第15話:準備は出来ました
「これだけ皆様にスティーグ様の理不尽な態度が周知されたら、私の方に婚約破棄の原因が有ると思う方はいらっしゃいませんわよね」
作戦決行から僅か3ヶ月。
学校全体に知れ渡るほど、スティーグとカーラは有名になっていた。
その間、ベッラノーヴァ侯爵家から、何度となく食事会と業務提携を進める話が来ていたようだが、全てをフェデリーカの父であるフランチェスコは断っていた。
「いつになったら話を進めるんだって怒ってたが知るもんか!」
ハッハッハッと笑うフランチェスコは、目が笑っていない。
母親のデルフィーナも、招かれたお茶会全てで憂い顔をしていた。
「何でも無いの。ただ、娘が学校に行き始めてからずっと落ち込んでいて心配なのよ。婚約者と一緒に過ごせるって楽しそうにしていのに……」
デルフィーナがそう言うと、何人かの夫人は視線を逸らした。
学校でのスティーグの様子を、自分の子供達から聞いているのだろう。
デルフィーナは笑いそうになるのを、顔を俯ける事で誤魔化した。
フェデリーカの作戦が上手くいっている事を確認したからだ。
そして後押しするように「不貞行為は即、婚約破棄よね」とお茶会で話していた。
「書類関係は全て作成済みだよ。後は相手と立会人の署名だけだ」
フランチェスコは、フェデリーカへ笑顔を向けた。
「後は確かな不貞の証人と、書類作成の立会人ね」
デルフィーナが頬に手を当てて首を傾げる。
「証人は大丈夫ですわ」
手を上げるフェデリーカに、オズヴァルドも頷く。
学校全体が証人と言っても過言では無いほど、不貞行為は目撃されている。
「立会人はなるべく中立の人が良いけど、難しいねえ」
長兄のアレッサンドロが腕組みをして目を閉じる。
候補者を思い浮かべているだろう。
「リアの婚約者のディーノ・ザンドナーイ公爵令息ではどうでしょう?既に成人していらっしゃるし」
オズヴァルドの提案に、フランチェスコは「こちらに近過ぎないか?」と難色を示したが、デルフィーナが「それを言い出したらキリが無いわ!」と一蹴した。
翌日、フェデリーカはイレーニアとジェネジオの二人に、婚約破棄の話し合いの場に証人として立ち会って欲しい旨を伝えた。
あの馬車待ちの日の事ではなく、学園での日々の行動を証言して欲しいのである。
「やはり、公爵家の肩書きは絶大だと思うので」
利用するようで申し訳無い、とフェデリーカは謝るが、それが貴族の世界なのである。
「それから、お父様から正式に依頼書が送られているけれど、ディーノ様に書類作成の立会人をお願いしたいの」
フェデリーカは、ロザリアへと申し訳無さそうに告げた。
「あら!それは喜びますわ。ディーはフェディの三人目の兄のつもりらしいから」
手をパンッと胸の前で合わせたロザリアは、嬉しそうに言う。
「うちも問題無いわ。元々そのつもりで一緒に行動しておりましたもの」
イレーニアも笑顔で承諾する。
「立会人も、うちの二番目の兄も付けましょう。ディーノ公爵令息とは友人ですし、文官なので間違い無いです」
ジェネジオがサラリと言うが、公爵家令息で文官な立会人など、本来は大金を払ってお願いをするような人物だ。
ディーノも公爵家嫡男である。
後で書類の内容を撤回したり、反故にしたら、社交界で爪弾きにされる事は間違い無いだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます