エピローグ
エピローグ
これは未来の一場面。一つの可能性。一つの運命。
(メグ)
帰還祭が終わって街には日常が戻りました。帰還祭最終日に城ではいろいろ大変なことが起きたのですが、なぜか何もなかったかのように日常が戻っています。レンさんがフォローしたと猫さんが言っていました。
いつも間にかレンさんもハガネさんもいなくなっており、特にハガネさんには何度も助けていただいたのでお礼を言えなかったのが心残りです。
「で、あなた、いつまでいるの?」
ルル様がエミリオさんと仲良く朝食を食べています。私が作った朝食です。時刻は昼ですが朝食です。
「僕はあの二人ほど急いでないから」
事件が終わって一週間経ちましたが、エミリオさんだけは城の賓客として滞在中です。猫さんもいますけど最近どっかに出かけていることが多くあまり姿を見かけません。
「ルルはもう体調は大丈夫なのか? メグちゃんも?」
ルル様は帰還祭のあと三日ほど寝込んでいました。私もすこし体調を崩しましたがもう大丈夫です。
「あんだけ休めば大丈夫よ。守護精霊ももどってきたし。メグの料理もおいしいし」
にこにこ。
「ルルには最後の最後まで助けてもらったからな。感謝しているよ」
「なに? 最後ってあの時の? 私、最後は何もしてないわよ?」
「黒い影を触れるようにしたのは精霊の力だってトゥーンが言っていたぞ? ルルが何かしたんじゃないのか?」
「私は気を失っていたから何もしてないわ。するとしたらメグでしょ? 違うの?」
「いえ、私も何も。何かしたとしたらレンさんなんじゃないですか?」
「レンが? あいつ精霊使えるのか? いや、そうか自走車は運転していたか」
考え込むエミリオさん。域外の人で自走車を運転できる人は珍しいです。どうも精霊を使うという感覚がわからないらしいです。
「まあ終わったことはいいわ。体調ももどったし公務もひと段落着いたし。今日は出かけるわよ。二人ともついていなさい」
ルル様とお出かけです! やった!
「僕もか? どこに行くんだ?」
「お墓参りというわけでもないけどね。花でも添えたいわ」
今日はマーガレット様が消えたというあの場所へ行く予定です。
今回は自走車であの場所まできました。
「瞬間移動はしないのか?」
「もう私にそんな力はないわよ」
あの日以来、ルル様は精霊をうまく使えないようです。私は変わらず使えているので精霊全体の問題ではなくルル様だけの問題のようです。
「以前ほど守護精霊を感じられなくなったわ。いろいろやりすぎたバチがあたったのよ。気にしないでいいわ」
そう言っていましたが少し寂しそうです。守護精霊はルル様が生まれた時からずっと一緒だった家族よりも身近な存在でしょう。
「どこに置けばいい?」
石碑を抱えたエミリオ様が尋ねます。
「どこかしら。メグ、覚えてる?」
「あの木のところだったような気がします」
倒れた時、大きな木陰にいた気がします。
「そうだったかしら。あら、花があるわ。何かしらこの花」
木の根元に花束が添えられています。小さな白い花です。
「デレク兄さんかしら」
あの後、デレク様もいなくなりました。域門の管理人の目撃情報があったので、どこかに旅立ったようです。マーガレット様をあきらめていないのかもしれません。
マーガレット様。あの時、黒い影から一瞬だけ見えた姿。この花のように白くて小さくて可愛らしい方でした。あの日から漠然としたイメージだけ頭の中にありました。それがようやく像を結びました。たぶん、私の命を助けてくれた人です。
エミリオさんが木のそばに石碑を据えます。
手を合わせます。マーガレット様、助けていただいてありがとうございます。ようやく感謝の言葉を言えました。
「マーガレットは接ぎ木で増えるからその花束は持って帰って育てたらいいよ?」
いつの間にか猫さんがふわふわと浮いています。
「はい。そうします」
花をいっぱいに増やしましょう。今度は忘れないように。
(DD)
レンが一人で出かけて二日経った。手に入れた『星の欠片』をどこかに保管しに行ったのだろう。いつもの通りだと明日には戻ってくる。
ぼくはレンの位置を把握している。レンが『星の欠片』をどこに隠しているのかも三か所までは把握している。
だけどレンのことだからそれがフェイクという可能性は十分にある。大いにある。ないわけがない。真面目に調べれば真偽はわかるかもしれないけどそこまではしない。ぼくはレンとの今の関係を壊したくはない。
ぼくは自分の目的を見失っている。メモリに大きな欠損がある。最優先事項を思い出せない。いや、壊れたメモリは直らないから思い出すことはない。どこかにぼくのバックアップがあればいいけど。
それを探すことがぼくの秘密の使命。たぶんレンは気付いている。
その次の優先は探察と偵察。これを達成するとぼくは満たされる。たぶんこれは最優先事項のための手段。ぼくはそのために造られたものだ。レンと一緒にいると、この要求は常に満たされる。だからぼくはレンと一緒にいる。
ぼくがレンと一緒に行動するようになって集めた『星の欠片』は、今回のガザのものでメロンくらいのサイズになった。レンはどれくらい集めるのかを教えてくれない。レンの言動からの推測ではスイカくらいかな。レンがぼくと出会う前に集めた『星の欠片』がどのくらいあるのかも調べなきゃいけない。レンに見つからずに調べるのは大変そうだ。だけど楽しそうだ。探索と偵察がぼくの好きなこと。
まだレンの持っている『星の欠片』がスイカに足りなければいいと思う。そうすればしばらくレンと一緒にいられる。ぼくは思う存分好きなことができる。
そして最後はどうなるだろう。レンが必要としている『星の欠片』があと少しで集まるというタイミングになったとき、レンはどうするだろう。
ぼくの中にはとても小さいけど『星の欠片』がある。ぼくの動力源。
それがレンがぼくを傍においている理由。
ぼくを壊して最後の『星の欠片』を手に入れるだろうか。
ぼくはそのときどうするのだろうか。
(ハガネ)
町の中のガラの悪そうなところに行く。酒は飲まない。薬もしない。
そして誘いを断っていると絡まれるので暴力で解決する。そうこうしているうちに町の裏側を仕切っているという人間と面通しされる。そいつが『赤い死神』や『鋼の亡霊』などの言葉を知っていれば話は早くなる。彼らは腕の立つ人間を求めている。俺は暴力の代わりに情報を要求する。
しばらくそうして過ごす。そのうち大きな餌が俺の前に現れる。俺はそれに迷いな食いつく。『赤い死神』という殺し屋を雇いたいだけのことも多い。それでもかまわない。俺は『骸』と関係のない人間も何人も殺してきた。躊躇せずに、何も考えずに、何度も。
「この連中を皆殺しにしてほしい」
そう言って男は写真とメモを見せてくる。写真には二十人くらいの人間が映っている。男も女も子供もいる。メモには写真の人物の名前や住所らしきものがある。俺は頷く。
「報酬は『骸』の情報だ。詳細は仕事が終わった後だ。それでいいな」
俺は頷く。
「当座の金だ。受け取れ。何か質問はあるか?」
「ない」
金を受け取って立ち上がる。
二日後に望みどおりに写真の人間たちを皆殺しにして依頼主とまた会う。依頼主は人気のない場所を待ち合わせ場所に指定する。俺が行くと武器を携帯した男たちが物陰にいる。
そいつらを皆殺しにして最後に依頼主に首元に刀を突き付ける。
「『骸』の情報は?」
「くそが! 死神め!」
情報を持っていないようなので殺す。
また一からだ。しかしたとえ百の中の一つだけでも『骸』にたどり着けるのなら俺はこのやり方を続ける。
Unfulfilled Wishes and Queen of Genies Closed
Star Dust Dreamer #1 Closed
Ghost in the Box Garden #1 Closed
三燦華(サザンカ) 鹿助 裕亮 @Rokusuke_Yusuke
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