第24話 サンタさん願いを叶えて
「パパ。テスト、どーだった?」
4日間のテスト期間に入った。
今日、数学のテストが終わって、午後から未来の家に来ていた。
あと1日でテスト期間は終わる。その後は待ちに待った夏休みだ。
「そうだなあ……まあまあかな?」
「ふふ。あたしは満点かも!」
未来が勝ち誇ったように笑った。
今回の数学は難しくて、自信のない問題が何個かある。
たふん俺は満点じゃないと思う。
「あたしの勝ちね。どんなお願い聞いてもらおうかなー」
「パパ、ママに負けたんだ!愛花のお願いも聞いてね」
「なんでそうなるんだよ……つーか、まだ結果は出てないから負けたとは限らない」
勝負は最後までわからない。
もしかしたら奇跡が起きて、全部正解してるかも。
俺のささやかな抗議をガン無視して、未来は、
「どんなお願いにしようかな……夏服買いたいから、ケータに荷物持ちしてもらうおっかな!」
「そんなんでいいの?」
「うん!ケータに服選んでもらいたい!」
生まれてから、女の子の服なんて選んだことない。
陰キャの俺には少々ハードだ。
「ママ、ずるい!愛花もパパに服選んでもらう!」
「ダメダメ。その日はパパはママだけのものなの!」
「ブー!ママのケチ!」
やれやれ。
また姉妹喧嘩が始まりそうだ。
話題をなんとか変えないと……
「愛花ちゃんは、どっか行きたいところある?」
「愛花はね、海でしょ、山でしょ、ネズミーランドでしょ、花火大会でしょ、あとね——」
「そんなに行けるわけないでしょ?夏休みは40日間しかないんだから」
未来は笑いながら、愛花ちゃんをたしなめた。
「え?ずーとパパとママは一緒だよね?夏休みが終わった後も、冬休みが終わった後も、ずっと、ずーと……」
愛花ちゃんは、俺と未来をじっと見つめた。
強く、訴えかけるような瞳。
……このオママゴトは、いつまで続くのだろう?
夏休みが終われば、海外から本物のママが帰ってくるらしい。
そうなれば、このオママゴトは終わってしまう。
「愛花ね、クリスマスが1番楽しみなんだぁ。サンタさんにお願いするの。ずっと、パパとママと愛花で、この家で暮らせますようにって。愛花がいい子にしてたら、きっとサンタさんが叶えてくれるよね?」
「……愛花、あのね——」
俺は未来を制止して、
「きっと叶うよ。愛花ちゃんがいい子にしていたら、サンタさんがプレゼントしてくれるから」
「ケータ……」
子どもの夢を壊しちゃいけない。
今年の夏は、3人でいい思い出をたくさんつくりたい。
俺は心からそう思った。
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