第47話 海 part5

「2人ともお待たせ!」


俺と悠介は浜辺に帰ってきた。


「遅いよ!ケータ!」

「ぶー!ぶー!早くケータを愛花に返して!」


未来と愛花ちゃんがずいっと俺に迫ってきた。


「おいおい。いきなりハーレム展開かましてくんなよ……」


ふーやれやれと、悠介は肩をすくめた。

なんだよ……ハーレム展開って?

さっきの「ラブコメの神様」と言い、悠介はちょっとおかしい。


「俺はメインヒロインだけを一途に愛するからな」

「何を言ってんだよ……」

「今日はよろしく頼むぜ!親友!」


ぽんぽんと、悠介は俺の肩を叩いた。


「2人とも、何話してるの?」


桜田さんが怪訝な目で、俺たちを見た。


「いやいや、何でもない何でもない!」

「ふーん……変なの」


桜田さんは勘が鋭い。

大富豪じゃ、一度も負けたことがないらしい。

男を見る目は終わっているのに……


「今からビーチバレーやろうぜ!」

「えー!」


未来と桜田さんは驚いた。


「せっかくきれいな浜辺にいるんだからさ。楽しいよ!」

「疲れちゃうよー」


未来が不満げな顔をした。

桜田さんも「うんうん」と同調する。

ヤバイ……このままじゃビーチバレー自体ができない。


「いやいや、ビーチバレーって言っても、ただビーチボールを落とさないようにするだけ」


悠介がヒジで俺をつつく。


「そうそう。俺は軽く運動するだけだよ」

「ケータがそういうなら……」


未来は乗り気ではないようだが、


「愛花はビーチバレーやりたい!」


愛花ちゃんはノリノリだ。


ここは愛花ちゃんを上手く使って、


「愛花ちゃんもやりたいってさ」

「うー!愛花やりたい!」


未来と桜田さんは顔を見合わせた。


「じゃあ……私たちもやるわ」


よし。これで第一関門クリアだ。


◇◇◇


「ケータ!そっち行ったよ!」

「あ!間に合わない!」


ビーチボールが俺の頭上を通りすぎる。

俺は砂の上にズッコケた。


「ふふふ。ケータ、バスケ部のなのに情けないな!」

「クソ!お前強すぎるんだよ……」


俺、未来、愛花ちゃんのチームと、悠介と桜田さんのチームに分かれた。

砂浜に一本の線を引いて、2チームが向かう。

交互にビーチボールを打ち上げて、砂にビーチボールが落ちたほうが負けだ。


「ぶー!ケータ!しっかりしてよ!」


愛花ちゃんが倒れた俺をポカポカ叩いた。


「ごめんごめん」

「ケータ……大丈夫?」


未来が俺に手を差し出した。


「ありがとう……未来」

「うん!絶対勝とうね!」

「愛花も負けたくない!」

「エイエイオー!」


俺たちは手を合わせて団結した。


「仲いいね……あの3人」


桜田さんのぼやく声が聞こえる。


「羨ましいぜ……俺もああなりたいぜ」

「あたしも……なりたい」

「え?」

「ほら、あそこにイケメンたちがいるし」


海で遊んでいる陽キャ大学生たちを桜田さんが指さした。


「あ……そうだね」


悠介はがっかりした顔をした。


「一緒に遊べないかな?」

「いや……あっちが嫌がるかも」

「うん。そうだよね。無理だよね」


悠介と桜田さんが話しているスキに、


「悠介!行くぞー!」


俺はビーチボールを打ち上げた。


「卑怯だぞ!圭太!」

「ふふふ。試合は勝てばいいんだよ……」


これも芝居だ。

わざと悠介と桜田さんが話している時に、俺が仕掛ける。

それを悠介が華麗に拾い上げる作戦だ。


コートの端へビーチボールが落ちそうになるが、


「おりゃあああああああああああああああああああああ!!」


悠介がヘッドスライディングを決める。

ぽーんと、ビーチボールが飛んでいく。


「ケータ!そっち行ったよ!」

「あああああああああああああああ!!」


俺もヘッドスライディングをするが、ビーチボールは砂の上に落ちた。


「やったあああああああ!」


悠介がガッツポーズをした。


「悠介くん。すごい!」


桜田さんも喜んだ。

悠介と桜田さんはハイタッチした。


「ぶーぶー!もう一回やるぅ!絶対に愛花たちが勝つんだから」


愛花ちゃんは怒り出した。

勝つまでやろうとするのが愛花ちゃんだから、こうなると俺たちが勝つまで何度でも悠介に挑んでいきそうだ。


「ケータ……大丈夫?」


未来が俺の手を掴んで、起こしてくれる。


「大丈夫だよ。ありがとう」

「……もしかして、わざと負けたの?」


未来が俺に耳打ちしてきた。


「……気づいたのか」

「悠介くんが活躍できるようにするため?」

「ああ。悠介は親友だから」

「ケータって、優しいね。友達思いで。ますます好きになっちゃいそう……」

「え?好き……?」

「ううん。何でもない!」


悠介と桜田さんが楽しそうに話している。

ビーチバレーで仲良くなれたらしい。


「悠介くんと凛。いい感じだね」

「よかったよ。負けたけどな」

「うー!もう1回!もう1回!」


愛花ちゃんが俺と未来の隣で、駄々をこねまくっていた。













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