第54話 林間学校part2

太田と同じ部屋だなんてマジで無理だ。

しかもなぜか、馴れ馴れしくしてくるし。

部屋は男子6人だ。

俺は当然、他の奴と話すことにした。

幸い、同じバスケ部の奴がいる。

これで太田が割り込んでくる余地はない。


俺たちはホテルの玄関へ向かった。

小学生たちが集まっている。

高校生の俺たちは、これから山登りをする小学生たちの引率することになっていた。


「はーい!今日、みんなと一緒に山を登ってくれる、お兄さんお姉さんを紹介しまーす!」


ジャージを着た、若い女の先生が元気よく言った。


「中千穂小学校のみんな!こんにちは!私は中千穂高校の綾瀬未来です!」


未来が前に出て、挨拶をした。

とびっきりの笑顔だ。

まるで太陽のように明るい。

さっきまでガヤガヤしていた小学生たちが静かになった。

キラキラした目で未来を見ている。

やはり未来は、子どもに好かれるんだろう。


「山登りがんばろうね!おー!」


未来が拳を挙げた。


「おー!おー!」


小学生たちも一緒に拳を挙げる。

どうやら未来は、もう小学生たちの心を掴んだようだ。


俺たち高校生は、4人一組になって、6人の小学生を連れて山に登る。

俺の班は、男子は俺と太田、あと女子が2人いた。

女子は田中さんと佐藤さん。

2人とも未来の友達だ。


「えー!カス田と一緒のなの?マジ無理」

「こっち来ないでよ!カス田」


太田と同じ班だとわかると、女子2人はあからさまに嫌がった。

太田は桜田さんと別れて以来、学校中の女子から嫌われている。

今では女子に「カス田」と呼ばれている。

短期間に女子を取っ替え引っ替えして、しかも振り方が酷かったから、女子に嫌われるのも無理ない。

もうこの学校で、彼女を作ることはできない。

まあ……自業自得だ。


「ねえ、小川くん。もしカス田があたしたちを襲ってきたら守ってね」


田中さんが俺のシャツの裾を掴んだ。

未来の友達で陽キャのギャル。

噂では、太田と付き合いそうになったらしい。


「小川くん。バスケ部で大きいもんね。カス田が変なことしてらぶっ飛ばしてね」


佐藤さんが俺の腕を掴んだ。

未来の友達で清楚な大和撫子。

クラスの中の男子が付き合いたいと思っている。


「クソが……」


俺の周りに女子2人がぴったりとくっついているのを見て、太田が舌打ちした。

俺と女子2人は小学生たちと楽しく話しながら、山を登る。

太田は俺たちと離れたところで、ぼっちで歩いていた。




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