第1話 それぞれの到着(ハガネ)
(ハガネ)
高さ三メートルほどのオブジェが城の外に運ばれる。この国の守護精霊の乗り物だ。守護精霊は普段は城でその名の通り国の守り神をしているが、この祭りの間だけ実家である教会に戻る。教会は城下町の一角にあるので、この移動は四時間ほどで完了する。その後教会で歓迎会を行うまでが今日のイベントである。
精霊が何なのかはよくわからないが、ハガネはそこかしこに気配を感じている。ハガネは実際に城の人間がそれらしい術を使っているのもその目で確認しているので実存を疑ってはいない。ハガネは神輿からも強い存在を感じている。守護精霊は実際に神輿に乗って移動するようだ。
毎年行っているだけのことはあり守護精霊の帰省は滞りなく行われている。それぞれが自分の役割を理解している。最近、悪鬼が頻繁に現れているため警備が多く置かれているが、普段に比べて警備に緊張した様子はない。守護精霊の近くでば何も起きないということで安心しているようだ。
神輿は丘を下り終えて街中に入る。人が集まって盛大に騒いでいる声が聞こえる。
「ハガネ、もう戻っていいぞ。夕方まで休憩だ」
ハガネは警備の仲間の声に従って宿舎に戻ることにする。彼は人が多いところは得意ではない。
ハガネは視線を感じて振り返る。街のほうから二人分の視線。ハガネはレンとDDだろうとあたりをつける。望遠鏡か何かでこちらを見ているのだろう。DDの虫がうろちょろしているのでハガネがここにいることをレンは把握しているはずだが何の連絡もない。ハガネは情報提供の見返りとして仕事を手伝えとレン言われてここにいる。ハガネとしてはレンの目的はどうでもいいのだが、まだ肝心の情報を得ていないので動けないでいる。ハガネが自力で探すよりレンからの情報を待つほうが確実である。
ハガネが城の中を歩くと周囲から好奇の視線を向けられる。周りは城の役人と警備の兵隊。制服と防具の違いはあるが皆同じ意匠の恰好をしている。その中で一人だけ別の格好をしているため目立つようだ。ハガネは特に気にはしない。視線だけで実際にハガネに絡んでくるやつはいない。売られた喧嘩は買うつもりだが、王宮の警備をしている者にそんな馬鹿なやつはいないだろう。
ハガネが正式に城に入ったのは昨日からで、肩書は臨時の警備担当。
ハガネがレンから情報を得たのは先月のことだ。金も伝手もないのでガザまで来るのに時間がかかったが、祭りの前までに来いという話だったので問題ないと考えている。
ガザには精霊という存在がおり、人の生活には欠かせない。電気や魔術といったものと同じくこの地域の生活の基盤となっている。その精霊にはいい面もあれば悪い面もある。精霊の悪い面、それが悪鬼だ。
ハガネが昨日聞いた話では、悪鬼とは負のエネルギーが具現化したり、何かに取り付いたりしたものだ。火事や地震のように自然災害の形をとることもあれば、生物を変質させ凶暴な化け物に変えたりもする。二日前にハガネが倒したのは悪鬼に取りつかれ凶暴化した犬だった。
ニ日前、レンの指示を受けたハガネはようやくガザにたどり着いていた。レンの指示では祭りが始まる前までという指定で、街の様子を見るにまだ祭りは始まっていないようだ。ハガネは目的の人物が城にいるというレンの話を聞いていたので、どうにかして城に入ろうかと画策していた。具体的には城の周りをウロウロしていた。そうしたところ不審者として城の詰所に連行された。
ハガネが武器を携帯していなかったからか、いきなり牢獄ということはなく、とりあえず詰所で事情聴取となる。城壁に隣接する形で衛兵の詰所がある。いちおうハガネは城への侵入は成功したと言える。このあと何か起きたとして、それを何とかするのはレンの仕事だ。
事情聴取が始まる。名前、出身、ガザに来た目的など聞かれたことにハガネは普通に答える。目的の人物が城にいるということは聞いているが具体的に誰かまではレンはハガネに明言しない。ハガネにレンの仕事を手伝わせるためにそれ以上は成功報酬としている。そういったやり取りは過去に何度かあり、レンはすべてにおいてハガネの要望に応えている。情報の質は一級品だ。なのでハガネは基本的にレンの指示にはしたがう。しかし目的の人物が近くにいるのであれば自分で行動を起こしたくもなる。ハガネがそうこう考えているうちに悪鬼が現れる。
グアアアアアアアアという凶暴な鳴き声が城中に響き渡る。詰所に一瞬で緊張が走る。様子を見に行く者、武器を取りに行く者、それぞれが動く。
まだ事情を把握していないハガネは椅子に座ったまま様子を窺う。聴取の担当官が精霊を通じてどこかに連絡している。通話を終えたタイミングでハガネが聞く。
「なんだ今のは?」
「悪鬼だ。といってもわからんか。化け物だ。危ないから動くなよ」
そう言って聴取の担当官も出て行く。担当官が部屋を出てすぎにハガネも外の様子を見に行く。
外は兵士らしき人々があわただしく動いている。
「甲クラスの悪鬼だ。警報を出せ」
叫び声にかぶさるように警報が鳴り響く。
誰もハガネに注意を向けないので気にしないで叫び声の方へ進む。建物を一つ隔て向こう側に人が集まっている。その人々よりも頭一つ大きな生物が見える。ハガネは人垣を回り込み悪鬼と呼ばれたものの全身が見える位置に移動し観察する。
悪鬼の体長は三メートル以上。四足歩行。無駄のない筋肉質の体躯。長い顔は犬のように見える。全身は黒。光をすべて吸収しているかのように真っ暗の闇。そこから黒い蒸気が立ち上っている。正気を失った二つの眼だけが黄色く光る。
悪鬼は鳴り続ける警報に意識を向けているようだ。耳を動かし警戒をしている。しかしそれが無害とみるや視線を周囲の衛兵に向ける。集まっている衛兵は軽装の者がほとんどである。みなが距離をとって様子を伺っている。
「全員防壁をはれ。防御に徹しろ」
「軍部は来ないのか。親衛隊でもいい」
指示が飛ぶ。今そろっている人間では太刀打ちできないようだ。
なめるように周囲を見渡す悪鬼。
来る。そう感じたので、ハガネは駆け出す。
二拍後に悪鬼も衛兵に向かって駆けだす。
三メートルの獣の全力疾走。しかしハガネの方が速い。衛兵は突進してきた悪鬼に防御の結界を張る。耐えられるのか不明だが、問題ない。衛兵に食らいつこうと口を開けた悪鬼がこちらに気付く。遅い。ハガネは悪鬼の懐に入り込む。抜刀。逆袈裟に切り上げる。悪鬼の頭が高く舞い上がる。胴体は駆け出した勢いのまま進み衛兵の中に突っ込む。
ハガネは群衆の外側に頭が落ちるのを見る。胴体は兵士の群れに突っ込んだまま崩れ落ちて動かない。
静寂が広がる。
ハガネは悪鬼の頭も胴体も動き出さないことを確認して刀をしまう。案外あっさりしていて拍子抜けである。でかいだけか。黒い霧が立ち上がり、悪鬼の大きさが縮んでいく。
「あんたすごいな、いつの間に剣なんかもって……あれ?」
詰所にいた衛兵が声をかけてくるが、ハガネが何も持っていないことに戸惑っている。
「今のが悪鬼か?」
ハガネは戸惑う衛兵を無視して聞く。
「ああ、そうだが。いや、切ったように見えたんだが……」
衛兵がそれ以上は聞いてこないのでハガネは刀のことは教えないでおく。
ハガネは理屈を知らないが、ハガネの左腰付近には異空間が存在する。ハガネの妹が言うには非存在の空間にアクセスしているらしい。しゃべる猫は近傍位相空間といっていた。平行世界とも言われたことはある。何れもしてもどれが正解かはわからない。ハガネにとっては理屈はどうでもいい。便利に使えるので深く考えずに主に武器を収納するのに使っている。一見手ぶらになるので今回のように捕まった時は役に立つ。
「とにかく部下を助けてくれた礼を言おう。ありがとう」
ハガネは別に人助けのために斬ったわけではない。あの化け物が倒せるものか試しただけである。
悪鬼は大型犬の大きさになり黒い霧の噴出もとまった。
「犬か?」
「ああ、警備で飼っている犬だ。憑りつかれて悪鬼になったんだ」
先ほどはいなかった装備の異なる兵士が何人か見える。専門の訓練を受けている動きをしている。軍隊の人間だろうか。
「とこであんた、相当強いようだな。ここには何しに来た? 祭りか?」
「人に会いに来た。そいつは祭りに合わせて来るらしい」
レンでありレンが情報をくれた仇のことだ。
「そうか……」
兵士はなにやら思案しているのでハガネは付け加える。
「大した用事があるわけじゃない。それに宿が決まっていない。寝床を提供してくれるなら手を貸す」
「おお、そうか。人手が足りなくて困っていたんだ。待ってろ。話をつけてくる」
こうしてハガネは警備部付で城に配属された。その後、目に付く悪鬼を退治して回っていたため、警備の人間からはそれなりの信頼を勝ち取ったようだ。
ネズミ、猫、何かの花、りんご、壺、鏡。ハガネがこの二日で遭遇した悪鬼だ。どれも小さくて手ごたえのないものばかり。後から聞いた話では最初に遭遇した悪鬼はかなり強いほうだったらしい。
「悪鬼は大きく甲乙丙の三種類に分類される。乙と丙は俺たちで退治する。丙はまあ害虫みたいなものだから市民でも対応できる。甲は昨日見た犬のやつだ。俺たちでは対応できないから軍部に退治してもらう。ふつうは街にでることはない。守護精霊がいるからな。だいたいは郊外にでて旅行者が襲われる。しかしそれも数年に一回のことだ」
先日、ハガネが犬の悪鬼を倒した後に話をしたのは屋外警備の責任者だったそうだ。みんなは隊長と呼んでいる。その隊長がハガネにいろいろと教えてくれる。
「けど昨日は城に出ていたぞ?」
「最近様子がおかしいんだ。原因は分からん。城や街に出ることは異常だ。俺は甲種悪鬼を生まれて初めて見た」
思い出したのか体調が嫌な表情をする。
「まあ軍部が来たからそう怖がる必要もない。ガザは今はもう戦争はしていないから悪鬼対策が軍部の主な仕事だ。対悪鬼用の装備とか武器をいろいろと持っているらしい。普通に体力もいるが精霊の扱いもうまくなければ入れない。俺は精霊の操作がイマイチだったから入れなかった」
先日の悪鬼の一件以来。城は警戒態勢だ。もともと最近悪鬼が増えて問題だったらしいが、城に甲種がでてから一気に警戒レベルをあげたそうだ。ハガネも朝から城内の見回りの任務を受けている。
「このタイミングで帰還祭というのも最悪だな」
警備が嘆息する。
「そんなに違うものか?」
守護精霊が近くにいると悪鬼は現れないと、ことあるごとに聞く。
「違う。全く違う。家の中に害虫がいたらいやだろ? 同じように守護精霊は悪鬼というマイナスな要素を近くに置きたがらない。普通は城では丙種の悪鬼すらでてこない。俺たち城の警備は悪鬼対応の実戦経験が少ないんだ。城にいるのは主に人用の警備だ。だから今は悪鬼対応に経験のある街の警官をだいぶ城にいれている。そしてさらに昨日からは軍部も常駐している。異常事態だ」
城の警備と警官は四人一組になって見回りをしている。それでも先日のような甲種悪鬼が出てきたら対応できないらしい。ハガネも最初は四人組に組み込まれていたが、無視して悪鬼を狩っていたら何も言われなくなった。今は一人で自由に動かせてもらっている。
隊長は見回りには参加せずに全体の管理をしている。今日は朝から行動を共にしている。おそらく俺の監視役だろう。
「しかし、守護精霊の不在以外にも何か原因があるはずなんだ」
隊長が頭を抱えている。警備の責任者としての責任もあるようだ。ハガネにはその辺の事情がレンがここにいる理由と関係があると見当をついているが隊長には話さない。ハガネにとってはどうでもいいことだ。
「軍っていうのはあいつらか」
遠くに昨日から見るようになった制服の集団がいる。
「そうだ。半分くらい城の警備にまわしたらしい。普段は街の外にいる」
「彼らならあの悪鬼も退治できたと?」
鍛えているのは分かるがそれほど強そうには見えない。
「あんたみたいに瞬殺ってわけにはいかないだろうけど、精霊の扱いも、専用の装備も持っている。何かやっつける方法をもっているだろう」
経験があるというのならそうなのだろう。しかし彼らはハガネの敵ではない。仮にハガネが目的のために行動を起こしたとしても邪魔はされないだろう。ハガネは軍部から興味を失くす。
「まあ、俺は軍よりあんたを頼りにしているけどな」
ハガネはそれには答えない。ハガネは悪鬼を退治しに来たわけではない。
ハガネは二日ほど城をうろついたが、情報がなく対象が誰なのかを分からないため行動を起こせないでいる。レンからの連絡待ちだが、気持ちははやっている。このまま待つだけというわけにもいかない。
「城の中には入れないか?」
「中か? たしかに、今の状況なら悪鬼が城の中に出ないとも限らないか。簡単に内部の作りは知っていたほうがいいだろうな」
しばらくすると許可が出たということで城の中に入る。
ハガネは別の領域で城に入ったことは幾度かあるので豪華な内装には驚かない。興味もない。刀を振り回しても支障がないほど広いということだけを頭に入れる。そして五感を使って城の構造を読み取る。
「三階から上は王族の居住空間で、さすがに俺の立場じゃ入れない。近衛兵の領域だ」
「悪鬼が出たらどうするんだ?」
「近衛兵は大半が軍部上がりだからそれなりに悪鬼への対応はできる。といっても甲種悪鬼がでたらどうしようもないかもしれない。ヤバそうだったら上がって退治してくれ。警備はいるが鍵がかかっているわけじゃない」
「勝手に上がってもいいのか?」
「結果を出せば文句はいわんさ。力づくであんたに勝てるやつはここにはいないだろう」
そうだろうと体調が視線で問う。その通りだがハガネは無視する。
一階を一通り回り、二人は二階に上がる。部屋をいくつか見る。会議室。客室。特に変わったところはない。ハガネは探りを入れる。
「この城には何人くらい住んでいるんだ?」
「王族と、一部の執事とメイドと近衛兵。それに滞在中の客と高級官僚が少しといったところか。三十人くらいじゃないか」
ハガネの目的の男はおそらく中年の男だろう。そんなやつはいるかと聞いてみたいが、ハガネはうまい説明が思いつかない。そいつから情報を引き出した上で殺したいとは言えない。
廊下の向こうから兵士を引き連れた男が歩いている。三十代くらい。ハガネの意識が鋭くなる。目標と年齢は近い。隊長がハガネを通路の端に下がる。ハガネもそれに従う。
「あれは皇太子さまだ。今は軍部のトップだ」
ハガネは目標が王族という可能性について検討する。ハガネの目的、盗賊集団『劇壇骸蝕』のメンバー。過去にハガネが殺した『骸』のメンバーはどれも身分の低い男だった。
「王族ってのは何人いるんだ?」
「今、城にいるのは……王と王妃、皇太子様が二人に王女様だ」
ハガネがあったのは昨日見かけた王女と今すれ違った皇太子だけだ。もう一人の皇太子にはまだ会っていない。
ハガネが二階を一回りして階段に戻ると、ちょうど初老の執事長が客を連れて三階をのぼっているところに出くわす。
執事長は六十過ぎのおじいさんだ。警備として働くとなったときに面通しはされた。この城の一番の古株だそうだ。執事につれられているのは金髪の大柄の男。整った顔と身なりのいい服装。しかしそんなものには目に入らない。右手の真っ青な包帯を巻に人の注意は向かう。そんな特異な格好の男をハガネは世界で一人知っている。隊長は執事長に会釈する。ハガネは執事長を無視する。金髪の男、エミリオと一瞬視線を交わす。エミリオの方もハガネには反応しない。
「執事長と一緒にいるのは誰だ?」
ハガネは通り過ぎた後に隊長に聞く。誰かは知っているがここにいる理由がわからない。
「ゾラーという隣国の王子と聞いている。詳しくは知らないが昔馴染みらしい。近くにきたので城に立ち寄ったそうだ」
だとしたら偶然ここにいるのだろうか。ハガネは少し警戒する。王族の関係者ということなら少し厄介だ。
執事長とエミリオはそのまま三階へあがる。客人として城にいるのならまた会うことになるだろう。
邪魔をしないならそれでいいとハガネは思う。
ハガネが警備宿舎の部屋に戻ると、当たり前のようにDDがいる。
「あ、ハガネ、遅かったね。元気?」
DDは黙読していた冊子から顔を上げる。入居した時に配られた城の案内だ。ハガネは開きもしていない。DDは情報収集が生き甲斐なので、本の類があればとりあえず目を通す癖がある。部屋の匂いの感じからDDが部屋に来たのはついさっきだとハガネは推測する。おそらくハガネが宿舎に戻る時間に合わせたのだろう。
どうやってここに入ったのかという疑問はDDにとっては無意味だ。この程度の城の警備とこの部屋の鍵などDDにとっては何もないのと変わらない。
「レンが心配していたから見に来たよ。目標は見つけた?」
「まだだ。どんなやつだ?」
「お医者さん。今の名前はオクセアさん。当時の名前はカトス・グラさん。年齢不詳。見た目は三十代くらいかな。そうだね。痩せてて髪が長くて、このくらいかな」
とDDは自分の胸の位置を示す。
やせた髪の長い男か。城で見た記憶がない。
「基本的に部屋から出てないから部屋に行ったほうがいいよ。あとはケガとか病気の人がいたら往診に行ってるからそのタイミングが遭遇のチャンスかな。部屋は二階の西側。階段のすぐ横ね」
西側、二階、階段の横。十分だ。
「あと、今夜は動かないでほしいってレンが」
「……」
「お願い」
ハガネは頷く。情報をくれた礼だ。
「わかった。どうせ今夜は街のほうに行く予定だ」
「街?」
「城にいた悪鬼は昨日ほとんど倒したから街の警邏をすることになった。街の状況もよくないらしい」
「そうなんだ。悪鬼って強いの?」
DDが冊子を置いてハガネに近づく。
「会ったやつはそうでもなかった。生き物の悪鬼は首を落とせばだいたい倒せる。そうじゃないやつは少しややこしい」
悪鬼の元になったものを殺す、もしくは壊せば悪鬼は消える。生き物なら簡単だ。殺せばいい。植物はだいたい焼くそうだ。無生物は動かなくなるまで壊すしかなく、これが一番厄介ということ。ハガネが昨日、城の悪鬼を退治して回った時に聞いた話だ。
「ハガネならどんなのが来ても勝てそうだけど」
言いながらDDはハガネの手をとり脈を診る。
「健康状態は良好と」
ハガネはDDからなにかしたげな視線をうけるが、DDはなんもせずに手を離す。
「南町にね、月見亭いうカフェがあるからその辺も警備お願い」
言いながら窓際へ移動する。
「覚えておく」
「ありがとう。誰か来たね。またね」
と言ってDDは窓の外へ姿を消す。ハガネは窓に近づき外を見るがDDの姿は見えない。屋根にでも上がったかのだろう。相変わらず身軽だ。
「ハガネ、街の警邏にいくぞ」
入れ替わりで隊長がドアを開け部屋に入ってくる。
「どの辺を見て回るんだ?」
「南町の一帯だ。守護精霊のいる西町から離れているから注意しろ」
DDが言っていた場所だ。これもレンの仕込みという考えがハガネの頭をよぎる。どちらでもいい。どちらにしてもハガネにとっては敵が出るならちょうどいい。彼はもはや立派な戦闘狂だ。
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