第44話 海 part2

「焼きそばうまいよ」


俺たちは海の家で焼きそばを食べていた。


「おう!俺が作ったんだぜ!」

「悠介くん。すごい!」


桜田さんが手を叩いて褒めた。


「あ……ありがとう」


悠介は驚いた顔で桜田さんを見た。


「……どうしたの?」


いつも違う悠介の様子を見て、桜田さんが聞く。


「あ、いや、何でもない。圭介、後で俺も合流するからな!」

「おう」


悠介はまるで逃げるように、他のテーブルへ注文を取りに行った。


「トイレ行ってくるね」


桜田さんが席を外した。


「ねえ、ケータ」

「うん?」

「悠介くんって、凛のこと好きなのかな?」

「え……そうなの?」


俺はきょとんとした顔で未来を見た。


「気づいてなかったの?」

「全然気づかなかった」

「もお。ケータは鈍感なんだから……」


コソコソ話す俺たちをよそに、愛花ちゃんは夢中で焼きそばを食べている。

そう言えば悠介は、桜田さんが今日来るか、昨日LINEで聞いてきたな。


「悠介が桜田さんをね。桜田さんのほうは気づいてるのかな?」

「うーん、どうだろ?たぶんだけど、気づいてないんじゃないかな」


親友の未来でもわからないようだ。


「……正直言うと、悠介くんは凛のタイプじゃないと思うの」

「まあーな」


桜田さんはいわゆる面食いだ。

あの性格が最悪な太田とだって、イケメンだからと言うだけで付き合った。一瞬だけだけど。

悠介だって悪くない。サッカー部で活躍してるし、オシャレでもある。でも、イケメンじゃない……

まあそれでも、俺よりは全然モテるがな。


俺は親友の恋路を応援したい。

悠介は面白くて気のいい奴だ。昔から友達やってる俺が保証できる。

悠介の良さが桜田さんに伝われば、きっとチャンスがあるはずだ。


「あたしたちで応援しようよ。凛が悠介くんと付き合ったら嬉しいから」   


あの太田と付き合った後だもんな。

親友の未来からすれば、桜田さんに幸せになってもらいたいだろう。


「そうだな。俺も悠介を応援したい」

「何話してるの?」

「わ!」


背後から桜田さんに声かけられた。


「凛。いつの間にそこに……」


未来も驚いて、胸を抑えている。


「今、帰ってきたんだよ」

「そっか……」


さっきの会話を聞かれたら大変だ。


「あ、そういうことね」


桜田さんはニヤニヤした。


「ごめんなさいね。2人のラブラブを邪魔しちゃって」

「な、何もしてないから」


未来は顔を赤くした。

必死に手をブンブン振ってくる。


「ふーん……いいねえ。幸せそうで!」


どすんっと、桜田さんは未来の隣に座った。


「デザート持ってきたよ!俺のおごりだ!」


悠介が颯爽と俺たちの前に現れた。

パフェを持ってきてくれた。


「パフェだぁ!愛花大好き!」


愛花ちゃんは大はしゃぎだ。


「ほら、綾瀬さんも桜田さんも」

「ありがとう!悠介くん♡」


未来と桜田さんも、大喜びだ。


「俺の分は?」

「野郎の分はねえよ」

「ひでえなぁ」

「ひでえのはお前だろ。俺に青春ラブコメを見せつけやがって」


やれやれと、悠介は肩をすくめた。

つーか、昔から女子にモテるのは俺より悠介なんだが。


「まあ、見てろよ。俺も青春ラブコメしてやるからな」


悠介が俺に耳打ちする。


「何を企んでいる?」

「ちょっと協力しろ」


……なんかめんどうなことになりそうだ。

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