第4話 叶わぬ願い(レン)
(レン)
「『星の欠片』は願いをかなえる道具だ。精霊も同じく願いをかなえるものだ。その二つを組み合わせるとどこまでの願いをかなえられるか?」
姿の見えないデレク王子に向かってレンは言葉を放つ。黒い空間を抜けたらDDとメグがいた。トゥーンが二人のいる場所にレンを連れてきたらしい。
レンを先頭に衛兵のいない廊下を歩く。DDの検索にもデレク王子は引っかからない。しかしデレク王子はレンの話を聞いているはずだ。
「ガザに来ていろいろと調べました。論文、警察の調書、カルテ、個人の研究ノート、公式非公式含めて。なかなか狂った研究をしている人もいて参考になりましたが、結論から言うとデレク王子の願いは叶いません」
そしてそれはレンの願いも叶わないということでもある。しかしそれはレンの心にとどめる。
「精霊に人を生き返らせる力はありません。ましてや存在しない人間を作り出すことなど不可能です」
どこからも返事はない。
「正直、どれだけの『星の欠片』を集めても叶えられないかもしれない。無から有を生み出したというは例がない」
当てもなく歩いているわけではない。一応の目的地は礼拝堂だ。精霊の霊脈の中心。最後の大勝負の舞台にふさわしいだろう。
DDは黙ってセンサを総動員しているがまだ何の反応もない。
「私にはデレク王子が妄想を具現化しようとしているとしか思えない」
「マーガレットの件はどう説明する?」
反応が返ってくる。
黒い空間と同様に指向性のない声。
「どこにいますか? 話がしたい」
「話すことなどない。その娘を連れてきたことは感謝するが」
メグのことだ。やはり自分一人の力ではどうにもならないらしい。ルルを諦めてメグを通して精霊の力を行使するつもりだろうか。
「『欠片』と精霊の霊脈だけでは願いはかないませんか? やはりルル王女は必要でしょう? メグさんでは足りない。そうではありませんか?」
返事はない。
DDが私の手を取り教会と信号を送る。レンの思った通りの場所だ。
攻撃は来ない。エミリオのところの植物はデレク王子生み出した悪鬼だ。力の行使の結果ではなく、作り出された悪鬼。そのことに力を注いでいるためレンのほうまで手が回らないのか、それともメグを連れてきてほしいのか。
「トゥーン、メグさんを退避できないか」
「次元を超えるときにミンチになる可能性があるよ。誰でもレンとかハガネみたいに認知系が強いわけじゃないからね」
レンには答えは分かっていたが、一応の確認。ハガネは感覚で四次元を捕えられる。レンは理屈で四次元を認知している。エミリオは体力でなんとかいけるらしい。普通の人間には四次元を通じて三次元上の別の空間へジャンプすることは負荷がかかりすぎる。
「DD、最優先はメグさんの保護だ。割り込み不可」
「メグちゃんの保護が第一優先。DD、了解しました」
レンとDDのやり取りにメグが不安げに声を上げる。
「あのう。大丈夫なのでしょうか」
「大丈夫です。DDが守ります」
レンの推定では、デレク王子の願いには三つの要素が不可欠である。『星の欠片』、守護精霊が不在の霊脈、そしてルル王女。三番目をメグさんで代用することは難しいだろう。とすれば、デレク王子がメグさんに求めているのはルル王女を呼ぶための餌としての役割。デレク王子が何をするのかは見極める必要はあるが、まずはメグに被害が及ばないことが大事だ。DDは後先考えなければ城の外まで二跳びで脱出できる。DDの駆動系は駄目になるだろうが、そこは替えがきく。
自分の目的にためには何をしてもいいわけではない。レンはそのことを忘れたことはない。それがレンとハガネの違だ。
「トゥーンもいざとなったら頼む」
「あいあい」
レンの言葉にトゥーンは返事を返すが、レンにはその姿は見えない。
レンたちは警戒しつつ教会に入る。
デレク王子は教壇の上で待ち構えている。
「ご苦労。その娘を渡せ」
デレク王子の興味はメグにしかないようだ。
「それはできません」
レンは即座に断る。
「人心御供は気が進まんか? そこまでのことはせんよ」
「どちらにせよ勝算がありません。あなたが単独でするよりも効果はあるかもしれませんが、それでも届かないでしょう」
デレク王子がレンに視線を向ける。
「調べたとか言ったな。それはプストやガイガスの人体実験のことか? テレクストの自律人形は?」
「すべて見ました。自律人形は目的が違います。あれはあくまで人形です」
精霊の力で動く自律人形。しかしそれはDDの足元にも及ばないようなただの人形だ。
「人体実験のほうは、ほとんどが眉唾ですね。ガイガスの実験は机上の空論です。プストの死者蘇生は、いわばゾンビです。死体を動かしているだけで意識と言えるものは宿っていない。それでもそれが最良の結果です。それ以上は不可能だ」
「ふん。それぐらい理解しているし。そんなものを参照する気はない。論文なんぞ読むだけ無駄だ」
デレク王子は呆れるように言う。
「君の見た資料にルルに関するものはあったか? なかっただろう? すべて処分させてたからな。すべての研究も論文も無意味だ。必要なのはルルだけだ。ルルの力があれば私の願いはかなう」
「やけにルル王女の力に自信があるようですね。たしかにいろいろと無茶をしたという話はききましたが」
瞬間移動、転送操作、エミリオの話と部外秘の秘密文書にぼかして記録されていた行動の数々。精霊が人の願いを叶えているのではなく、上位存在である精霊を使役しているとしか思えない。
「しかし、それでも人に命には足りない」
「そんなことはない。証拠が必要か? ならばそこにある」
デレク王子の視線が再びメグを捕える。
「その娘は十年前に死んだ。マーガレットがこの世界から消えた時に。マーガレットは消えたがその娘は生き返った。それは間違いのない事実だ」
「……」
想定外の情報にレンの思考がフル回転する。生き返った? それは事実か?
「メグ。十年前の湖畔の事故のことをその男に話してやれ」
「え? は、はい。けど、私は生き返ったわけでは」
「当時の状況を話せ」
「……はい」
王子に命令されて、メグがうなずく。話したくはない様子だが王族からの命令を拒否することもできない。レンも止めない。いや、レンはその話を聞かなければいけない。
「えっと、ルル様とデレク様と、旅行に行きました。あの……三人で」
三人でというところで、メグはデレク王子に視線を送る。デレクが答える。
「続けて。君の認識している通りでいい」
「はい。山奥の湖に。ルル様がどうしても行きたいっておっしゃって。ルル様の力でそこまで移動して。楽しかったです。それで帰り道で悪鬼に出会って。たぶん移動、瞬間移動しからだと思うんですけど。ルル様がいるからって油断していたんです。ルル様が気づく前にデレク様と私が襲われて。悪鬼はルル様が消してくれて私たちのケガも治していただいて、助けていただいて……」
メグさんの声が小さくなる。それで話は終わりのようだ。
「デレク王子の認識は違うと?」
レンがデレク王子に尋ねる。メグの話に不自然な点はないようにレンには思える。しかし違うのだろう。
「そうだ。行ったのはマーガレットも含めて四人だ。悪鬼に襲われた。一撃で私とマーガレットがやられた。だが、致命傷は避けた。おそらく精霊の加護だ。その後すぐにメグが襲われた。メグの悲鳴でルルが気づいた。次の瞬間に悪鬼は消えた。ルルがメグに駆け寄る。メグはもう死んでいた。胴体がちぎれて生きている人間はいないだろう」
メグの表情が曇る。
「だけど……」
メグが反論しようとするが言葉が続かない。それを無視してデレク王子は続ける。
「私はマーガレットの方へ這って近づいた。息はかろうじてある。だが私の力では治せない。私はルルほど精霊はうまく使えない。ルルはメグのところで呆然としている。私はルルにマーガレットを助けるように言った」
レンは話を聞きながら考える。デレク王子はメグを生き返らせた代償としてマーガレットが消えたと主張するようだ。それは妄想か真実か。それを証明することはできるのか。
デレク王子が両手を見る。
「次の瞬間、マーガレットが消えた。そしてメグが咳き込む声がした。信じがたかったが、メグが生き返ったんだ。理解はすぐにできた。代償だ。精霊の力を行使したことの。あのあと特別に凶悪な悪鬼は現れなかった、山も湖も消えなかった。ただマーガレットが消えた」
「だけど私は、マーガレット様のことは何も覚えていません……」
メグが震える声で言う。
「そうだ。誰も覚えていない。ガザの人間も、マーガレットの故郷のガルシアの人間もだ。記憶だけではない、彼女が生きていた記録もすべて消えた。一人の命と引き換えに一人の人間が抹消された。それが代償だ」
「それで、デレク王子は精霊の力で消えた以上、精霊の力で取り戻せると考えているわけですね」
「できるし、やってもらう。そのために『欠片』も用意した」
デレク王子は視線を中空に送る。
「ルル。聞いるだろう? 聞いていなくても認識しているだろう? 取引だ。協力しろ。ルルと『欠片』の力でマーガレットを復活させろ。いやとは言わせない。できないというのならメグを代償に『欠片』の力で私がマーガレットを生き返らせる。勝算は下がるが私はやるぞ」
デレク王子はここにいないルルに呼びかける。
ルル王女はDDの薬で眠らせている。いまはまだ意識はないはずだ。
「協力してもいいけど。ほんとにそれにそんな力があるの?」
当然のようにルル王女が現れる。
レンは表情には出さないが衝撃を受けている。ルル王女の力を甘く見ていた。いろいろやったことは全部無駄だったようだ。
「『星の欠片』の力は本物だ。そこの男はこれだけで人を生き返らせようとしているぞ。いや、これだけではサイズが足りないらしいが。ああ、失敬。『欠片』を使って調べさせてもらった」
「ふうん」
ルルがメグに近づく。
「ルル様……」
ルルは不安そうなメグの頭をポンポンとして抱きしめる。
「あなたは何も心配しなくていいわ。私が何とかするから。私が元凶なんでしょう?」
ルルは最後の言葉をデレク王子に投げかける。私も何も覚えていないけどと、ルル王女は誰にも聞こえない声でつぶやく。メグから離れデレク王子に近づく。
「見せて」
デレク王子が『星の欠片』取り出す。大きさはアーモンド大のまま変わっていない。
ルル王女はそれを手に取り、まじまじと見てしばらく考える。
「無理ね」
あっさりと告げて、『欠片』をデレク王子に返す。
「兄さんの話を信じるとして、マーガレットさんを戻すことはできないわ」
「どういうことだ」
デレク王子のトーンが下がる。
「私の感覚の話だから説明しにくいけど。できることはできると分かるわ。それがないからできないってだけ。理屈を聞かれても答えようがない」
「『欠片』の力は理解できているか?」
「分かるわよ。すごいわね、それ。不老不死ぐらいなら叶えられるわ」
これまたルルはさらりと言う。オクセアの願いはかなうようだが、この時すでに彼はハガネに殺されている。
「多分、問題は私がマーガレットさんのことを全く知らないことだと思う。ほんとにいたのその人?」
「いたと言っても意味はないのだろう。この国からマーガレットの花が消えたことはどう説明する?」
「知らないわよ、そんなの。いずれにしても、マーガレットという女性をゼロから作り出す感じだから。生き返らせるより難しい」
「違いがあるのか?」
レンが話に割り込む。
「情報がないという違いね。肉体もあったほうが楽かな」
どこからどこまでを生み出すかという話か。レンの思っていた通り、ガザで彼の願いをかなえることも難しいようだ。
「で、どうするの? 別に試すのはいいわよ。たぶん無理だけど」
「やってもらうし。成功させてもらう。手段は問わない。犠牲もいとわない」
デレク王子が言葉をきる。
「マーガレットの代償で生き返った体だ。肉体はメグで十分だろう」
メグという言葉が聞こえた瞬間にレンは銃を抜き出し撃つ。この方法でレンの願いが叶わないと分かった以上、デレク王子の好きにさせる理由は何もない。DDがメグを抱えて後方に飛ぶ。銃弾が空中で止まっている。レンはナイフ取りだそうとするが動けない。DDもひと跳びして着したところで動きを止めている。
「邪魔をするなと言っただろう。今のこれはルルの力だ。『欠片』に命令するよりも早いな。無意識化で障害を排除している」
ルル王女の動きも止まっていることをレンは視界の隅でとらえる。デレク王子は『星の欠片』でルル王女を支配下に置いている。
デレク王子が告げる。
「ルル、一番成功率の高い方法を試せ。犠牲は厭わない」
「わかったわ」
ルルは先ほどと異なるトーンで返事をする。そのまま動きを止める。最善策を考えているようだ。
「……そうね。それじゃ、デレク兄さん、さよなら」
え、というデレク王子の声は音になる前に消える。デレク王子も消える。
レンは確かに、デレク王子がいたその場所に女性の姿が現れたように思う。しかし完全な像を結ぶ前にまた消え、デレク王子が戻ってくる。デレク王子の持つ『星の欠片』が強く輝いている。
「なんのつもりだ!」
デレク王子が怒声をあげる。
「一番成功率の高い方法を試したのよ。デレク兄さんの肉体と記憶を使うのが一番いいわ」
デレクの表情が固まる。ルル王女が中空を見たまま止まる。また何か考えているようだ。
「いえ、それ以外に方法はないわね。メグの体にはマーガレットさんの情報がないわ。使うならデレク兄さんの体よ。もう一回はできるわ。やる?」
傍目にも『星の欠片』が小さくなっていることがわかる。望み通り復活させてそれをキャンセルしたのか。無駄なことに使いすぎだ。
レンは体の自由が戻っていることに気付く。DDも自由を取り戻したようでメグさんを連れて教会の入り口まで退避している。デレク王子の願いを叶えるための存在となったルルにとって、レンもDDもメグも必要のない存在だ。
デレク王子は固まったまま動かない。自分の存在と引き換えか。それは取りたくない方法だろう。
「それが嫌なら私の存在と引き換えでもできるかもしれないわ。いえ、無理か。それだとマーガレットさんは完全な形ではもどらないわね」
その言葉にデレク王子が迷いの表情を見せる。ルルを犠牲にすれば不完全な恋人が戻る。その二つを天秤にかけるつもりだろうか?
しかしそれはレンにとっての許容範囲外だ。
レンはデレク王子の死角から近づく。デレク王子はこちらを気遣う余裕はない。
レンはデレク王子の関節をきめてデレク王子が取り落とした『欠片』を奪う。
「何をする」
レンはデレク王子を無視して後方に下がる。『欠片』の力を解除する。
ルル王女は意識が混濁しているようだ。左右に少しふらついて後に倒れる。DDが駆け寄り倒れるルル王女を支える。メグさんも一緒にルル王女を支えている。
「もうあなたには使い道がないようなので私が有効に使わせてもらいます」
「何を言う! 私はマーガレットを取り戻すんだ! 返せ!」
「自分の存在と引き換えに取り戻しますか? 先ほどあなたは拒否したようですが。それともルル王女と引き換えに? だけどそれは私には容認できません」
「元凶はルルだぞ! これは償いだ!」
「どちらにしてももう手遅れです」
レンは手にした『星の欠片』を掲げる。欠片はすでにデレク王子の手から離れた。これ以上はデレク王子にできることは何もない。
レンが視界の隅に人型を捕える。反射で銃を構えてそちらに向き直る。
デレク王子が最初に立っていた祭壇の上に黒い人型の何かがいる。立体感がない真っ黒の存在。レンの知識に該当するものが見つからない。
「DD!」
「わかんない」
DDに聞くが不明。DDの各種センサで走査した結果、何も検出されないということ。放射も反射もなし。つまりあれには実体がない。十中八九悪鬼だろうが、レンにはこれまでのものとは違うように思える。
レンが銃を放つ。人型の頭と心臓に着弾するが、銃弾はそのまま暗闇に吸い込まれるように消える。背後の壁には着弾しない。銃弾は暗闇に吸い込まれたようだ。効いている様子もない。
黒い人型が動く。立体感がないのは光をすべて吸収しているからだろう。銃弾も吸収した点からみても、疑似的なブラックホールのようなものとレンは仮説をつける。
「あれは先ほどの代償ですか?」
「そうでしょうけど、何なのかとかは聞かないで。わからないから」
レンの問いかけにルル王女が答える。意識はあるようだがDDとメグに支えられてやっとったっている状態だ。
レンは近づいてくる影から離れるように移動する。DDとメグもルル王女を連れてレンに続くが、デレク王子だけ影を見つめたまま動かない。
「マーガレット」
デレク王子の小さなつぶやきが耳に入る。
「マーガレット!」
叫び、影に近づこうとする。
「王子、危険です! 離れて!」
デレク王子にはレンの声が聞こえないようだ。影を見つめたまま手を広げて近づく。影も王子に向きを変える。
銃弾は影に吸い込まれて消えた。では、人の場合はどうなる?
レンは考えるまでもない結論を出す。同じように吸い込まれて消えるだけだ。レンはデレク王子の腕に向かって銃を撃つ。銃弾は王子の左手をかすめる。
「つっ」
痛みでデレク王子が我に返る。
「王子離れて」
今度はレンの言葉に素直に従い、デレク王子は影から離れる。
レンは魔法銃に持ち替え弾丸を放つ。銃弾と同じく影に吸い込まれるように消える。
影が動きを止める。数秒停止してまた動き出す。
「やばいわね。あの黒いの、精霊を吸収しているわ」
ルル王女がつぶやく。
「狙いは霊脈ね。このままだと精霊全部取られてガザは滅びるわよ。あなた止めなさい」
「守護精霊ではなんとかできませんか?」
「吸収されそうだからやめた方がいいと思う。別の力で何とかしなさい」
ルル王女が無茶なことを言う。しかしその通りだろう。レンが何とかいけない。こうなるまで放置したのはレンの判断ミスだ。レンは『星の欠片』を使う気はない。これはレン自身の目的のために使う。
「おう。見つけだ。どうなってるんだ」
エミリオとハガネが合流する。
「『星の欠片』は回収した。あれを倒す。それで終わりだ」
レンは黒い影をさして言う。
「なんだあれ? なんか変だぞ?」
エミリオが影を見て困惑の声を上げる。空間の中に平面があるように見えるから混乱している。
「悪鬼の一種だろう。なんでも吸収するようだ。このままだと精霊も精霊の霊脈も吸収されてしまう」
「それはまずいな。トゥーン」
「なにー?」
レンの言葉を聞き。エミリオはトゥーンを呼び出す。頭脳労働担当を増やす。どこからともなくトゥーンが現れる。
「どうにかしろ」
「無茶ぶりやめてよ。封印しろってならできるけど。悪魔の他にもう一つ宿したいの?」
相棒の頭脳労働担当がいまいちなので、エミリオはもう一人に問いかける。
「それは断る。レン、どうするんだ? 考えろ、頭脳労働担当」
レンは言われなくても考えている。
黙って影を見ていたハガネが声を出す。
「あれの元はなんだ?」
「人型なんだから人じゃないのか?」
ハガネの質問にエミリオが答える。
「マーガレットさんらしいわ」
ルル王女が答える?
「マーガレット? ああ、そういうことか?」
エミリオはなんとなく理解する。あれがデレク王子が言っていたマーガレットさんということか。なんとも不思議な見た目をしているということは復活の儀式はうまくいかなかったのだろう。
「アレが人だったなら首をはねれば倒せるだろう?」
ハガネが当然とばかりに言う。レンがハガネに向き直る。ハガネは機嫌がよさそうだ。目的は達成したらしい。収穫も上々といったところか。
「それはそうだが。よし、ハガネ倒してみろ。礼は弾む」
「新しい刀を二本」
「わかった」
レンが即答する。ハガネはおそらくなにも理解していないが説明するより体験させた方が早いだろう。
ハガネが駆け出す。
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