第46話 海 part4

「おーい!やっと終わったぜ!」


バイトを終えた悠介が、俺たちのところへ来た。

俺たちは、浜辺で砂の城を作っていた。


「おいおい。せっかく海に来たのに、砂遊びかよ」


悠介は呆れた顔をした。


「ぶー!愛花はお城作りたいの!」


愛花ちゃんが怒り出す。


「あと少しで完成だからさ」

「マジか。すげえでけえなあ……」


昼めしを食べ終わってから、俺と愛花ちゃんで1時くらいかけて造った砂の城。

夢の国で有名なネズミーランドのお城がモチーフだ。

何度も崩してしまって、愛花ちゃんに怒られた。


未来と桜田さんは途中で飽きて、シートに寝そべってしゃべっている。

結局、俺一人だけが炎天下でお城造りに付き合わされているわけだ。


「つーか、圭太!なんで裏に来なかったんだよ!」

「あ……すまん」

「すまんじゃねえ!ずっと待ってたんだぞ」


お昼を食べていた海の家で、悠介に15時に海の家の裏に来いと言われていた。

愛花ちゃんのお城造りを手伝わされていて、抜け出すチャンスがなかった。


「悠介くん!お疲れさま!」


シートの上に寝そべった桜田さんが俺たちに手を振った。


「ありがとう~!」


さっきまで俺に怒っていた悠介が、とびっきりの笑顔で桜田さんに返す。

切り替えが素早すぎて怖いぜ……


「おい。ちょっと顔貸せよ」


顔を貸って……ヤンキーかよ。

悠介はぐいっと俺の右腕を引っ張った。


「おわ!待て待て!」

「さっさと来い!」

「ねー!二人ともどこ行くの?」


未来が声をかけてくる。


「ちょっと圭太と男同士の話があるんだ!」

「ダメ!愛花とケータはお城造るの!」


愛花ちゃんが俺の左手を引っ張った。

悠介と愛花ちゃんに両側からぐいぐい引かれて痛いぜ。


「ごめん。愛花ちゃん。すぐに帰ってくるから」


悠介がこんなに真剣に俺と話をしたいなんて、今までになかった。


「ぶー!圭太は愛花のものなのに!」

「こら!わがまま言わないの!」


未来が助け舟を出してくれた。


「だってぇ……」

「ほら、一緒に造ってあげるから」


未来は立ち上がって、お城の近くに来た。


「えー!お姉ちゃん、壊しちゃいそうなんだもん」

「大丈夫!完成させちゃおう!」


愛花ちゃんの頭を撫でながら、未来は俺たちにウィンクした。

早く行け、というサインだ

ありがとな、未来。

俺と悠介は海の家の裏へ行った。


◇◇◇


俺と悠介は海の家の裏にいた。

屋根の影になっていて、他に人はいなかった。


「悠介……話って何だ?」


まあ……だいたい察しはつくけどな。


「桜田さんのことだよ」

「ああ、お前好きなのか?」

「え?なんでわかったんだ」


悠介の好意はバレバレすぎる。

海の家のパフェも、桜田さんのだけたくさん苺を乗せてたし……


「まあいいっか。それなら話が早い。圭太、俺に協力してくれ」

「協力?」

「ふふふ。これさ」


悠介はビーチボールを出した。


「どういうことだ?」

「4人でビーチバレーするんだよ。お前と綾瀬さんが組んで、俺と桜田さんが組むんだ。それで、お前は俺にボロ負けする」

「は?なんでお前に負けなきゃいけないんだよ」

「でかいお前にな、俺が華麗なる勝利を収めて、カッコイイところを桜田さんに見せるんだ」

「おいおい……」

「親友のために、人肌脱いでくれよー」


手を合わせて、俺に頭をペコペコ下げる。


「俺もラブコメの神様から、お恵みをちょうだいしたいぜ」


なんだよ。ラブコメの神様って……

全然意味わかんねえし。

でも、悠介は俺の親友だし、今までにも世話になってきた。

ここは俺にできることをしてやりたい。


「わかったよ。協力する」

「あんがとな!気持ちよく負けてくれよ」

「おう……」

「いざ出陣だ!親友!」


悠介は俺の肩を組んだ。


……上手く行くといいけど。





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