第3話 新しい日常
父さんと母さんの葬式から一週間が経った。
いつまでもグズグズしてる訳にはいかない…というのは僕も分かってるけれど、どうしても父さんと母さんがいた日常のことを思い出すたび泣きそうになってしまう。
僕と美香はもといた家で二人暮らしている。
父さんと母さんは生命保険に入っていたので、資金面に関しては全く問題ない。
「美香ー?今日のご飯どうする?」
「んーと、カレーライス!」
カレーか…
冷蔵庫の中を見渡し、材料が揃っているか確認する。
人参と、玉ねぎ、じゃがいも…えっとお肉は…牛しかないか。
そういえば、関西ではカレーに牛肉を使うらしい。
たまには、ビーフカレーなんてのもいいかも。
ネットで『カレー 作り方』と調べてみた。
具材をゆっくりと煮込み、ルーをいれる。
とろみが出てきたので、皿にご飯を盛りつけ、ルーをいれたら完成!
「出来たぞー!」
美香がこっちに向かって走ってくる。
だが、カレーを見るたび不機嫌な顔になってしまった。
「辛いのはやーやなの!」
そっか、忘れてた…
美香はまだ辛いの食べれないんだった。
無理やり食べさせるのもあれなので、近くのスーパーまで行って『プリキュアカレー』を買いに行った。
男子高校生が『プリキュア』だなんて…
中に入っていた袋を湯煎し、皿に盛りつけた。
「「いただきまーす!」」
自分のカレーは冷めてしまったが、普通に美味しかった。
そして何より、美香が喜んで食べてくれたのがうれしかった。
「カレーの美味しそうな匂い…」
そういって結実が部屋に入ってきた。
「お前、勝手に人んちに入ってくんなよ…」
「いいじゃない、隣なんだから。」
結実の家は僕の家の隣にある。
葬式が終わってからというもの、何故か結実は一日に一回は勝手に人の家に上がり込んでくる。
「そーいえば裕介、ちゃんと自分の部屋片づけてる?」
「いや、それは何というか…」
まずい、以前は部屋が散らかっていると母さんに注意されたものだが、今は母さんがいないので散らかり放題だ。
「ま、今から裕介の部屋、見に行くからいいんですけどー」
そういって結実は階段を昇り始めた。
「ちょっ、まっ…美香、おとなしく食べとけよ。」
美香がきょとんとした顔でこちらを見つめる。
急いで部屋に向かった時には時すでに遅し、結実が僕の部屋を片付け始めていた。
「やめろって…」
僕がそういってもやめる気配がない。
「この本棚も整理しないとね…」
そういってベッドの隣にある本棚に手を伸ばした。
まずい…あそこには禁断の書が…
「そこはやめろー!」
僕が止めても一向にやめる気配はない。
ふと、なにか薄い本が落ちてきた。
まさかあれは…
「やめろ、見るな!」
結実がパラパラとページをめくる。
しかし、どのページを見ても女の人の裸が印刷されている。
そう、俗に言うエ〇本である。
「うわぁー」
結実がドン引きしたような目でこちらをみた。
終わった。僕はそう確信した。
ーーー
「また結実ちゃんと一緒にお風呂入りたい!」
「そうだねー美香ちゃん。
裕介、あんたのぞき見してないでしょうね。」
「してねぇよ!」
風呂から出て開口一番それかよ…
「んじゃあ、そろそろ帰るね!
バイバーイ美香ちゃん!」
「うん、バイバーイ!」
え、僕にはないの、バイバイとかまた来るねとか。
相手にされては無いが一応玄関先まで見送ってやった。
まぁ、嫌な顔されたけどな。
「さてと、寝ますか。」
玄関から出ようとしたとき、ふと長い体が見えた。
慌てて見上げると、そこには父さんがいた。
「父さん!」
すると、火葬場で会った母さんのように消えてしまった。
僕と家族の奇跡 四季 @ontaikikou
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