第29話 ケータと海に行きたいな(side 未来)

「ふふん♪楽しみだなあー」


あたしは1人、鏡の前に立っていた。


「ケータ……かわいいって言ってたなー」


昨日、ケータと初めて一緒にお買い物に行って、水着を買った。

最初、あたしがビキニを選んだ時、ケータは顔を真っ赤にした。

ちょっと、からかってみたかった。

結局、ビキニはあたしも恥ずかしかったから、普通の水着を買った。

水玉模様の水着——初めてのデートで買ったんだ。


「うーん……こうしたらもっとセクシーかな?」


あたしは鏡の前でいろいろポーズを決める。

前屈みになって胸が見えるようにしてみたり、腰に手を当ててお尻を強調してみたり……

気分は雑誌のモデルさんだ。

……恥ずかしがるケータを想像して、あたしは1人でニヤニヤする。


「……お姉ちゃん。何してるの?」

「え……あ、愛花!ノックくらいしなさい!」


いつの間にか、愛花があたしの部屋にいた。


「お客さんが来きたから、呼びにきたの」

「そ、そうだったのね……」

「……さっき何してたの?変なポーズしながらニヤニヤしてたけど」

「ははは。なんでもないよー」


なんとか笑って誤魔化す。


「ふーん。凛お姉ちゃんが来てるよ」

「へ?凛が……」


突然、いったい何だろう?

まさか、太田くんとのことかな……


◇◇◇


「凛!今日はどーしたの?」


あたしはリビングに凛を通した。


「ごめん……急に来て」

「凛ならいつでもいいよ!何かあったの?」

「太田くんと……別れた」

「え?」


凛と太田くんって、やっぱり付き合ってたんだ。

昨日、あんなに仲良そうにしてたもんね。


「……そうなんだ。付き合ってたんだね」

「うん。初めはイケメンだし、いろいろ慣れてるから素敵だったんだけど、デートしたら話つまんないし、なんとなーく女の子を見下してる気がして……」

「だから昨日、別れようって言ったの」


太田くんは、いつも人をバカしてる印象がある。

ケータみたいに、優しい男の子じゃない。


「そしたらさ、『俺みたいなイケメンと別れたら、後悔するぞ!ブス!』だって……もう幻滅した」

「うわ……最低だね」

「クソ男!死ね!」

「凛……愛花がいるから」


幸い、愛花はテレビのアンパンウーマンに夢中だ。


「あ、ごめん。思い出したらムカついちゃって……」

「別れて正解だよ。そんな男」


正直、あたしはホッとした。

凛がもっと酷い目に遭ったんじゃないかって、心配していたから。

すぐに別れてくれて、本当によかった。


「どーしても未来に愚痴りたくてさ。あースッキリした」

「そんな男、もう忘れちゃいな」

「実はね、サッカー部のキャプテンと今度カラオケ行くだー!とってもイケメンなの!」


凛の顔がぱっと明るくなる。

相変わらず面食いだけど、凛が元気で本当によかった。



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