第30話 終業式の日

「えーみなさん。明日から夏休みです。浮かれすぎてハメを外さないようにしてくださいー」


今日は終業式だ。

明日から夏休みになる。


俺は体育館で校長先生の退屈な話を聞く。

みんなの頭の中は、楽しい夏休みのことでいっぱいだ。


夏休み中は、ずっと未来の家で過ごす。

もちろん、お互いの親には秘密だ。

俺の親も未来の親も、子どもを放ったらかしすぎだ。

だから俺も未来も、親に話す義理はないと思っている。


未来は俺の斜め前にいた。

真面目な未来は、真剣に校長先生の話を聞いている。

さすがは学級委員だ。

今日は未来と一緒に帰って、未来の家で期末テストのお疲れさま会をする。

悠介と桜田さんも来ることになっていた。

正直、けっこう楽しみだ。青春!って感じがするぜ。


……背中に視線を感じる。

俺が振り返ると、朱美が俺を見ていた。

何だろう……今にも泣き出しそうな目だ。

朱美とは体育館での一件以来、一度も話していない。

噂だと、朱美は太田にフラれた後、学校を休みがちになっているらしい。


「……では、終業式を終わります。みなさん。有意義な夏休みを過ごしてください」


やっと終わった。

よぉし!夏休みが始まるぞ!

今年の夏休みは、家にいても1人じゃない。

未来と愛花ちゃんがいる。

楽しい思い出をたくさん作ろう。


生徒たちは浮き足立って、教室へ帰る。


俺が未来に声をかけようとした時、


「圭太!」


朱美が俺に話かけてきた。


「……朱美。何か用か?」

「ねえ……ちょっと話したいことあるんだけど」

「あー悪い。また今度な!」

「お願い。本当に大事な話が——」

「ケータ!」


俺に気づいた未来が、こっちにやって来た。


「あ、飛騨さん……」

「綾瀬さん……」


朱美と未来は、お互いに気まずそうだ。


「未来。もう行こうぜ」

「でも、飛騨さんと話があるんじゃ……」

「ううん。何でもない……じゃあね。圭太」


朱美は体育館の出口へ走って行った。


「本当にいいの?飛騨さん、様子が変だったよ?」

「大丈夫だよ。早く帰ろうぜ。愛花ちゃんと一緒にスマブ◯したいからさ」

「うん。お疲れさま会の準備もしなくちゃ!」


俺と未来は、一緒に教室へ戻る。


……朱美の話は、だいたい察しがつく。

朱美は幼馴染だから、友達として立ち直ってほしいと思うけど、もう恋人にはなれない。

俺にはもう……本当に好きな人がいるから。


今年の夏は、思いっきり青春するぞ!



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