第六章 魔王が大口を叩けば、死亡フラグは牙を剥く 第三話
「アハハハハ。遂に、遂に完全体となったぞ。これでニンゲンを……好きに蹂躙できる」
「今度こそ、人間を殺させません!」
「すまんな、魔王。俺は主人公だ、ここで貴様の願望を止めなければならない」
一歩俺とレイナは互いに右足を踏み出し、前方の魔王へロングソードの切っ先を向ける。
それは濁りを知らない銀翼を掲げ、右半分は漆黒で覆われ左半分は純白の肌を主張しつつ虹色の瞳を宿す魔族以外の生命体だった。
……うじうじと最悪の結果を嘆く暇はない。
「完全体になろうが創造神から作られた性格、設定にも気づかない時点で、貴様は魔王の域を超えることの無い魔族。海人さえ倒せない、お飾りの魔王さ」
「試してみるか? 我の力なら……小僧を殺す事など容易いモノ……」
「さて、上手くいくかな?」
リーナの表情が小悪魔っぽく歪む。
しかし過去未来現在の因果関係など俺の前で無力なのは事実。
……俺の能力は事象と事象の狭間で中間を創り出す力。あくまで相手と俺の力関係をフェアにするだけだ。
この力の厄介なところは相手の魔法を無力化させるのではなくて、魔力が伝わる方向へ中間という事象を付け加え、因果関係を成立させない点にある。よって魔法自体は使用できる為、仲間が同時に狙わると対処しにくいのがネック。しかし、ここは俺のガッツと集中力、俺とレイナの戦闘力で補ってみせる。
……腕の見せ所だな。
「コロス」
どうやら魔王の逆鱗に触れてしまったようで、奴は数秒俯いた後ガラスのように鋭い眼光を俺達の視線に這わせ、ギギギと正面の空気を歪ませた。
ガラス片で窓ガラスを切り裂くような、とても不快で不安を煽り出す雰囲気が周囲を覆い尽くすのが分かる。
「貴様を殺せば、殺しちゃえば、我が、私が、強い、最強、優れていると……証明ができる、できちゃう……」
奴の全体像が渦を巻くように歪めば、純白の半身と漆黒の半身が目の前で途切れ途切れに点滅を繰り返し、今度は左右、小刻みに純白の殻と魔王本来の真っ黒な体躯をチラつかせていた。
……俺はこの現象を何処かで見たことがある。
「そう、確か……」
「テレビで時折見られるブロックノイズの現象に近いモノを感じるよ、妹の私はね」
「海人……集中、しろ。奴はお前を殺しに……来る!」
体感、一秒も満たない時間で。殺気が新幹線のような目で追えるギリギリの速度でこちらへ飛び出し、右手に持つロングソードですかさず応戦。
……リーナが気付いていなければ、今頃俺の首は落ちていたと思う。
だが応戦と言っても半分不意打ちみたいな形で、今は地に左足をついた状態で血のように赤く染まり黒いオーラを纏う殺気マシマシのロングソードと対峙していた。
故に――
「ごちゃごちゃと……いつまで戯言を並べている? 人類は皆殺しだ……先ずは目の前の貴様……食料ちゃんから殺すわね」
「俺から離れろ!」
――今、俺の足元には十メートル越えの隕石が落ちてきたかのような巨大クレーターが形成されている。
ただでさえ奴のスピードは生命体の域そのものを超えているのに。
魔王の腕力は、まるでプレス機でも内蔵されているかのような圧倒的暴力、パワーバランスの崩壊を我々の脳裏へ意識させるまでに理不尽だ。
「ああクソが! 百二十キログラムの子牛三頭は軽々持ち上げられる強化魔法だぞ⁉ チートにも程があるだろうが、チクショウ!」
強化魔法を予め付与した両手で押し返そうと試みるも、奴の四肢五体はピクリとも上がらず、それどころか魔王の表情は清々しく余裕があるくらいで。一方の俺は、ジリジリと両肩から全身にかけて圧力と死が増すばかり。
……早すぎて俺の能力を発動させる隙も無いぞ。
ドロッと全身から汗が滲み出て筋肉の重みを一層強く感じ始めた。完全体魔王と俺では今のスペック差は一目瞭然。
……魔法や魔力で俺のスペックを凌駕するのは一周回って許せる。しかし身体能力に差が激しく生じるのは厄介過ぎるぞ。
「焦る表情が見え見えだわ……でも、殺せば全てが無駄になる。大丈夫、その焦りもやがて意味が無くなるもの……」
「黙れってんだ! 鬱陶しい」
「あなたの相手は海人以外にもいる!」
「邪魔を……するな……」
右横の爆炎をあろうことか奴は左手で消滅――否、吸収し刃ごとレイナを片手で吹き飛ばす。
埃と小石が舞う右壁、うつ伏せで倒れるレイナ。
「貴様、アナタの魔力……美味しそうね」
「俺から……離れろ、クソ外道!」
今すぐレイナの元へ、レイナの安否を知る必要があるにも関わらず、奴は俺の前に立ちはだかる。
「いいや離れはしない、終わらせはしないわ。アナタの能力――神の領域が私達には必要なの……何よりこの私の全身が欲しているのだから!」
……嘘だろ、まさか俺の能力をこの短時間で認知したって訳か?
それは有り得ない。
大体、俺の力はゲノス戦でしか披露していない為、見た人間は被害者のゲノスとレイナ達だけ。それどころか、力の詳細、本質を理解する者はリーナと俺だけに絞られる。ココに来て今更リーナが俺を裏切ると思えないし、理由も無いだろう。
「なら……コロス」
「……!」
瞬間。
ドスッと重い一撃が腹部に生じ、勢いよく上空へ蹴り上げられる俺の意識と思考。
気が付くと俺の全身は空気抵抗をもろに受け、高速で宙を舞う。
「まず……い! 受け身が、取れな……」
故に予備動作無しの蹴り上げと尋常ならざるパワーは、異世界無双フラグの反応領域を軽々と越えてくる。
……このままだと背中が魔王城の天井と衝突して、全身複雑骨折なんかじゃ済まされないぞ。
俺は簡易的な魔法しか短時間で詠唱できない為、どうしても痛みは伴う訳で。
「ガァァァァ! ああ……」
全身は強く打ち付けられ、衝撃は天井のレンガを粉砕し身体をめり込ませるほどだ。
「硬化魔法で耐えたか……中々やるわね。でもその姿を見れば分かるわ、身体は意識を保つだけで限界……ね?」
瞬間、口元から大量の鮮血が零れ、俺の意識を刈り取る。
「だからどうした、魔王。ぶっ倒れる前に終わらせれば、問題ないだろ……」
自然落下に身を委ねつつ、着地寸前で俺は浮遊魔法を詠唱し終え地に足を踏む。ヒューヒューと酸欠状態の身体に命を吹き込む音と心音が重なり合う度、自分の限界を思い知ってしまう。
「身体はフラフラなのにまだ頑張るのね……コレは楽しめそうだ」
「お気に召したようで、何より!」
前方の真っ白い図体に俺は問答無用で刃を合わせる。周囲から見ても奴の注意力は低下していた。作戦は特にないが俺の能力と周りへの被害を加味し、取り敢えずアイツの懐へ潜り込む事が先決だと踏んでいる。
……だからこそ、この機を逃す訳にはいかない!
俺は焦燥感、並びに殺気駄々洩れのままロングソードを右手に持ち、地を右足で踏み込むと横一閃。
奴の懐へ接近する感覚はまるで硬式野球ボールになった気分で。
向かい風を受けつつ一秒にも満たない速度で約十メートル先の相手へ再び接近――
「冷静さも時には大切よ?」
「魔王!」
――しかけた全身と刃は、奴との距離一メートルで強制的に停止された。
「さようなら、主人公」
俺の首筋を上から下へ舐めるように撫でながら魔王は最後の言葉を放つ。終始、奴の意識と能力は魔王とオーキスが混同し、上手い具合に共存し支え合っていた。だが裏を返すとソレは、今まで蓄積してきた奴本来の注意力や戦闘経験が二分の一にまで減少するという事を指していた。
「今だ、レイナ!」
故に僅かな油断と隙が生まれる。
「まさか……!」
「今更、気付いたところでもう遅い」
「離せ! 貴様、私に触るな!」
煌めく憎悪と覚悟。
「離す……かよ!」
刃が右胸に突き刺さったまま鮮血が幾度となく流れようとも、この手を離す訳にいかない。
「ハアァァァァ!」
「馬鹿が……!」
「っぐ……ハッ」
殴られ、蹴られ、青あざと意識が腫れあがり胃の内容物が逆流を起こす。胃液と血液交じりの咀嚼物が苦く、しつこく、口の中を犯し――刀剣が腹部に刺さる。
「海人!」
「あら、力を緩めちゃって大丈夫かしら? 人間は殺す……貴様の力を奪い、行使してだが!」
「しまっ……」
痛みに悶え苦しむ俺を荒々しく右手で持つと、フリスビーを飛ばす要領で明後日の方向へ身体が宙を浮き――
「じゃないと、魔王様が人間を絶滅させるわよ? 主人公なら少しは頑張りなさい」
――背中から左壁に全身を強打した。
湖に落ちた小鳥を嘲笑し眺めるような笑みを貼り付けてはいたが、純白の瞳は全くと言っていいほど、嗤っていない。
俺はその目を、感情を見たことがある。
……それは正しく、殺戮者の瞳。これから命を屠る時に不要な感情全てを捨ててきた者の眼だ。
「近づけ……させ……っかよ!」
胃から吐き出された不快と赤い液体を再度その場で吐き出し、ふらつく身体にムチ打って、俺は剣の切っ先をヤツに向け抵抗。
ヘイトを俺の方へ向かせなければ、一秒も経たずして俺の前で大事なモノが崩れ落ちると確信があるから。
……命に代えても阻止しろ! 俺。
「しぶといわね……そろそろ殺してあげる!」
「海人! 奴はもう、お前の能力とその弱点を熟知していると見て間違いない。完全体魔王の人格、それを利用すれば君に勝利の女神は微笑むはず」
予想した自分の考察と第三者の見解が現実というパズルピースを合致させていく。
魔王は俺の能力が発動する前、いや認識される前から既に懐へ攻撃を入れていた、あるいは視覚情報を意のままに操る技を有していると思われ……って、いや有り得ないか。
「こーんな、物理法則ダダ無視の世界、文明の利器である科学が停滞し、そのものを否定した国で。敵の能力――それも因果系列の力を魔王が理解し対策できること自体……明らかに可笑しい状況だと思わないかね? 海人」
……確かにリーナの言う通り。特に魔王は俺を主人公と呼称していた。
その点を考慮し奴らの背後に居座る黒幕――内通者はこの世界の登場人物、ジョーカーと密接な関係、あるいは裏切り者本人の可能性もある。
「やはりリーナ、貴様から殺すべきだったわね」
「――っ!」
意識の渦から俺は浮上し右斜め前の空間を切り裂いた。
世界にありとあらゆる言語が消滅し、金属同士の摩擦――擬音だけが残る。
剣に剣で応戦し、両手にありったけの力を込めて刃を前方へ押し返す。天井に打ち付けられた痛みが呼吸を不安定にさせている。崩れる魔王の上体、ロングソードを右横に構えて追撃の準備を始めた俺は、その場で吐血しながらもロングソードを振り続ける。
無論、勝機が見えているからだ――勝つ方法。
「お前らが二人で一人なら意識や性格だって複数存在するはず! すなわちオーキスと魔王の意識が切り替えられる時は、多少のラグが発生しても可笑しくない!」
「ごちゃごちゃと……いい加減、シネェェェェ!」
「故に、能力発動までの隙が生じる!」
俺がリーナを守るべく一歩二歩踏み出しヤツとの間合いを詰めきった時。
一秒にも満たない一瞬は、魔王の反応を一段階鈍くさせ電池切れを起こしたロボットの如く指先と血流や予備動作、全身が不気味なほど無反応。
……意識を切り替える度に一定時間ラグが発生することは間違い無さそうだが、しかしながら何故魔王は自身の弱点を排除しない、する必要がないのか気になる。
「……ッ! 舐めやがってぇぇぇ!」
「痛ッ……あの態勢で俺の攻撃を受けきれるのかよ」
剣で押し倒したとき、確かに奴の上体は九十度後ろへ逸れていたはず。
並の人間だと背中からそのまま落ちるし、なんなら上半身が崩れた状態で一秒もかからず逆立てられた爪に俺の頬が巻き込まれ、流血するなど有り得ないが。
……しかも下からだぞ。だが奴は生物の域を超えたバケモノ。
俺の中で当たり前と化す概念や法則が、通用するほど世界は甘くない。現に魔王の上体が逸れた間の反撃――瞬きひとつで完結する引っ掻きは、物理法則や概念を裂きつつ俺の皮膚を掠め、ぶどうの皮を剝いたように軽々と中身が、赤い鮮血が右頬骨を伝っていた。
目の前の理不尽が爪を立て、迫り来る。
「ニンゲンなど無力! 貴様は我――魔王によって手足を切断されたまま、ゆっくりじっくりと仲間が殺される様を、何も出来ない己の無力さに心が潰されるまで……何度も、永遠に。大切な物を奪い続ける……嗚呼、タノシミダ」
不敵な笑みを浮かべる魔王と焦る俺。
なんせ、ほぼ不意打ちに近い魔王の攻撃を避けた後、俺の全身はバランスを崩しつつ後ろへ倒れ込む途中なのだから。これでは無防備の兵士一人が数十万もの敵兵を前に、ブリッジを披露する状況と変わらない。
「落ち着け、冷静になれば困難も対処できるはずだ」
ダガーナイフ並に伸びた爪が俺の首元へ急接近し――
「ハァァァ!」
――かけた魔王の手は、俺という結論へ辿り着かずに空中で拒否される。
「貴様……ッ」
「悪いがお前に敗北を譲るほど俺は甘くない!」
強気で威勢よく吠えたものの、内心は痛みや死の恐怖が常にチラついていた。自分に己が強いと錯覚させなければ、指先の自由さえ利かない状況。
……俺の敗北でアメリが死ぬ、リーナが死ぬ、レイナが死ぬ、全ての人類が死ぬ。
責任重大、ミスは許されない。
「図に乗るな!」
……魔王と歩調を合わせろ、魔王とオーキスの意識が切り替わる瞬間を狙え、相手の攻撃と俺の能力を相殺する事だけを考えろ。
脊髄反射した俺の拒絶を受け本気になったか、さらに一段階素早く魔王の右手が牙を剥く。鞭のようにしなった残像が人間の限界を証明する度、心はグラグラと恐怖に慄く。
とっくに奴の上半身は起き上がり、目と鼻の先に捕食者として生命体の枠組みを超えた魔王が居る。
「だからどうした……この外道が!」
様々な最悪に意識を回す余裕や必要もない――信じろ、己を。
……信じろ、自分の力を。
迫る攻撃を瞳で捉え視覚情報を脳へ伝達、識別し、魔力を体内に巡らせて自身の能力とリンクさせる。腕が、右手が共鳴するように体内で熱が流れると、やがてはロングソード全体へ熱が伝う。
そして――
顔全体に狙いを定めた奴の右手を能力で相殺。
ロングソードを持つ手を粉砕しようと詰め寄った左手も、また同様に打ち消す。
「……ッ!」
憎悪と敵意を剥き出しに、魔王の顔が大きく歪む。
毒牙を向ける蛇の如く、呪いを振り撒く魔女のように、虹色の瞳は鋭く呪言めいた言葉を吐き捨てながら俺を地獄へ堕とそうと再び、右手を振りかざす。
――反撃の準備は整った。
「ハアァァァ!」
魔王の攻撃とスピードに目が追いつき、能力も最初の頃に比べれば、随分と融通が利くようになってきた。
望む瞬間に、適切な力加減で。
「ガァァァァァ!」
簡単に相手を切り付けられる。
縦に一振りした感覚は包丁でホールケーキをカットするような、スルスルと味気ないモノだった。生き物らしからぬ、機械のような切断具合で気持ちが悪い。真っ赤な絵の具を混ぜ、パンパンに膨れ上がった水風船――鮮血が目の前で弾けて切っ先からポタポタと雫が落ちると返り血が銀色の鎧に掛かり、目の前には血溜まりが出来ていた。
当然だ、能力で魔王の攻撃全てが結論に至らないのだから。俺が攻撃を認識できる限り立場は揺らぐ事さえ許さないだろう。
――だから
「どうした海人? トドメを刺せ、コイツを今すぐ殺せ! 反撃されるぞ!」
「コイツは……わた、し、達の……て、き……」
――俺はロングソードを左腰に納め、前方のリーナと右側で倒れ込むレイナの反対を押し切り、三メートル先の魔王へ近付く。
奴の利き手、右手も同時に切断したから大丈夫だと思う。
「貴様……なぜトドメを刺さない……」
「勘違いするな。トドメを刺さない訳じゃない、ただ……死ぬ前に、お前が知る限りの情報を吐いてもらうだけだ」
詰めの甘さも、人類の敵と可能なら共存する選択を願う妄想も、全ては平和ボケした世界、日本で数十年過ごした名残が消えなかったのだろう。
「海人! コイツを殺さなければこの物語は永遠に終わらないし、君の苦悩も解決しないぞ、ソレを理解したうえで発言しているのか? 奴は女、子供関係なく命を大量に奪ってきた殺人鬼。君が許そうと思う行為は生命の価値を、今まで散った同胞の命を粗末に扱う者――魔王と同じ殺戮者と変わらないぞ! 理解しているのか⁉」
リーナの意見は至極全うであり、人間として抱くに相応しい感情だ。
この世界の夜空に当てられて可笑しくなったか、それともリーナから主人公と言われたせいか。視線を石造りの床へ移し、俺は自身の意見を述べた。
「俺はそれでも……これ以上犠牲者を出さない道に賭けたいと思う」
いいや、これは自分の感情だ。
俺はリーナと違って争いを争いで、暴力を暴力で解決したくない。誰かが死ぬのはこれ以上ゴメンだ。魔族や魔王にだって家族や友人がいると思えば、安易に殺せない。
……やり返すのは、やられた方と同じ人間レベルに成り下がる気がするし、新たな争いを生むだけで、何の解決にもならないと思う。
「この甘さが一体どれ程の犠牲を生むか……海人! 君はまだ知らない!」
「リーナ、俺は誰かが悲しむ姿を、もう見たくはないだけだ」
「……ッ! 海人!」
突風が背後で吹くと、同時に『前だ!』と、リーナとレイナの叫びが体感時間を狂わせる。相変わらず、大袈裟な奴だなと思った矢先、俺は左側へ飛ばされ――思いっきりリーナにタックルされて。
「エンド……ロール」
「痛っ! 突然、何しやがる! リー……ナッ」
向き直る方角。そのシルエットに絶句した。
俺が心の中で抱いた愉悦や理想がどんどん握り潰される。
……ウソだろ? 冗談だよな?
今日はやけに胸が締め付けられるし頭と目頭が焼けるように熱い。心臓の痛みを両手に抱えて膝を付く。しばらくして目線が地に蹲れば――
「っぐ……だから、言っただろ。甘いって……」
――弱々しいリーナの声が現実逃避に釘を打った。
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