第16話 ケータのお嫁さん(side 未来)

朝、起きるとケータはいなかった。

バスケ部の朝練があるから、早く家を出たみたいだ。


あたしはキッチンで朝ごはんと、ケータのお弁当を作っていた。

「お弁当作ってもらうのは悪いから……」ってケータは言ってたけど、バスケの練習でお腹空いているだろうから、ちゃんとご飯を食べさせてあげたい。

それに……ママがパパのお弁当作るのは、当然だから。


「ママ!パパがいないよ!」


愛花が泣きそうな顔でリビングへ降りてきた。


「昨日言ったでしょ?ケータは朝早いからって」

「聞いてないもん!パパはどこなの?」


愛花には昨日、ちゃんと言ってたのに。

覚えているくせに、わざとワガママを言っているんだ。


「……パパじゃなくてケータでしょ。ケータもあたしも学校があるの。ワガママ言わないで」

「ケータは愛花のパパだもん……」


ケータがパパなのは、あくまで3人でいる時だけだ。

……いつか、パパとママじゃなくて、ケータと2人きりでデートできたらなあ。

2人で観覧車に乗って、夜景を見ながら……キスして。

その後、2人だけで夜を過ごして……ケータといろいろ……

……ケータならきっと、優しく初めてのことしてくれるよね。


「お姉ちゃん、目玉焼き、焦げてるよ!」

「あ!ヤバイ!」


あたしは慌ててコンロの火を消した。


「目玉焼き、真っ黒だよ!」

「……ごめんね。ちょっと考えごとしてて」

「何考えてたの?」

「えーと……今日の夕飯どうしよーかなーって」

「ふーん……」


ケータとの初めての夜を妄想していたなんて、5歳の妹に言えるわけない。

朝からあたし、えっちなこと考えちゃった。


「……お姉ちゃん、えっちなこと考えてたでしょ?」

「え?」

「昨日のお風呂の時みたいに、顔真っ赤になってるよー!」


愛花が指をさして笑った。


「違う違う!そんなこと考えてない!大人をからかうんじゃありません!」

「絶対嘘だぁー!」

「ほら、早くご飯食べちゃいなさい!」

「はぁーい」


愛花はふてくされた様子で、コーンフレークを食べ始めた。

最近、だんだんマセてきてる。

急に変なこと聞いてくるから、こっちはハラハラさせられる。


「ねえ、お姉ちゃんはケータのこと好き?」

「す、好き……?あ!」


あたしは淹れていたコーヒーをこぼしそうになった。


「あたしはケータのこと、大好き!」

「そうね。ケータは面白いし優しいもんね……」

「大きくなったら、ケータと結婚するんだぁ!お姉ちゃん、ケータを取らないでね!」


ケータのお嫁さんか……いいなぁ。

子どもは男の子と女の子、一人ずつほしいな。

寂しい思いをさせないために……


「お姉ちゃん!コーヒーこぼしてるよ!」

「え、あ……あっつい!」














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