第41話 トロピカンランドへ行くpart10

「ケータ……キスして」


ずいっと、未来は俺に近づいてきた。

戸惑う俺の顔をじーっと見つめて、


「……じゃあ、パパとして、ママにキスして?」


観覧車が一番上まで来た。

辺りは暗くなって、月の灯りが窓から差し込んできた。


「わかった。パパとして――」

「今日はね、パパとママの結婚記念日なの」

「本当に?」

「ねえ、どう思う?」


未来はイタズラぽっく笑う。

どうやら俺を試しているようだ。


「ケータはどう思う?本当か嘘か?どっち?」

「……本当だ」


たぶん「嘘」だ。

本当のママとパパの結婚記念日はきっと違う日だ。

だからこそ、ここは「本当」と答えるのが正解だと思う。

今日この日を、二人の結婚記念日にしてしまえばいい。

……俺もだいぶ、この「オママゴト」が板についてきたらしい。


「さあ、パパ……お願い」


未来は目を閉じた。

小さな唇が、ぷるぷると震えている。

俺のキスを、待っているんだ。


俺は未来の肩に手を置いて、唇を近づける。

すーすーと、愛花ちゃんの寝息だけが聞こえる。

柔らかい未来の唇と重なった。

――まるで時が止まったようだった。

すげえ心臓がドキドキする。

今までも……パパとママとしてキスをした。

だけどこのキスは……パパとママのキスなのだろうか?


パーン、パーン!

花火が打ち上がった。

観覧車の中に、虹色の光が差し込む。


「すっごくきれいだね」


俺は未来と手を握った。


「花火だぁー!」

「うわ!」

「きゃ!」


突然、愛花ちゃんが叫びだした。

俺と未来は、思わずつないでいた手を話してしまう。


すーすー。

……どうやら寝言らしい。


「あーびっくりした。すげえ寝言だね……」

「ふふ。ケータの驚いた顔、かわいかったよ。口をあんぐり開けちゃって」

「マジか。そんな口空いてた?」

「うん。アヒルさんみたいだった」


未来は口を尖らせて、アヒルの真似をした。

ちょっとふざけた感じがかわいい。


「すげえアヒルぽっい」

「ぶー!ケータの真似なのにー!」


俺と未来は笑い合った。

観覧車はだんだん下がっていく。

地上という現実世界にまた帰ってきた。

このトロピカンランドでの時間も終わり。

つまり、夏休みが1日終わったということだ。

時間が砂のようにさらさら過ぎていくのが、寂しかった。

それはきっと未来もそうみたいで、胸に手を当てて、遠くを見ている。


「また来年も……一緒に来れるよね?」


未来は俺に笑いかけた。

でも……その目どこか不安げでもあった。


「ああ。また来よう」


もうすぐ、観覧車が地上につく。

俺は「パパ」として、眠っている愛花ちゃんをおんぶした。


ドアが開いて、俺は先に出た。

俺は降りようとする未来の手を取った。


「帰ろう。あたしたちの家に」

「うん。帰ろう」


俺と未来は手をつないでトロピカンランドの出口へ向かった。



_________________________________________

【★あとがき】


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