第45話 海 part3

「おーい!注文お願いしまーす!」


他のお客さんが悠介を呼んだ。


「圭太。後で話がある。15時になったら海の家の裏に来てくれ」

「おう……」

「絶対に来てな」


ポンっと肩を叩かれた。

悠介のヤツ、何を考えてるんだ?


「パパ。あーんして」


愛花ちゃんがスプーンを俺に向けた。


「パパだけパフェがないの、かわいそうだから」

「え、パパ……?」


桜田さんが驚いた顔をした。


「愛花はケータとオママゴトしてるの!愛花がママで、ケータがパパって感じで!」


未来があわあわとする。


「あ、そうなんだね。オママゴトかあ。あたしも幼稚園の頃、お兄ちゃんとよくやったなあ」

「そうそう!ただのオママゴトだから、何にもおかしくないんだからね!」


おいおい。その返しはおかしいでは?


「……どうしたの?未来。さっきから変だよ?」


ジトーっと、不審な目で未来を見る桜田さん。


「変じゃないって!」

「ふーん……なーんか怪しいけど、まあいいか」


桜田さんは俺と未来の顔を見比べた。


よそ見していた俺に、


「パ……ケータ!早く食べて!」


愛花ちゃんが俺の口にイチゴを突っ込んだ。


「うぐっ!」

「おいちい?愛花のイチゴ?」

「……おいしいよ。ありがとう」

「へへ。もっと食べて!」


愛花ちゃんは次々と俺の口に生クリームを突っ込む。


「愛花ちゃんと圭太くんって仲いいよね」

「うん。そうね」

「未来と圭太くんはどうなの?」

「え?普通かな……」

「あんなにイチャついてるのが普通なんだ?」

「イチャついてないよー」

「ふーん……あ!イケメン発見!」


桜田さんは隣の大学生グループを指さした。


「あの人たち、近くにある慶東大学の人たちだよね。すっごいイケメンばっかり……あたし、声かけてこようかな?」


イケメン大学生たちを見て、桜田さんは目をキラキラさせている。

茶髪で細くてマッチョで……爽やかなイケメンたちが隣で盛り上がっている。


「凛……やめときなよ」

「あたしも幸せになりたいもん!」

「どんな人たちかわかんないし……」

「イケメンに悪い人はいないよー」


さも当然のことみたいに、桜田さんは言う。

ついこないだまで、イケメンだが悪い奴である太田と付き合っていたのに。

桜田さんって、もしかしたら男を見る目が残念なのかもしれない。


「凛はさ……今好きな人はいないんだ?」


おっと、未来が核心に迫っていった。


「え、好きな人?うーん……目の前のイケメンたちが好き!」

「いや、そういう好きじゃなくて」


未来はため息をついた。


「うぐ!」


愛花ちゃんが俺の口にスプーンを突っ込んだ。


「ケータ!よそ見しないで!」

「ごめんごめん……」

「もお!あーんして!」


俺は愛花ちゃんに口をこじ開けさせられた。


桜田さんのイケメンに食いつく様子を見ると、なかなか悠介が勝つのは難しそうだ。

さて、どうしたものか。



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