠い親戚の家に行儀見習いに出される事になっちゃった。

 今までみたいに好き勝手は出来なくなる、兄にはそう言われた。


 でも、行き先が侯爵家だと聞いて、それだけで嬉しくなったの。

 新年の集まりとかで、一度行った事がある。

 お屋敷もうちよりもずっと大きいし、キラキラした飾りもいっぱいあったもの。

 それに侯爵家には、同じ年頃の跡取りが居るのよ!


 3歳上で、今は高等部に通ってるんだって。

 私は同い年に比べて発育が良く、3歳上の女子より絶対に私の方が胸が大きい。

 そして、顔も良い。

 夜にコッソリとベッドに忍び込んだら、間違い無くになれるわ。

 侯爵家の跡取りなら、処女をあげる価値が有るわよね!




 そして、私の作戦は見事に成功した。

 朝、起こしに来たメイドにベッドに二人で居る所を発見された。

 焦った侯爵と奥様が飛んで来て、私達が使ったベッドを確認し……奥様は倒れた。

 人によっては出血が無くて、純潔を疑われると聞いていたけど、私はちゃんと出血していた。


「子爵家の令嬢じゃ、侯爵家の正妻にはできん!早々に婚約者を探さなくては」

 侯爵は何か怒ってたけど、追い出されたりはしないようで安心した。

 そして侯爵は、侯爵家に私を迎える事を約束してくれた。

 それをお父様に伝えたら大喜びで褒めてくれた。

 でもあの地味で頭の固い兄は、私を虫でも見るような目で見て部屋を出て行った。


 そして1年経ち、スティーグに婚約者が出来た。

 政略結婚だから、婚約破棄も離縁も出来ない、地味令嬢で都合の良い女。

 私の天下よ!



 の、はずだったのに……気付いたら私は、娼館に売られる事が決まっていた。

 スティーグの侯爵家が潰れて、純潔じゃない私は後がなかった。

 だから侯爵家の跡取りの女に協力したのに、それも失敗。

 慰謝料が更に増やされ、実家の子爵家も無くなった。

 兄は早々に縁を切ってきた。


「やはり純潔ではないですね」

 数件の娼館が私を買う為に査定をしている。

 色々と調べられた。

 妊娠の有無、病気、処女かどうか。

 ここで買い叩かれると、上級娼館に行けなくなってしまう。

 月のモノがあったので、妊娠はしていない。

 これなら誤魔化せるわ!


「私は貴族の令嬢よ!純潔に決まっているじゃない!その機械が壊れているのよ!」

 貴族相手の上級娼館と、街にある下級娼館では、全然待遇が違う。

 上級娼館は、定期的に客にも娼婦にも検査をする。

 一見いちげんさんお断りで、まず検査を受けないと娼婦を買えない。

 どうせ逃げられなら、少しでも上へ!上へ行くの!



「ここで補足が……」

 検査をしていた男が、何かの結果を娼館の人達に見せた。

「おぉ、これは!」

 一人の男が私を見て笑った。


 買われた先は、希望通りの上級娼館だった。

 貴族相手で、それなりの待遇。

 同僚は貴族の愛妾としてどんどん辞めていく。

 でも、同じくらいどんどん新しい女が入ってくる。




 ある日、従業員が私の話をしているのを偶然聞いてしまった。

「あのおばさん、カーラだっけ?いつまでいるの?身請けもされないし」

「彼女は若い時に避妊薬を飲み過ぎて、妊娠出来ない体なのよ」

 は?なにそれ、初耳なんだけど!?

「何の憂いもなく生で出来るって、10年前は大人気だったのよ」


 身請けされた女は、ほとんどが妊娠が理由だった。

 今は生まれる前に親子鑑定が出来る魔導具があるからだ。

 それを狙って、私は避妊具を付けないでの行為を拒否しなかった。

 無駄だったって事?


 そもそも避妊薬なんて飲んでないのに!


「昔の粗悪な安い避妊薬は、薬草を乾燥させてお茶みたいに飲むのがあったのよ」

 スティーグが事後によくお茶を淹れてくれたわ。

 苦くて不味かったけど、スティーグが自ら用意してくれるのが嬉しくて、全部飲んでた。


「まぁ、それが不妊の原因だと判明したのはここ数年だから、知らないで飲んでいたのでしょうけどね」

 可哀想に……という従業員の声を、どこか遠くに聞いていた。



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