第41話:堕ちた愚者 ※残酷描写有 胸クソ注意




 婚約を破棄された。

 しかもこちらの有責で。

 業務提携の為の政略結婚のはずなのに、なぜ伯爵家から婚約破棄されたのか。


 業務提携は、こちらから持ち掛けた物であり、伯爵家の特産品がなければ成り立たないのだと、後から知った。


 それならば、あの女からまた「婚約したい」と言わせれば良いだけだ。

 地味な女だし、チヤホヤしてやればその気になるだろう。

 ……そう思っていたのに、あの女は露骨に嫌な顔をして断ってきた。

 父も協力してくれて、こちらに都合の良い噂を流してくれた。


 外堀は固めたし、伯爵家が侯爵家に逆らえるはずがない。

 カーラには学校では構ってやれない事を説明した。

 最初は嫌がっていたが、その分家に帰ってからはずっと一緒にいてやったら「計画が成功したら、あの女は私の奴隷にしてよ!」と可愛く甘えてきた。




 友人のタヴォラッツィ伯爵家三男と計画を練る。

 コイツはまだ婿入り先が見つからないで焦っている。

 騎士になる気は毛頭無いし、それなりに見目は良いから「未亡人に養って貰うかな」なんて本気で悩んでいる。


「なぁ、面白い事計画してんだって?」

 誰だコイツ。

「そうなんだよ!あ、スティーグ、コイツらは俺のダチ」

 は?勝手に計画を話したのか!?

「なぁ、伯爵令嬢と結婚しても、白い結婚なんだろ?」

「俺達を家令として雇ってよ。そしたらの欲求不満解消してやるから」

 なるほど。あの女が外で男を囲っても困るか。



 その後、あの女は俺の呼び出しには応じないだろうし、そもそも男では駄目だろうと女を仲間に引き入れた。

 タヴェルナ侯爵令嬢。

 公爵家のジェネジオを婿にしたいと、ずっとまとわりついている有名な女だった。


「ジェネジオ様の妹様と仲が良いからと、図々しくも昼食を一緒に食べているあの女ね?」

 自分の事は棚上げか、と内心で笑う。

 そしてこの女には内緒だが、コイツも標的だ。

 侯爵令嬢で婿を探している……婿入り先を探しているアイツが目を付けないはずがない。



 傷物にして結婚を強行する。

 計画は完璧なはずだった。

 恋愛感情により再婚約したと周りが思うように、噂も流した。

 計画の直後に、婚約発表するパーティーの準備までしてあった。


 それなのに、なぜ、王家が介入してくる?

 証拠の映像?なんだそれは。

 侯爵家は取り潰しになり、俺は強制労働所送りだ。

 ふざけるな!


 あの女に復讐してやる。

 明日、強制労働所へ移送される。

 まずはここから脱走し……え?扉の鍵がちゃんと掛かっていない。

 扉が完全に閉まっていないのに、鍵を掛けたのか!

 ちょっと強く扉を押したら、ガシャリと音がして鍵が開いた。


 思ったより大きな音がして焦ったが、しばらく待っても誰も来なかった。

 廊下を進み、外への扉を開けて建物の外へと出る。

 俺はなんて、ついてるんだ!

 こんなに簡単に逃げられるとは!


 一応隠れながら門まで行き、誰も居ないのを確認して門から外へと出る。

 さぁ!ティツィアーノ伯爵家へ行こう。

 そうだ。

 やはりあの女は犯して、俺の言いなりにしてやろう。

 あの女はどんな顔をして泣き喚くだろうか。

 楽しみだな!




「大人しく罪を償えば見逃してやったのに」

 そんな声が聞こえたと思ったら、背中に痛みが走り、体から力が抜けた。


 痛い、痛い、痛い、熱い、痛い、いや、熱い?


「足は、歩ける程度にはしてやろう」

「ぎゃあぁ!」

 足!足首を切られた!


「うるさいな」

「ゴブッ」

 喉を細い何かで刺された。

 もう声が出せない。


「腕は肩まで上がれば良いよな」

 肩を刺された。

 それから、体の至る所に傷が付けられていく。

「あ!コレが1番要らないか?」

 ズボンが切られた。

 そんな、まさか、同じ男なのに、そんな残酷な事はしないよな?


 逃げようと足掻いたら、ズボンを踏まれていたらしく、下着だけにされてしまった。

 下着も切られ、下半身が露わになる。


「え?まさかこんなお粗末なモノしか持ってないの?」

「これ、俺の小指サイズですよ」

「いやいや、さすがにそれは……本当だな」

「う~ん、これ、切る価値も無いな」

「切ったら、排泄出来なくなりますよ。小さ過ぎて持てないっす」



 俺は全身傷だらけで、下半身を露出したまま収容所へ戻された。

 担架に乗せられているので、周りの人間の表情がよく見える。

 俺の下半身を見て、明らかな嘲笑を浮かべるのだ。


 そして運び込まれた医務室で、俺は更なる絶望を味わう事になる。

 全身の状態の説明を、聞きたくないのに聞かされた。

 最後に「ここがこんなに小さくなるなんて、どうやったのか」と、何もされていない俺のアレを医者が摘みながら首を傾げた。




────────────────

先に根回しした、精神攻撃です


※外堀を固める(間違い)は仕様です

本当は「外堀を埋める」

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