第7話:心強い味方




「ふ、ふざけんじゃないわよ!」

 カーラはフェデリーカに掴み掛からんばかりの勢いで詰め寄る。

「きゃっ!」

 フェデリーカは顔と頭を庇うように両手を上げた。


「何事ですか!騒々しい」

 カーラがフェデリーカの左手首を掴んだ瞬間、教室入口から凛とした声が聞こえた。

 皆の視線がそちらへ向く。

 声の主はイレーニア・ダヴォーリオ公爵令嬢、昨日の目撃者である。


「はぁ!?アンタ誰よ。私達の問題に首を突っ込まないでよ」

 カーラが叫ぶ。

 相手は公爵令嬢なのに、思い上がりも甚だしい事である。

 フェデリーカはチラリとカーラを見てからイレーニアへと視線を動かし、口元にそっと指を立てた。



 イレーニアが瞬きで同意を示したのを確認し、フェデリーカはカーラの腕を掴む。

 フェデリーカの手首を掴んだ手を、掴み返したのだ。

「この方がいきなり、婚約者がどうのと絡んできて」

 涙を浮かべながら不安気に訴えるフェデリーカは、間違い無く被害者に見えた。


「痛いです……離してください」

 そう言いながら、フェデリーカはカーラの腕を掴む手に力を込める。

 離させない為だ。

「な!アンタ何言っ」

 カーラが手を引こうとしたが、フェデリーカに掴まれているので動かない。


「私の婚約者は、この国のベッラノーヴァ侯爵家のスティーグ様です!きちんと両家で書面も交わし、手続きしておりま………きゃあ!」

 クラス中に通る声量で訴えてる途中、フェデリーカは振り払った。


 突然の悲鳴と共にカーラの腕が大きく動き、フェデリーカが後ろへとよろける。

 フェデリーカの腕の方が僅かに早く動いていたとしても、悲鳴とよろける姿に気を取られた周りには、気付かれないだろう。



 机に手をついてから床に倒れたフェデリーカに、イレーニアが駆け寄る。

「大丈夫!?」

「は、はい……ダヴォーリオ公爵令嬢、ありがとうございます」

 フェデリーカの様子を確認してから、イレーニアはカーラへと振り返る。


「今の事は、ダヴォーリオ公爵家から学園へ、正式に報告させていただきます」

 イレーニアはそう言うと、カーラの反応も見ずにまたフェデリーカへと向き直る。

「立てますか?保健室へ行きましょう」

「はい。ありがとうございます」

 イレーニアの手を借り立ち上がったフェデリーカは、カーラを見てビクリと体を揺らす事を忘れなかった。



「フェディ!?どうしたの?」

 今登校して来たのだろう。

 驚いた表情のロザリアが、イレーニアに支えられて歩くフェデリーカへと近寄って来る。


「ベルティネッリ伯爵令嬢でしたわね。ティツィアーノ伯爵令嬢とお知り合いでしたら、一緒に保健室まで行っていただけるかしら」

 イレーニアに問われ、ロザリアは「勿論ですわ」と返事をする。


 ロザリアの顔を見たフェデリーカは、「リア」と不安気に名前を呼び、瞳を潤ませる。

 そのらしくない様子に躊躇しながらも、ロザリアはフェデリーカへと寄り添い手を貸した。




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公爵家をペッレグリーノ→ダヴォーリオへ変更いたしました。

適当に命名(Web)で出てきたのを順に使っていたら、家名が似たようなのばかりになってました(^_^;)

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