第25話 テスト結果発表

今日はテストの返却日。

他の教科はどうでもいい。とにかく数学の点数が大事だ。

一人ひとり名前を呼ばれて、先生に答案用紙を返される。


「次!綾瀬!」

「はい!」


未来は元気よく声を出して、答案用紙を取りに行く。


「90点だ!今回は難しかったのに、すごいぞ!」


教室がざわめいた。


「えへへ……ありがとうございます」


みんなの前で褒められて、未来は照れ笑いを浮かべた。


次々に名前が呼ばれる。

みんな浮かない顔をしている。

先生の言うとおり今回は難しくて、クラスの平均点はいつもより低かった。


……未来ってすげえな。家事は全部自分でやって、愛花ちゃんのお世話もして、なのに成績がいい。

だけどそれを鼻にかけたりしないから、みんなに好かれて、応援されている。

ただ……今回は勝負だ。俺も負けるわけにはいかない。


「次!小川!」


俺は先生に名前を呼ばれて、答案用紙を取りに行く。


「小川……よくやったな。90点だぞ」

「え?」

「えらいぞ。その調子でがんばれ!」


教室中が大きくざわついた。

未来の時よりも。

平凡な俺が90点だったから、みんな驚いている。


「すげえじゃねえか。圭太」


自分の席に帰る俺を、悠介がつついた。


「おう……ありがとう」


まさか、未来と同じ点数だったとはな……


◇◇◇


「ケータと同点だった……つまんない」


答案返却が終わって、俺と未来は一緒に帰った。


「ははは。今回は引き分けってことで」

「ケータとお買い物、行かたかったな……」


未来は心底、残念そうな顔をした。


「別に勝負なんかしなくたって、買い物ぐらい付き合うよ」

「ふへぇ⁉︎本当?」

「本当だよ。未来と買い物行ってみたい」

「でもそれって……デートだよね?」


俺と未来は、一緒に出かけたことはなかった。

いつも未来の家で、愛花ちゃんと一緒にいる。

家まで泊まったのに、デートらしいことはしてなかった。


「え?愛花ちゃんも一緒じゃ?」

「愛花はいないよ。ケータとデートだもん。愛花は親戚のおばさんに預かってもらうから」

「俺と未来で、2人きりか」

「うん。2人きりでお買い物行くの!」


未来は俺の腕に抱きついた。


「うわ!」


ここは駅前で人が多い。

べったりくっつかれて、人にチラチラ見られる。

胸がむぎゅうと当たってるぜ……


「ふふ!もしかして恥ずかしいのー?デートの時はこうやって歩くんだよ?」

「恥ずかしくねえよ……」


まるでカップルみたいに、腕を組んで歩く。

ドキドキしないわけがない。


「ケータ、顔真っ赤じゃん!これぐらいで恥ずかしがってたら、あたしの水着選べないよ!」

「み、水着?」

「海に行く水着、買うから!」


俺が未来の水着を選ぶのか。

陰キャの俺には刺激的すぎるぜ……



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