第53話 林間学校 part1
俺は今、バスの中で揺られていた。
高校の林間学校で、茄子原高原へ向かっていた。
昨日は愛花ちゃんとゲームを遅くまでやっていたから、めちゃくちゃ眠い。
「圭太!大富豪やろうぜ!」
隣の悠介は相変わらず元気だ。
「すまん。眠いから寝かしてくれ」
「なんだよ。遅くまで何してたんだ?」
「ゲームしてた」
「……なーるほど。綾瀬さんと夜にいいことしてたのか?」
悠介が俺の耳元で囁いた。
「バカ!そんなわけねえだろ!」
バスの中に、俺のでかい声が響いた。
クラスのみんなが、俺の顔を見ている。
前のほうに座っている未来が、振り返ってクスっと笑っている。
「おいおい。圭太。図星だからって興奮しすぎだぜ」
「悠介。お前なあ……」
やれやれと、俺は悠介に呆れた。
「しっかしさ、めんどくせえな。小学生の引率なんてさ」
「まあな」
クラスのみんなは嫌がっているが、俺は実はそんなに嫌じゃなかった。
小さな子の相手なら、俺は愛花ちゃんで慣れている。
「圭太はロリコンだから楽しみだよな」
「はあ?なんで俺がロリコンなんだよ?」
「綾瀬さんの妹さん……愛花ちゃん、だっけ?海ですげえベタベタしてたじゃん」
「いや、まあ、そうなんだけど……」
人から見ると、たしかに俺と愛花ちゃんは異様に仲良しなんだろう。
説明するのが面倒だから、
「そうそう。俺はロリコンだからな」
「マジか……まさかの綾瀬さんの妹狙いだったとは」
やばい……変な勘違いをされている。
「じゃあ、綾瀬さんのほうは俺がもらうから」
「おいおい」
そう言えば、桜田さんとはどうなったんだろう?
告白の返事は来たのかな。
まだ怖くて聞けないぜ……
まあ、時期が来れば悠介のほうから言ってくるかな。
◇◇◇
茄子原高原に着いた。
薄く霧があって、真夏なのに空気が冷たい。
ひんやりするぜ……
小さなコテージが並んでいて、ここで2泊3日を過ごす。
それぞれ6人の班に分かれる。班には6人の小学生が割り当てられて、その子たちの面倒を見ることになる。
小学生たちは近くのいいホテルに泊まっているらしいけど、俺たち高校生は狭いコテージだ。
仲間と協力しながら、小学生たちを人生の先輩として導く。
これも勉強の一環なんだろう。
この高校は割と自由で地元でも人気なのだが、この行事だけはすげえ嫌われていた。
俺は子どもは嫌いじゃない。
ここ最近、ずっと愛花ちゃんと一緒にいるから、小さい子といるのは全然大丈夫だ。
俺が一番心配していることは――
「なんだ。小川と一緒なのかよ」
「それはこっちのセリフだ。太田」
あの最低野郎の太田と同じ班だと言うことだ。
悠介とも未来とも、違う班になってしまった。
それだけならまだしも、太田と同じ班になるなんて、マジでありえない……
「まあ、仲良くやろうぜ」
太田が俺の肩を叩いた。
「俺に触るな……」
俺は太田の手を振り払った。
クソ!最悪だぜ……
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